23. 仄かに百合の香りがしました
キャント・ファインド・マイ・ウェイ・ホームというバンド名は気に入っているが
常にフルで言うのは面倒だし覚えられにくいのでとりあえず略称を「キャンファ」とすることにした。
気づいたらノリでまだ誰も知らないバンドの略称を決めるという
厨二行為をしていたことにメンバー全員で慄いた。
それだけおかしなテンションになっていたということだろう。
一応、オリジナル曲を作っていて最終的にはそれらをやっていきたいという希望も話した。
自分でも意外なほどバンド活動に飢えていたらしい。
活発にやりとりされているキャンファのグループライムを見てニヤついていたら勘のいいミドリに不審がられた。
「ラムちゃん、私に隠れて何かやってない?」
「隠してたわけじゃないけどバンド結成したんだよ」
「えー、聞いてない!」
「いや、まだ1回スタジオで合わせただけだし。
ライブやるようになったら来てもらおうと思ってたんだ」
「いつ?」
「ん?未定だけど?」
「ラムちゃんならいつでも出来るでしょ」
「いや、バンドだからバンド練習しないと。
ってか、ミドリちゃんメンドクセー女になってるよ。珍しいね」
「いやだって気になるし。たぶんもうファンだし」
「ミドリちゃんって恋をするとそんな感じになるのかもね」
「恋?え、これって恋!?私、ラムちゃんのこと好きなのかな?」
「なんでそーなるの。自分でファンだって言ったじゃん」
「なんか分かんなくなってきた。あの時、すごくドキドキしたんだ。
たまにラムちゃんから目が離せない時があるし」
「え、これ告白?なんか熱烈に迫りだしたよこの子。落ち着こ?一旦落ち着こ?」
いつも他人とは少し距離をとって上手く捌くことが得意なミドリの芯の部分はきっとピュアなのだろう。
初めて見せる可愛いらしい女の子の顔をして慌てている親友を微笑ましく感じていた。
でも、言われたように初ライブの予定を先に立てた方がいいかもしれない。
それだけの実力はあるメンバーだしオリジナル曲のストックも数曲だけだが対バン程度であれば十分だろう。
まずデモを渡してしまおう。話はそれからだ。
※※※※※
「で、略してキャンファっていうの。これから活動してくからよろしくね」
少し放置してただけでミドリが迷走したので、S5メンには周知しておくことにした。
「あの時の外部生の2人か。ラムちゃんは宗教家に向いてるよ。
周囲を望む方向に彼ら自らの意思であるかのように動かしても誰も不思議に思わないっていうのが本物のカリスマ。
ラムちゃんにはそれがあるんだよね」
最近、ラムを通して宗教者としてどうあるべきかという命題に取り組みはじめたらしいメシアはなんか面倒くさい奴になってた。
まだフグって言われてブスくれてた頃の方が可愛げがあったのに。
開眼すると厄介になるのはラスボス第二形態的な仕様かもしれないね。
「ラムちゃんのギター聴いてみてーな。コイツらみんな凄かったしか言わねーし。
シズカなんてそっから一層変な奴になっちまうしでよ。なんか気になんだよなー」
ガラは悪いが言ってることはすごく普通のトモくん。存在がどんどん希薄になってんぞ
「ラム様、私、キャンファのマネージャーやります」
「いや、まだほとんど活動してないし」
ブレない開眼ロリっ娘。
「ラムさんの演奏をまた聴きたいです。公演を楽しみにしております」
「エリカちゃん、早めにライブ出来るように頑張るね」
安定のお嬢。
「キャンファの他のメンバーさんて1年の外部生なの?何組の人?」
「そういえば組は聞いてないなあ。学校で会うよりもライムのやりとりのが確実だからね」
復活してきたミドリ。まだ顔赤いよ?




