38. 音楽っていうのは語るもんじゃないね
夏フェスの3日間、とても幸せな時間だった。
音は聴くだけでなく浴びると違う景色が見えるとかなんとか。
まあちょっとした悟りを得たみたいな状態がしばらく残っていて同類が2人いて助かったなと我にかえってから思う。
バンドメンバーと一緒だったのは良かった。
合間に熱く語りあうことでどういう感覚を持ってる奴か理解が深まる。
やっぱり揺さぶられた直後のちょっとオカシナ頭で口走った言葉はたとえ断片的であってもそいつのリアルなんじゃないかと。
そんなこんなで夏フェス最高!と拳を突き上げんばかりの状態のまま別荘へと帰ったが、
そこで力尽きて電池が切れたように寝た。
翌日起きてからクリアになった頭で考えたら相当ハイな状態だったのだろう。
あのまま両親と会話してたらヤバかったなと嫌な汗をかいたので自慢の源泉かけ流し温泉でひとっ風呂浴びて全てを無かったことに。
幸せな時間って言ってんのは脳内でドーパミンがドバドバ出まくってる状態のことだから気をつけた方がいいよ。マジで
「ラムちゃん、お帰り。どうだった?楽しかった?」
「うん、最高だったよ。写真見る?」
脳内はともかくスマホで撮りまくった写真は友人3人が屋外のステージ前でポーズをとってるものや
それぞれに屋台飯を頬張るものなど健全にフェスを楽しんでいる様子が写っていた。
まだ音楽を語らせるとヤバい感じの自覚があったので意図的に旅の話に誘導した。
「前日には観光をちょっとしたし、ホテルもすごく良かったんだー、パパとママも行ってみるといいよ」
「旅行もいいわねー」
「そういえば新婚旅行はどうするの?」
「まだ決めてないね。寧々はどこに行きたい?」
「やっぱ海外かな。ロンドン、パリ、ローマ、ひと通りは行ってみたいかも」
「ヨーロッパ一周みたいなものか」
「豪華客船のクルーズとかは?」
「ずっと船ってちょっと怖いかも」
「式は年末だから新婚旅行は冬になるね。ヨーロッパは寒いかもしれない」
「そっか。じゃあハワイとか?あ、南半球のオーストラリアなんかは夏だよね」
誘導は成功したようだ。
ということで7月は無事終了した。
明日にはミドリがやって来る。




