約束のピクニック
雛子(瀬那)·····現世ではSaas系上場企業のトップセールスマンだった。誰かの声に導かれて雛子として大正末期の1920年に生まれ変わり、日本軍のとある部隊の隊長の娘としていきている。
吉田幹夫·····輪廻転生した主人公、雛子の父。帝国軍のある部隊の隊長を務めており、部下からも慕われている。
吉田幸·····輪廻転生した主人公、雛子の母。専業主婦で大きい屋敷を取り仕切っている。
その月の末、お父様が休暇の日にピクニックに行く準備をしていた。
「雛子、おむすび握るの手伝ってくれる?」
臨月近くなってきたお母様はお弁当を準備していた。
「わかりました!」
お父様は自室で少しずつ引っ越しの準備をしていた。
まだ桜が咲くには2ヶ月程早いが、お父様が異動になることで時期が早まった。
今はとにかくお父様といることを楽しもう。
軍人である以上、いつ死んでもおかしくないとは思っているが、戦死とは無縁の現代とのギャップで過剰に反応してしまう。
お母様は恐らく、ある程度腹をくくってるのだろう。
異動が決まって数日後のある日、2人は夫婦時間を取っていた。わたしはトイレに起きたのだが、2人の寝室から声が聞こえたことがある。
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「急な話で悪かったな。それと、1人にしてしまって悪い」
「結婚を決めたときにある程度覚悟してましたから。。
戦死するかもしれないって。それに比べて異動ならまだ耐えれます、大丈夫です」
「でもさすがに出産のときには立ち会いたかったなぁ」
「雛子のとき立ち会えたじゃないですか」
「だからだよ。あんな感動は他では絶対感じられない」
「確かにそうですね^^」
「雛子も立派に大きくなって、、、」
「満田さんから聞きましたよ?軍で娘自慢してるって笑」
「あんな可愛くて賢くてしかも剣道も強い子だ。自慢しないわけないだろ」
「ほどほどにしてくださいね笑」
「あぁ笑、、でも俺らからなんであんな立派な子が産まれたのかね」
「あら、あなたそっくりなんですよ?」
「そうなのか?」
「えぇ、笑っちゃうくらいに分かりやすいですし、頑固ですし笑」
「そっかぁ、俺に似てるのかぁ、、、じゃあ息子はお前に似ればいい家族になりそうだな!」
「そうですね笑」
「さて、俺らもそろそろ寝るか」
「えぇ、おやすみなさい」
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「お。うまそうな匂いがしてるな」
「もうすぐできますから、そとに出る準備しておいてください」
「あぁ、雛子もそろそろ着替えろよ」
「はい!わかりました!」
わたしはお気に入りのワンピースを選んだ。
普段買い物はお母様と行くのだが、これは唯一お父様が選んでくれたワンピースだ。
「お母様、準備できました」
「じゃあ行きましょうか」
「荷物は俺が持とう」
「あら、ありがとうございます」
わたしはお父様とお母様と手を繋ぎ広場へ向かった。
「幸、しんどくなったらすぐ言うのだぞ」
「大丈夫ですよ。お腹の子も楽しみなのか、ポコポコ蹴ってます笑」
「そうか!元気なのは何よりだなぁ」
「お父様お母様、弟が生まれたら手を焼くかもしれませんね笑」
「そうなるかもな笑 お姉ちゃん、しっかり頼むぞ笑」
「...はい笑」
そんな会話をしてしばらくすると広場についた。
「ここはいつ来ても落ち着くなぁ」
「昔からここは幸と交際してるときから来てるんだ」
「昔から桜が咲く季節はすごくきれいでしたよね。
雛子に言ったかしら。ここでね、お父様から結婚の申し込みをされたのよ」
「え!そうだったんですか!」
「そうよ。桜の季節にどうしてもここで伝えたかったって笑」
「小さい頃からここに家族で来ててな。ここが好きだったんだよ」
そっか、、ここはお父様とお母様の思い出の場所だったんだ。
「、、、素敵ですね」
「雛子、お前は勉強も頑張ってるし稽古も頑張ってる。家のことも手伝ってくれるしホントに自慢できる娘だ。でもたまに妙に大人っぽいと感じるときがあるんだ」
、、、お父様、少し気付いていたんだ。
「だから俺が異動するってなったときに雛子がずっと大人になってたらどうするって悩みもあったんだ」
「幸にも相談したよな笑」
「そうですね笑 でも、雛子がいじけたりとか喜んだ顔を見てるとやっぱり子供だって私は思ってますよ」
「俺は仕事で家にいないことが多いからなぁ」
「雛子、もしこの子が生まれても、あなたはあなたで私たちの子供なんだから気負いすぎず、いつでも甘えてくれていいんですからね」
わたしはいつの間にか涙がながれていた。
現代での出来事や家族がわたしにとって本当で、今が夢の中にいて、自分に居場所がないと時々感じていたことがあった。
でも違う。この時代での居場所はここなんだ。
どんな未来を迎えるかわからない。
もしかしたらわたしも家族も死ぬかもしれないし、生き残って夢を叶えられるかもしれない。
とにかく、わたしはお父様とお母様の話を聞いて、安堵の涙を流していた。
「あらあら、急に泣き出して笑」
「あぁぁぁ!雛子!えっと、、お弁当食べるか?」
お父様はその様子を見てどうすればいいのかわからず慌てていた。
わたしはお父様から渡されたおむすびを泣きながら食べ、お母様がずっと背中をさすってくれていた。
「幸、雛子、また来ような。今度は4人で。」
「えぇ、お腹の子が歩ける頃にまた来ましょう」
「次は4人で、、、お母様!お父様が恋しくなったらここに来ましょう!」
「そうしましょうか^^」
「雛子、ちゃんと日記に書いてくれな」
「もちろんです!」
「じゃあそろそろ暗くなるし戻るか!」
気がつくと辺りは夕日でオレンジ色に染まっていた。
わたしはお父様とお母様が揃って歩いてる後ろを着いてあるいてた。
この景色を絶対忘れないようにしよう。
そう考えながら後ろからお父様とお母様を見ていた。
「雛子、何してる、早く来なさい」
「帰るわよ」
「あ、はい!今行きます!」
わたしは2人のもとに駆け寄って2人の手を取った。
お父様の引っ越しまであと2日。
この物語は一部歴史の実話を含むフィクションです。
歴史上の出来事以外の登場人物や場所は一切関係はございません。