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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

婚約破棄されたら、邪神が現れていろいろややこしいことになった聖女の話

作者: 山田 勝

「陛下、王妃殿下、王太子殿下、王宮の皆様に邪神討伐の詳細をご報告します」



 ・・・ここはヌルド王国王宮、本日、邪神討伐に出陣した聖女パーティーが2年ぶりに帰還した。

 4人で出立したが、参内したのは聖女マリー1人だけである。




「ほお、マリー1人か?他はどうした?」


「はい、ポーターのハンスは名誉の殉職、剣聖ルーダーと女魔道師ミリアは心を病み。とても陛下の前に出られる状態ではございませんわ」


「まあ、良い。話せ」

「はい、陛下」



 ご存じの通り。一緒に行ったのは、剣聖ルーダー、女魔道師ミリア、ポーターのハンス。

 皆、善い人達ですわ。


 途中までは順調でしたわ。

 ミリアは隠蔽魔法を使い。邪教徒の村を避け。

 無駄な戦闘をしないで邪神の住む山まで行く予定でしたわ。



 しかし、誤算がありましたわ。


 食料が転送されてこなくなったのです。



「はあ?言い訳はよせ。我がワザと食料を転送魔法で送らなかったと言いたいのか?」


「いえ、それは今となってはどうでも良い事でございます」

「平民のくせに言うようになったな。まあ、良い。続きを話せ」

「陛下、有難うございます」



 仕方なく、邪教徒の村に食料をもらおうと訪問しましたわ。


 彼らの見た目はゴブリンのように緑色の肌で、エルフのように耳が尖っていますが、それ以外は人族と変わりません。普通に農業をしていました。


 話せば何とかなると甘い考えでしたわ。



 村人たちは、私達を見るなり。いきなり襲いかかってきましたわ。

 拳を振り上げて、男も女も襲って来ましたわ。



 話会いにならず。仕方なく、ルーダーとミリアが戦いました。



『ハンスさん。マリーを頼むぜ』

『フン、マリー、あんたがいなければ邪神倒せないのだからね。こんなところで力を無駄に使ったら怒るからね』



 大人達が次々と襲って来て、一方的な虐殺になりましたわ。

 しかし・・・親を殺された子供たちが、拳を掲げて襲って来ました。



『殺して!殺して!』

『ズルいよ。お父ちゃんみたいにして!』


 やむなく、ルーダーとミリアが倒しました。


 子供達は親がいなければ暮らして行けないから・・・邪神の教義は知りませんが、両親の元に行きたいのでしょう。



 それが続きましたわ。


 いくら殺しても邪神教の軍隊は出てきません。

 村人たちは平民と代わりませんわ。



 ルーダーは、心を病み。ブツブツ言うようになりましたわ。

 ミリアはケラケラ笑うようになりました。


 状態正常のスキルのある私は狂えません。

 年長者のハンスさんは決心します。



『これでは・・・2人が持たない。食料は俺が何とかする。狩りでもするさ』

『食料は転送されてこないのですか?』

『ああ、マリー様も含めて全員平民出身だ・・・捨て駒にされたのかもな』



 しかし、ハンスさんは崖から落ち。

 頼れる人がいなくなりましたわ。


 それでも、2人を看病しつつ。村を襲いました。




『うんだこら、ボケ、皆、斬り殺してやる!』

『ゲラゲラゲラ~、僕ハ強いんだヨ』


『ギャアアアーーー、殺して、殺して・・・』



 邪教徒は苦しみのあまり殺してと懇願する始末でしたわ。


 そして、やっと、邪神のいる山に到達しましたわ。



 邪神は・・・おそらく図鑑のクラーケンのような見た目で山肌にひっついていました。

 とてもおぞましい姿でしたわ。



 私を見るなり、襲って来ました。

 私は聖魔法を放ち。邪神と戦いました。

 しかし、簡単に倒せました。


 あっという間に溶けましたわ。





「あれは、本当に邪神だったのでしょうか?軍隊もなく農業で暮らし。邪神は見た目こそおぞましかったですが、眷属を殺された恨みから私を襲って来たのでしょう・・」



「話は終わりか?マリーの話には嘘がある。邪神を討伐したのなら何故証拠を持ち帰らない?」


「ですから、邪神は私の聖魔法で溶けましたからですわ」


「そもそも本当に旅に出たのか?報奨金をせしめるための嘘だったのではないか?」


「証拠なら、邪神教の村々に調査団を派遣して下さい。

 死体がゴロゴロしているはずですから・・・」


「嘘に決まっているから調査団を派遣するまでもない。それにもし本当だとしたら、邪神教徒は改宗させるのが本筋だ。何故、むやみに殺した。食料がなければ工夫をすれば良いではないか?」



「行軍にどれくらいの体力を消耗するか?陛下はご存じですか?それこそ、狩りをする暇もございません・・・狩りはあくまでも補助の扱いのはずです」



「ええい。言い訳ばかり。元々、平民の聖女など好かんのだ。ゲオルトよ。こんな女、どうすれば良い」



「はい、父上、僕は二年間も男と旅をして貞操が怪しい女は王家に相応しいとは思えませんね。それに髪は赤茶髪だ。平民の色だ。元々、僕はツェンガー侯爵令嬢ヘンリエッテと婚約するはずでした。

 婚約を破棄の上、国費浪費の罪で処刑です!」


「殿下、このパーティーメンバーは陛下がお命じになりましたわ」


「うるさい。うるさい!」



 殿下の隣にいる金髪の綺麗な令嬢が侯爵令嬢ね。別に良いわ。

 ルーダーもミリアも国外の女神教の治療院に預けたわ。


 私には邪教徒とは言え、無辜の民を殺めた罪がある。

 それは謹んで受けよう。



「マリー、何か言うことはあるか?」


「・・・私は乙女です。国費浪費は覚がない罪ですが・・・処刑は承ります」


「な、何だ。何で微笑んでいる。不気味な女だな!ゲオルド言ってやれ」

「はい、僕はマリーと婚約破棄を宣言します。理由は不貞と浪費です」

「衛兵、引っ捕らえよ!」



 ・・・その時、天井が揺れた。


「な、何だ」

 バリバリと天井が空き。青空が見えた。王宮の謁見室の天井が何者かによって持ち上げられたのだ。


 そこに現れたのは、異形の神、邪神だった。

 マリーはクラーケンと表現したが、海を知っている者ならタコとも表現しただろう。

 それが触手で天井を剥がし持ち上げ浮揚している。



「何だ。やっぱり邪神を討伐したのって、嘘だったんだ!」

「宮廷魔道師、何をしている。攻撃せよ」


「「「御意」」」


 邪神にファイヤーボールを放つが、全く効かない。

 それどころが、天井を放り投げ。触手をあげてクネクネ踊り出し、思念で語りかけてきた。



『YO-YO-ボクは邪神、その聖女にお礼を言いたくてきたんだYO―、殺してくれてありがとうサンサン♩』



「「「はあ?」」」


「マリーよ。攻撃せよ!」



 私は攻撃をせずに何故か話を聞くことにした。



『ボクは、宇宙そらからやってきたYO-、隕石に乗ってやってきたんだYO-』



 話を聞くとトンデモない内容だった。

 邪神は遠い天空の星からやってきたという。


 本体は小さな虫、見えないくらいの虫で、5000年前にこの地にやってきた。

 その地に住み着いていた人族に小さな虫を入れて、体の螺旋状の設計図に参加したそうよ。


宇宙そらは過酷な環境、死んだ状態で飛んでいたんだYO-聖女様に5000年ぶりに殺してもらって良い気持ダ』



 何でも定期的に死なないと心や体に悪い物がたまるそうよ。

 死霊術とも違うわね。


あら、邪神の後ろに大きなお皿が飛んでいるわ。こっちに向かって来る。鉄かしら。その円盤は王宮におり。ドアが開き。

人、いえ。邪教徒が降りて来た。子供達だ。



「ワーイ、聖女様だ。剣使いのお兄ちゃんと、魔法使いのお姉ちゃんは?」



 あれは・・・私達が殺した邪神教徒の子供達。あの乗り物は?


『ボクハ宇宙そらだけに重力を扱うのが得意ダヨ、眷属も重力魔法の使い手サ』



「じゃあ、殺して、ズルイ。と言っていたのは?」


「うん、本当にズルイと思ったよ。お父さんとお母さんだけ殺して僕たちを見逃そうとして、これで体の設計図が一新されたよ」


「貴方たちは死なないの?もしかして、不老不死?」

「うん?5000歳のお爺ちゃんがこの前、起きてこなくなったから人族で言う死ではないかな」



「邪神様は何歳ですか?」

「う~ん。5億歳から先は数えてないヨー」


 王宮の王家、貴族たちがブルブル震えているのを尻目に私は彼らにお願いをした。


 お皿型の乗り物に乗って。


 ルーダーとミリアのいる治療院に行く。


 それはもう大騒ぎだったわ。

 でも、理由を話したら医院長は快く邪教徒の立ち入りを許してくれた。と言うよりも震えていたわね。



「お兄ちゃん。お姉ちゃん。僕たちは死んではいなかったんだよー」


「え、何?」

「ちょっと、僕の魔道をぶち込んだのよ・・・」



「幻覚を見せていたのさ」



 と無理矢理納得してもらったわ。本当のことは落ち着いたら話そう。いろいろややこしい。



 そして、邪神様は女神教本部に行き。

 法王様と面談をした。



「女神教の聖魔法は素晴らしいYO-,ボクは病気の元と変わらない。ボクを殺せるなんて。素晴らしー」



「ほお・・・そうか」



 そして、一応、女神教の地方神として認められたわ。

 これから、邪神ではなく、ヌルド神と名前になったが、誰も呼ばない。

『邪神様』だ。



 そして、王族や宮廷の貴族たちは・・・・

「「「「聖女様バンザーイ!」」」」


 邪神様の眷属になった。邪神を殺せるほどの聖魔法を持つ聖女は貴重らしい。だから私に害が及ばさないようにとの処置だ。


 邪神様は争いが嫌いというよりは非効率としているらしいわ。

 彼らの肌は緑色になり。耳がとんがってきたわ。


 ゲオルド殿下からは丁寧に婚約破棄から婚約解消にしてもらった。


「やあ、マリー、どうして、僕はヒドいことをしたんだろう。婚約は解消でお願いチン」

「はい、承ります・・」


更に陛下から罪の告白を受けた。


「平民嫌いだポン。だけど長老会で息子の婚約者に決まって無理矢理邪神討伐に行かせたポン。

食料を送らなかったのは我の意思だポン。今は反省しているポン。慰謝料を払うポン。償いに殺してくれないかポン」


「いえ、殺すのは・・結構です」


違約金と慰謝料をもらい。贅沢をしなければ一生暮らせるようになったわ。討伐の慰謝料は4人分に分けたわ。ハンスさんのご家族に渡そうと思うが、孤児院出身らしい。


現在はハンスさんの冥福を祈りながら、ルーダーとミリアのリハビリを手伝っている。


「ちょっと、ルーダー、肩を貸しなさいよね」

「はあ?ミリア、リハビリは心だろう。体は大丈夫なのに、何故?」

「フン、大嫌いなんだからね」


 何だか、仲が良くなって微笑ましいわ。



 彼らは空を飛ぶ皿を一台置いてくれた。操縦も教えてくれたわ。

 魔石で飛ぶ。


 彼らからはまたこれで村を表敬訪問して殺してくれと頼まれたわ。


 ヤダナ~




 ☆☆☆邪神村



「ハンスさん。もう、歩けるの~」

「・・・ああ、何かいろいろ分からないが・・・何故、助けてくれた・・」

「それは、殺してくれたからだ」

「意味が分からないが、俺はお前達の仲間にならないぞ」

「いいよ。それよりも、円盤で送ってあげるヨ」



 マリーとハンスは半年後に再会することになる。時々、2人で邪神に会いに行くと伝えられている。




最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
少し不思議(Sukoshi Fushigi)な話でしたね。 邪神討伐で人知の及ばない中良心が死んでいく話かと思いましたが、途中から変な方向に吹っ飛んでいった気がします。 なんとなくハッピーエンドな気が…
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