5歌
小さな村の奇妙なお話
暫く会話もないまま歩き続けていた。
父は、昔から口数が少ない人だったけど不思議と父の隣は居心地が良くて大好きだった。
そんな父が、突然口を開く。
父『……玲央は渚ちゃんがいなくなったことについてどう思う?』
父からの予想だにしない質問に、頭を鈍器で殴られたような衝撃を感じた。
渚がいなくなったことについてどう思う…?そんな事考えなくたって分かるだろう
父だって、僕と渚がどれだけ仲が良かったのか知っているはずだそれなのになんで突然そんなことを聞く…?
困惑と無神経な質問に対しての苛立ちが混ざり泣きそうになる僕の表情を見て父は。
父『いや!すまない…悪かった、悪かったよ玲央ごめんよ』
と焦ったような悲しいような、どうしようもないような顔をしながら謝った。
そのままお互いに気まずい空気が流れる中、また先に口を開いたのは父だった。
父『……玲央、久しぶりに橘花さんのところに行かないか』
橘花さん、と言うのはこの村で唯一の駄菓子屋さんのばぁちゃんだ、まぁばぁちゃんと言えど実際には、おばさんくらいの年齢なのだが。
父が、何を考えているのか全く持って分からなくて何も答えられなかったが父は気にする素振りもなく僕の手を引き橘花さんのいる駄菓子屋の方に歩き始めた。
様子のおかしい父が怖く抵抗もできないまま橘花さんの元に着き、店の奥で座ってお茶を飲む女性に父が声を掛ける。
父『橘花さん―!お久しぶりです、』
橘花『あら、山嵐さんと玲央君久しぶりね。どうぞ上がってくださいな』
橘花さんはいつも物腰の柔らかい人だ。
だけど、その笑みの裏に何かがある気がして正直言って少し苦手の分類に入る人だった。
父『ほら、玲央挨拶は』
『……お久しぶりです、橘花のばぁちゃん』
橘花『ふふ、やっぱり礼儀正しい子ね玲央君は』
口元に手を当てながら笑う橘花のばぁちゃんの所作は、とっても綺麗でお淑やかだ。
(渚も、橘花のばぁちゃんの様にお淑やかな女性になりたいって言って色々していたなぁ)
僕は、渚の少しガサツなところも男勝りな性格も好きだったし勇敢なところには羨望の眼差しすら抱いていた。
そんな大切で懐かしい記憶に耽る僕に橘花さんは、
橘花『ほら、玲央君早くお上がりなさいな玲央君の好きなお菓子もあるわよ』
と手招きをする。
言われた通りに靴を脱ぎ揃え、店の奥に入り既にくつろいでいた父の隣に座る。
橘花『山嵐さん今日は一体どの様な要件で?』
父『……掟を破ってしまった渚ちゃんの事でお話しお聞きしたく』
渚、と言う名前を出した途端先程まで優しく微笑んでいた橘花さんの表情が固く真剣なものに変わる。
橘花『…そう、渚ちゃんの事で…分かりました私で分かる範囲でしたらお答えしましょう』
先程とは打って変わる雰囲気に息を飲む。
橘花『では、何からお話ししましょうか…玲央君、君は幸江さんからは何かお聞きしましたか?』
幸江と言うのは僕の祖母の名だ。
『村八分のせいで亡くなった親子がいた事、その後に村中の子供達が突然姿を消したことを聞きました…』
橘花『なるほど、では歌のことはどこまでお聞きしましたか?』
『歌は…詳しいことまでは分からないと言われました…』
そう言うと橘花さんは少し考える様な素振りを見せた
、あいも変わらず一つ一つの動きが綺麗な人だ。
橘花『そうですか…玲央君今から言うことは少し現実離れしている話ですがそれでも聞きますか?』
当然、答えはYESになる例えどれだけ摩訶不思議なことを言われたとしても突然、目の前で親友が消えたんだ受け入れられない筈がない。
橘花さんは、40代後半ぐらいの綺麗な女性です。




