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60. ラム先生の1限目(小学校からやり直せ)

この話の途中から音楽の理屈の話です。

閑話的なものなので興味のない方は65話までスキップしてください。

「ほー、ココが鬼さんの棲家(すみか)っすかー」


「言い方!鬼の棲家ってなんか嫌なんだけど。お酒飲まされて首切られそう」


「こわいこわーい、まーさかりかーついだきーんたろおーって感じー」


「銀さんには伝わった!?」


「アタシにはよく分からないネタっすが、銀さんこう見えて勉強出来る人なんすよ」


「え、意外」


「いやいや、意外性の(かたまり)の鬼さんがなに言ってんすか」


「がらがらー、何もないね」


「リビングにはね。メインは防音室だからさ」


「徹底してるんすね。で、今日はそっちでなんかするんすか?」


「うん。合宿で約束したから曲の作り方ってゆーか、考え方?

それを教えようかと思って。キャンファとして今必要なのは曲だからね。

3人作れたら、3倍のペースで出来るでしょ」


「鬼さんらしい容赦のなさ!お宅拝見で終わるわけなかったっす」


※※※※※


「じゃあまず、金さんはベースラインを作る時、どうしてるの?」


「コードっすね。コードのルート、3度、5度。

イイ感じになるように繋いで次のコードって感じでやってるっす」


「コードの構成音と音程は分かると。銀さんは?」


「うーんとうーんと、ウチはー、Cはドミソって知ってるよ」


「コードについては分かるってことかな?ま、いいや。

はい、じゃあ2人とも小学校からやり直しー」


「「えー!」」


「バカにしてるんじゃなくて、普通は皆んなそんな感じだよ。

小学校の音楽で習ったはずのことなんて理解出来てる方が珍しいんだよ。

でも、あれがマジで音楽の基礎。ロックでも変わんないという驚愕(きょうがく)の事実」


「そうなんすか?確かに小学校の音楽って眠かった記憶しかないっすね」


「そーそー」


「まず、鍵盤見てもらおうか。二層に別れてて手前に白鍵、後ろに黒鍵があるよね?

で、白鍵だけでココからドレミファソラシと来て次のドが高いド、

最初のドの1オクターヴ上のドで、そこからまたドレミと続くのは知ってるよね?」


「知ってるっす」「うんうん」


「これが最初に教わる基本…なんだけど、ココにちょっとしたギミックがある。

このドレミファソラシはハ長調、キーとしては英語でCメジャー、普通はCって言ってるやつ。

つまり、これを基準の物差しとして考えるから色々分からなくなっちゃうんだ。

ニ長調のDはこっからは逆立ちしても出てこない」


「はあー、言われてみれば」「へーへー」


「基本としてドレミファソラシのハ長調を考えさせる教育なんだけど

これが基準としての物差しにならないという偏りを知っておく必要があったわけ。

つまり「基本だけど偏ってないとは言ってない」っていう偏向教育のせいで音楽の時間は眠りの時間と化してたんだよ。

じゃあ何を物差しとするかというと、この二層になった鍵盤を一層に戻してやる必要があるの。

ドの次がレではなく右上の黒鍵、ド#またはレ♭って感じで、とりあえず今は#に統一して


ド、ド#、レ、レ#、ミ、ファ、ファ#、ソ、ソ#、ラ、ラ#、シ


の12音。鍵盤見たら分かるようにシの次は1オクターヴ上のドになる。

ここから全部のキーの音をチョイスするっていうのが全体像になるの」


「いや、そういうことだったんすか!許せんな日本の音楽教育!」「ほんとほんと」


「そこで基本となるCに戻って、ドレミファソラシの各音の間に黒鍵が有るのと無いのがあるじゃない?

この間に黒鍵を挟んだ間隔を全音と呼んで、黒鍵が無く直接白鍵同士の並びを半音と呼ぶの。

白鍵と次の黒鍵の間隔も半音なんで、全音は半音2個分の間隔なんだよ。

で、Cのドレミファソラシを全音の全、半音の半として各音の間隔を並べていうと全全半全全全半になるわけ。

これが長調、メジャーの間隔になってる。

だからDだったら始まりをレにしてこの間隔をそのまま当てるとレミファ#ソラシド#っていうことになる。

これがDメジャー、ニ長調なので五線譜の調号は#二つ、ファとドに付いてるという理屈」


「うひょー!これほんとに小学校で習った内容っすか!?

なんかレベチじゃないすか。そりゃ皆んな睡眠学習になっちゃうのは当然っすね」


「ひどいひどい」


「という感じで基礎の基礎からやり直すと曲の作り方もそんなに難しいもんじゃないことが分かってくると思うよ。

ちょっとしたカラクリさえ認識出来ればネットの情報で結構学べるはずだし。

とりあえず今日はこれくらいでいいよね?」


「たぶん入り口ちょっと入ったくらいと思うっすけど、

今まで知ってたはずの事がひっくり返った感じでして。このまま持ちかえらせてもらいたいっす」


「つかれたつかれたー」

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