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40. 美しい私たちの時間

ラムのコーデはサマーニットにデニムパンツ、パンプス、いつものサングラス、

ミドリにもらった3連バングルとかなり大人しめなのだがそれでも人目をあつめてしまう。

ミドリも清楚系ワンピースを中心に無難にまとめているが

黙っていればラムとは別系統の美少女なので2人で歩くだけで注目の的となる。

しかし幸いなことにあまりにもキラキラし過ぎていて遠巻きに見られるだけで済んでいる。


「お腹すいたねー」


「どっか入ってお昼にしよっか」


「スマホで調べる?」


「いや、テキトーでいいっしょ」


「じゃあ次に見つけた町中華で」


「なんで中華?いや、そこはお寿司じゃね?」


「じゃそれで」


会話はフツーのJKなのだが。


♡♡♡♡♡


昼食をとってそのまま繁華街をブラついてから予約した温泉宿に行くとちょうどチェックインの時間である。

部屋の鍵を受取って宿の人に案内される。

大きな温泉旅館であるが建屋(たてや)は本館と幾つかの離れに別れている。

離れは一戸あたり2〜4人で宿泊出来て個別の露天風呂が付いているのだ。

ミドリはそこを予約していた。


「へー、いいね露天風呂!」


「ね。これ見た時、絶対ココ!ってなった」


案内してくれた年若い仲居さんが顔を赤らめていた。

会話は当たり前のものでも目の前のもの凄い美少女と美少女が露天風呂の話をしているのだ。

同性であっても「(はかど)る」人がいる。某開眼ロリとか

離れへの道々、仲居さんが本館の施設も案内してくれていて大浴場も入浴可能とのことで

夕方に差し掛かったばかりの今の時間は空いているだろうと早速浴衣に着替えて行ってみることにした。


「あ、マッサージチェアがあるね!」


「これも温泉旅館の必須要素だよねー」


数人の先客はあったが二人きりよりもかえって気が楽だとミドリはラムの魅惑のメリハリボディを見て改めて思った。

(これは思ってた以上に危険かも…)

気安く話してる分には色気のカケラも感じないが客観的に見るとヤバい。

ラムがそれで常に危険に晒されていると理解しているが、同時に庇護欲も感じてしまう。

温泉に浸かる前から逆上(のぼ)せそうだった。

幸いなことに先客のおば様おばあ様方は少し驚いた風はあったが高校生2人を微笑しそうに見ただけだった。

男女問わず魅了する友人だったが必ずしも全人類というわけではないことに安堵する。


大浴場を満喫して並んでマッサージチェアを使って変な声を出しあって笑って

離れに帰ってポワンとしてるうちに夕食が運ばれてきた。


「夕飯を個室でとれるのも何気にポイント高いよね」


「ミドリちゃんだってちゃんと仕切れるわけですよ」


「なんかシズカちゃんに対抗してない?」


「あんな変態ロリと一緒にしないでよね」


「ああ見えて有能なんだけどね。性癖がちょっと」


「ちょっとじゃないでしょ。男だったらレッドカード一発退場ものよ」


「ミドリちゃんのツッコミが好きだな。きっと甘えてんだよ。こういうのが成立するのは今だけなんだよね」


「ラムちゃんって急にすごく大人な時あるよね。

ちっちゃい子がふざけてるみたいな時もあるし、メチャクチャ頭良いこと言う時あるし、

ギター弾いても歌ってもカッコいいし、すっごくエロくなってドキドキさせられるし…ほんと分からない。

もう自分が分からない。帰り道が分からないよ…」


「帰らなくていいんだよ。そのまま前に進んでもいいし、そこに(とど)まってもいいんだよ。

帰り道が分からなくなったのは、その時点で帰らなくていいと思ったからでしょ?」


「…」


「さあ、食べようよ。お腹すいちゃったよ」


「うん」


※※※※※


2人で露天風呂を楽しんで、友だちや学校のことを少し話してからセミダブルのベッドに一緒に入った。

2台並んだベッドの片方に2人で入って抱き合って寝た。

特に何をしたわけでもない。


ミドリはラムを現在のままの存在として好きでいていいんだと心の底からの納得を経て

かつての「今ここで私とどうしたい?」というラムの問いに答えを出せたのだった。


「私をずっと抱きしめていて」

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