64. ラム先生の5限目(最終回)
音楽の理屈の話です。
閑話的なものなので興味のない方は65話までスキップしてください。
「皆さんこんにちは。講師の鬼ヶ崎ラムです。
今回が最終回となります。張り切っていきましょー」
「ちーっす、ばっちこーい」
「こんこん、ばっちこーい」
「さて、メロディは全体がキーのスケールであってもコードごとに馴染む音を使うことで
進行に沿ったものを考えようってとこまでだったね。
キーCのドレミファソラシだとドが全部の中心って話をしたけども考え方一つのとこがあって、
コードがDmの時はレを中心にEmの時はミを中心にってゆー考え方もあるわけ。
ここでレから始まるスケールを考えるとレミファソラシドでトニックのレからの音程は
完全1度、長2度、短3度、完全4度、完全5度、長6度、短7度になって
メジャースケールじゃなくなってることが分かる。このスケールをDドリアンとゆーよ。
トニックをドに置き換えてCドリアンにすると違いがよく分かるでしょう。
ドレミ♭ファソラシ♭っていうマイナーとも違うスケールになるわけ。
そんな感じで他の音から始めるとそれぞれ独特の音程をとるスケールになる。
ミファソラシドレならEフリジアン、ファソラシドレミならFリディアン、ソラシドレミファならGミクソリディアン、
ラシドレミファソならAエオリアン、シドレミファソラならBロクリアンってゆーの。
まあ言っても全部同じ音なんで全部キーのスケールで考えてコードごとに偏りを持たす方が私としては合理的に思える。
ただしここで出てきたそれぞれのスケール、モードスケールともいうけど、
これ自体の使い道は別にあるしロックでは使い倒すことになるの」
「ドからのCイオニアンを入れてイドフリミエロってやつっすね。
そこだけ覚えたけど使い方とかはチンプンカンプンでした」
「ここで今まであえて話してこなかったアレを話そう。金さんにはたぶんお馴染みのペンタだよ。
ペンタトニック・スケール、5音階ってことでメジャーとマイナーのペンタトニックがある。
Cメジャーペンタトニックはドレミソラ、Cマイナーペンタトニックはドミ♭ファソシ♭。
ここでロックの不思議、メジャーキーでマイナーペンタの登場だよ。
今までCメジャーで話してきたから分かると思うけどCマイナーペンタトニックのミ♭とシ♭は
キーから外れた音だよね。
でもロックでは不思議と多用されるんだ。金さんもオブリ作るところで使ってたでしょ。
もう常識といっていいくらい使われるんだけど、これの説明ってほとんど分からないものばかりなんだよ。
この短3度と短7度、これにソ♭の減5度を含めてブルーノートと呼ぶ、ブルースに特有の音使いなのね。
つまり西洋音楽にはない感性だから五線譜で書くと外れちゃうわけ。
ブルーノートはロックではレギュラー枠。
つまり五線譜の秩序にブルーノートという異物を混ぜてイイ感じにしたのがロックという音楽ジャンルの特徴の一つということ。
減5度はたまに混ぜて使うくらいが丁度いい劇物なんだけど短3度と短7度はこれをルートにしたコードで使ってもヨシって感じね。
Cメジャーのダイアトニックコード、C、Dm、Em、F、G、Am、Bm-5にプラスしてE♭とB♭がメンバー入りしたよ。
コードで鳴らすってことはメロディでも使えるって話でメジャーキーにマイナーペンタの不思議が説明可能。
作曲を具体的に見据えて言えばキーCでダイアトニックコードにE♭、B♭入れた進行を考えることによって
ロック的なフレーズが馴染む環境を意図的に作れるという話になるわけ。
ここでたった3つしか無かったメジャーコードが5つに増えたでしょ。
これがロックンロールのニギニギしさの理由の一つ。ここでなぜかマイナーペンタトニック。面白いでしょ。
さらにここで先程下拵えしたモードスケールの登場です。
ドミ♭ファソシ♭のCマイナーペンタトニックにCメジャースケールの音を補完してやるとどうなるか?
ドレミ♭ファソラシ♭、ジャーン!Cドリアンの完成です!
もうドリアンの中にマイナーペンタトニックが入ってるようにしか思えない。
というか正にそういう使い方をしてるんだよプロの皆さまはね。
マイナーペンタのフレーズとして認識しつつもスケールの気分はドリアンって感じ。
マイナーキーならエオリアンで同じことが出来る。
ちなみに短7度だけ使ったドレミファソラシ♭だとCミクソリディアンでこれもよく使うよ。
これでロックの曲が書けるはずだから、頑張って書いてね。
目標は年内に1曲完成させること。よろしくね」
「フーッ、漲ってきたっす!頑張るっす!」
「うんうん、ウチもヤってやんよー!頑張るぞー!」




