54. 学園祭2日目
始まる前までちょっと義務に感じていたクラスのメイド喫茶が
今まで直接の接触がほとんどなかったクラスメイトといい感じに話せる機会になったことで
ラムは何ごともやってみないと分からないものだと少し反省した。
なので2日目はクラスに寄る必要もなかったのだが自主的に顔を出し遊撃部隊長として最後の出撃をすることにした。
全隊員を引き連れての総出撃はなかなか壮観であった。
このサプライズに皆んなが喜び、普段は冴えないカースト下位女子も非日常のメイドコス姿のまま
自然な笑顔ではしゃぐサマは不思議とキラキラしく見えたらしい。
この日、人生初の男子からの告白をゲットした下位女子が何人かいたという。
鵬皇学園高等部にメイド喫茶遊撃部隊の奇跡として後々まで語られる学校七不思議のひとつとなったとかなかったとか。
遊撃部隊長としての仕事は統括をしているシズカを労うためにメイドとして接待することで完結した。
ラムの全身全霊による萌え萌えキュンにより月夜野静香はその日、悟りの境地に至ったという。
目をかっ開らいた既にお馴染みとなった開眼フェイスが徐々に変化を起こし
極細の糸目にアルカイックスマイルの入滅フェイスへと至った。
涅槃へと至ったメイドコスのロリっ娘はそのままの姿でメイド喫茶の奥の席に恭しく安置された。
その前にはお供え物が自然と置かれていくようになったという。
ラムの持つ謎フェロモンは遂にラスボス第3形態まで誘発可能となったらしい。
※※※※※
キャンファのステージは学園祭の終わりに近い15:00に開演となっている。
午後になってすぐに会場の体育館は大入り満員状態になった。
軽音の目論み通りで午後からは3年生バンドが順次、高校生活最後の渾身のステージを繰り広げていた。
うん、実に良い。
ラムは舞台袖から輝く青春の1ページを覗いて心の底から楽しんでいた。
演奏の巧拙はまったく関係ない。
今ここでなら死んでもいいとさえ思っている彼らの心情に共感した己の心が震えるのである。
こういう姿が人を惹きつけて止まないのだが、意外にもこれについては無自覚なのである。
「ひゃー、熱いっすねー」
「ガチンガチンー、剥き出しの対抗意識がいいよねー」
「トリは譲っても気持ちは負けてないってことよ。正々堂々と受けて立ちましょう」
「でもなんで鬼さん、メイドコスなんすか?」
「これにも勇気貰ったから恩返しかな。萌ーえ萌ーえキューン♡」
「あ、それステージでやるの禁止っす」
「えー!せっかくマスターしたのにー」
「解釈違いが酷くて暴動が起こるレベルですから。マジで止めてください」
「銀さんが普通に喋った!分かった大事なことなのね」
「はー、マジで心臓に悪いっす」




