剣道少女
瀬那(雛子)·····現世ではSaas系上場企業のトップセールスマンだった。誰かの声に導かれて雛子として大正末期の1920年に生まれ変わり、帝国軍とある部隊の隊長の娘としていきている。
キヨ·····雛子の剣道仲間。気遣い屋さんで道場のナンバー2で雛子とはライバルでもあり良き友でもある。
わたしが生まれ変わってから11年の時が過ぎ、近頃父は忙しそうだった。
わたしが記憶している限りでは、これから満州事変が起きる。
恐らく、父も遠征で行く事になるだろう。
そんな中私は小学校に通っていた。
今は5年生で、前世の記憶があることもあり、常に成績はトップで、父も母も誇らしいと言ってくれた。
「ひなー!道場いこー!」
この子はキヨ。
そう。私は前世でも行っていた剣道をやりたいと父に頼み、成績を維持することを条件に剣道場に通うことを許された。
そしてキヨはそこのチームメイト。
学校は違うものの、道場はわたしの屋敷の近くにあり、道場にいく時は必ず迎えに来てくれて一緒に行っている。
「うん!行こ!今日も先生と稽古できるかな」
「ひな、強いから先生としかやり合えないもんねぇ笑」
「そんなことないよ、キヨだけには全力だから笑
キヨだってまともにやり合えるのわたしか先生くらいでしょ笑」
「でもわたしは1回もひなに勝ててないじゃない」
そりゃぁ前世で12年やってますから、、
だけどキヨは5年位しか剣道をやっていないが、
前世も含め17年剣道をやってるわたしがしっかり集中しないと勝てないとは、キヨが本当に凄い努力をしているということ。
きっと私と同じ年数だったら私負けてるんだろうな。。笑
そして誰よりも気遣いができる子。
その性格を持った人物に会ったのは初めてではなかった。
キヨと接していると思わず面影を探してしまう。
奏...心配してるよね...
そんな会話をしているとすぐに道場に到着した。
「「お願いします!!」」
これが道場に入るときの挨拶。
「はい、お願いします^^」
微笑みながら挨拶を返してくれるのは道場の先生、鈴木先生だった。
他のメンバーはもう揃っている。
「今日はね、みんなの稽古が見たいって言ってくれてるお友達も来てくれてます。要くん、こっちに来て」
要くん...?
「満田要くんです。先生の近所の子なんだが、剣道に興味があるって言うから見に来てもらいました」
「...満田要です。よろしくお願いします」
この声...
この声だ!わたしのこと呼んでたひと!
「ねぇ!君!私と会ったことない?!」
思わず声をかけてしまった。
「...え?ないと思うけど.......」
ない、、、?
「こら、雛子くん、急にそんな勢いで話しかけたらビックリするだろう」
「、、、ごめんね」
「ううん、大丈夫」
絶対この声なんだ。この世界に生まれ変わってから11年間、1日も頭から離れたことない優しいあの声。
「それじゃ、稽古始めますよ、みんな面を被りなさい」「「「はい!」」」
腑に落ちないまま稽古が始まった。
しかし稽古が始まればそんなことは忘れていた。
わたしが通っている道場では勝ち上がり線というのが毎回終盤にある。勝者と次の人。また勝者と次の人。そうして最後は先生にたどり着く。
私は毎回先生までたどり着く為、先生の前にいる。そして私のところまでたどり着いたのはやはりキヨ。
真剣に一瞬の好きも見せてはいけない。
「メーン!!」
時間ギリギリで1本取れたのはわたしだった。
もう少しで引き分けになるとこだった、、、
ついに先生との勝負。
未だ勝てたことがない。
隙を見せてはいけないが、隙を見つけなければいけない。
どこか隙がないか、、、
むしろ隙を見せた方がかかってくれるかもしれない。
竹刀がふれあい、1mm単位で中心を取り合う。
一瞬、わざと中心を外した私に、先生はやはり面を打ってきた。
あ、これを利用すればいいのか。
時間ギリギリのタイミングで同じく仕掛けた。
、、、かかった!
先生を面を打ってきたところを胴で返した。
「ドー!!」
「おぉ!よく返しましたねぇ!!参りました笑」
「ひなー!やったねー!!」
「うん!!!」
初めて先生に勝てた、、、
嬉しすぎて満田要のことはすっかり忘れていた、、、
この物語は一部歴史の実話を含むフィクションです。
歴史上の出来事以外の登場人物や場所は一切関係はございません。