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散歩道

雛子(瀬那)·····現世ではSaas系上場企業のトップセールスマンだった。誰かの声に導かれて雛子として大正末期の1920年に生まれ変わり、日本軍のとある部隊の隊長の娘としていきている。


吉田幹夫·····輪廻転生した主人公、雛子の父。帝国軍のある部隊の隊長を務めており、部下からも慕われている。


吉田幸·····輪廻転生した主人公、雛子の母。専業主婦で大きい屋敷を取り仕切っている。

「雛子おはよう」

目覚めるとお母様が笑顔で挨拶をしてくれた。


「お母様おはようございます」

わたしはお母様が用意してくれていた朝ごはんを食べる。


「今日はお稽古無いのよね?」

「はい。今日は無いので学校から帰ったら図書館に行こうかと思ってます」

「そう、じゃあお夕飯食べたらお母様とお散歩にいかない?」

「お散歩ですか?」

「最近行けてなかったでしょ?雛子の色んなお話も聞きたいしお弁当をもって夜のお散歩に行きましょ」

「いいですね!わかりました!じゃあお散歩を楽しみに一日頑張ります」

「そうね、わたしも家のこと終わらせて美味しいお弁当作るわね」


そんな会話をしているとわたしは朝ごはんを食べ終えていた。

「ごちそうさまでした!」

「はい、お粗末様でした。顔洗って来なさい」

「はーい!」


今日お母様と何を話そう。

お父様のこと?学校のこと?道場のこと?色々話したいことがある。


その日は学校が終わると軍が運営している図書館で宿題を終わらせ、世界情勢について書かれている本を読んでいた。

もう太平洋戦争は始まっている。

詳しくは始まってはいないが、満州事件が現実で行われていることから、もう少しで激化する。

そのときに備えて英語や世界情勢を学んでおくことは必須だ。その為に稽古がない日は必ず図書館で勉強しているのだが、お陰でだいぶ英語が話せるようになった。

ただこの時代、話せるのは反日と判断されてしまう可能性があるため英語がわかることは誰にも言っていない。


夕日が沈むころになったので変える準備をしているときだった。

「おや?君は、、、」

誰だろう、このおじさん。

「あの、、どなた様でしょうか」

「あぁ、すまんすまん、おじさんは吉田の同期だよ。吉田から娘自慢はいつも聞いててね、一目でわかったよ」

お父様、、、なんて恥ずかしい、、

「(コソ)英語ができるんだってな。一般人のなかではあまり知られない方がいいが、軍人のなかでは重宝される存在だ。君のお父さんが自慢するのも分かるよ。」

「...ありがとうございます」

「ところで嬢ちゃん、名前は何て言うんだ?」

「雛子と申します」

「雛子か、いい名だな。確か剣道をやってるんだってな?」

「はい」

「強いって聞いたぞ!俺の甥っ子も今度始めるみたいだから一人前になったら稽古してやってな」

「...機会があれば是非」

「そんじゃ!またな!気を付けて帰れよ!」

「ごきげんよう」


台風のような人だな、、、


って時間!


時計を見ると午後6時を回ろうとしていた。

わたしは急いで自宅に戻る支度をし、全速力で帰宅した。

「ただいま戻りました!!!」

「あらあら、そんな急がなくても笑」

「すみません、お父様の知り合いとお話ししていて、、」

「あら、満田さんかしら?」

「名前は存じませんが、わたしのことはお父様がお話しされていたようでご存じでした」

「あ、じゃあ満田さんね笑」

満田、、、

偶然だろうか。

「夜は冷えるから暖かい格好に着替えてきなさい」

「わかりました!」

わたしはお父様が買ってくださったワンピースにカーディガンのようなニットを羽織って玄関に向かった。


玄関ではお母様が微笑みながら手を差し出しており、

わたしはその手を握って散歩に向かった。


「雛子はお勉強楽しい?」

「楽しくはないですね。ただ将来夢を叶えるために頑張っているだけです」

「雛子の夢って?」

「女でも男と同じように仕事ができると証明することです」

「まぁ、かっこいいじゃない」

「お父様もそう言ってくださいました」

「女性は家にいるのが当たり前な中でそのような考え方を持てるのは素晴らしいわね」

「お父様とお母様がいつも応援してくださるからですよ」

「あら、嬉しいこと言うわね笑」

「...1つ質問してもよろしいですか?」

「なんでもいいわよ、何かしら」

「お母様はお父様のどんなところに惹かれて結婚なさったんですか?」

「急に?笑

んー、そうねぇ、、、」

「やっぱり頼りがいがあるところかしら。あの人、言葉ではあまり言わないけど雛子のことを溺愛してるし、わたしのことも守ってくれるし。でもね、俺が守るからとか臭い台詞は言わないのよ。わたしはもともとそういう台詞を言う人は嫌いだから、言葉じゃなくて行動できちんと守ってくれる、そんなところに惹かれたわね」

うわぁ、わかる。わかるよお母様。。


現実世界でもそうだった。

「俺が守るよ」「俺を頼って」「一生好きだから」そんなこと言うやつにかぎって浮気するんだから。


「お父様もお母様も、やっぱり素敵な夫婦ですね」

「ありがとう。そんな夫婦から生まれたあなただもの、みんなに愛されて当然よね」

「みんなに?」

「あら、自覚がないのかしら?笑」

なんのことだろう、、?

そう考えてるとお母様から言葉の意味を伝えられた。

「近所の子、道場の子、みんなあなたに惹かれてるみたいよ?笑」

「、、、え?」

そんな馬鹿なwww

「本当よ?こないだ町内会の集まりに行ったら息子さんがいる家庭ほとんどからあなたに許嫁がいるのか聞かれたもの。いないならうちの子をって」

「なんともまぁ、、、」

「あなたの意見を尊重したいからとりあえずみんなお断りしておいたけど、雛子はいまお募いしてる方とか惹かれてる方はいるの?」


好きな人か、、、


「好きな人はいません。今は勉強と剣道、それにお父様とお母様がいれば十分です」

「フフッ!そのうちいい人が現れたらあなたわかりやすいでしょうね、お父様にそっくりだから笑」

「、、恐らくそうでしょうね、、」

「あ、この広場辺り良さそうね、雛子、この呉座を敷いてくれる?ここでお弁当頂きましょう」

「わかりました」

20分くらい歩いた先には木々がたくさん生い茂ってる広場に到着した。


お母様はこの時代にしてはすごい豪華なお弁当を作ってくれた。

卵焼きにほうれん草のおひたし、煮物、その他にもたくさんおかずを用意してくれた。

、、この時代ってお弁当は梅干しとご飯ってイメージだったんだけどな、、

「久々に夜のピクニックだから張り切っちゃった!」

そうニコニコしながら話すお母様はホントかわいらしいお母様。

「お父様が戻ったらまた来ましょうね、お母様」

「そうね!ここは桜の季節になると桜が満開になるから!その時はお父様も一緒に来ましょうね」

この広場が桜、、、

もしかして富岡の桜と関係あるのかな、、、

ご飯が食べ終わると2人で呉座に横になり、学校のこと、道場のこと、たくさん話をした。


「雛子、1つ提案があるのだけど、、、」

突然お母様が真剣な顔になった。

「なんでしょう」

「もし、これから先お父様が戦争に行き、戦死してしまったらわたしたちはあのお屋敷を売って海の方に行きましょうか」

「お母様、、、」

「ここにまで戦争の被害に遭うことはないと思うけど、お父様は遠征に行かれるかもしれないでしょう。その時は海の方に行ってお母様の実家もあるし、魚を釣って生計を立てる方がいいと思うわ」

「そうですね。お母様に着いていきます」

「うん、ありがとう。そしてもう1つ報告があるの」

「今度はなんです?笑」

「あなたに弟か妹ができるわよ」

「....え?」

「昨日、実は病院に行ってきたの。まだ性別はわからないけど妊娠してるって」

「ホントですか!!嬉しいです!妹かな、弟かな、、」

「雛子はどっちがいい?」

「どちらでも嬉しいですが、弟の方が嬉しいですね!跡取りになってくれるじゃないですか」

「あら!わたしたちは弟が生まれても雛子に継いでもらおうかと考えてたのに笑」

「世間の目はそうはいかないですよ笑

 弟だったらわたしは好きなことできるので、、」

「そうね、また性別がわかったら教えますね。

 それまで色々手伝ってもらうこともあるけどお姉ちゃ  

 んよろしくね」

「任せてください!」

「頼もしいお姉ちゃんがいてよかったね」

そうお腹を撫でながらお母様がお腹にいる赤ちゃんに話しかけていた。

そうか、姉になるのか。。

何となく、わたしの中では弟な気がしていた。

女の子だったらお母様が全体的に丸くなるがまだ少しお腹が出てるだけでいつも割烹着を着てることもあり、4ヶ月になるというのに全然気づけなかったからだ。


「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」

「あ!片付けはわたしがやります!」

「これくらい大丈夫よ笑

 それじゃあ、お弁当の片付けはお願いできる?私は呉座を片付けますね」

2人で片付けをし、わたしも持てるものをもち、また2人で手を繋いで帰路に着いた。

「お父様には伝えたんですか?」

「まだよ笑帰ったら話そうと思って」

「お父様、大喜びするでしょうね笑」

「きっとそうね笑」

「男の子でも女の子でもどちらでもいいから、とにかく元気に出てきてね」

わたしはお母様のお腹に向けて話しかけた。

「出てきたら頼もしいお姉ちゃんがいるから安心して出てきてね」

わたしの言葉に続けてお母様がまた声をかけた。

わたしもお姉ちゃんになる。

守るものが増える。

もっと知識をつけてもっと強くならなきゃ。


そう決心した日だった。



この物語は一部歴史の実話を含むフィクションです。


歴史上の出来事以外の登場人物や場所は一切関係はございません。

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