19. ラムは名奉行
翌日の放課後、件の女子バンドを呼び出し、ラムの提案で各々代表1人の話を個別に聞くことにした。
まず内部生代表から。
「あの人たちにはついていけません。
私たち3人は初心者なのにいつもいつも練習が足りないって言うんです。
だからちゃんと練習時間に集まってやってるんでしょうと言っても家でもやらなきゃ意味がないって。
家でまでやる時間なんてないですよ。
外部生の人たちみたいに頭が良くないから塾に通わなきゃいけないんですから」
「ふーん」
「ラムちゃん、今ので何か分かったの?」
「うん。だいたいは把握した」
「フンス、フンス」
次に外部生代表に聞く。
「アイツら全然練習してこないんすよ。
それで毎回無駄な時間になってるってのにさ」
「バンドを別けることは出来ないの?」
「軽音全体でバンドが10個あってパツパツなんすよ。
練習は平日の放課後を2部制で回してるからそれ以上になると週一の練習時間がとれなくなるっす」
「なるほどね」
「ラムちゃん、解決出来そう?」
「たぶん?まあなんとかなるでしょ」
「フンス、フンス、フンス」
バンドメンバー全員を呼ぶ。
ここからは不詳、この鬼ヶ崎ラムが仕切らせてもらいましょう!
「はい、問題が分かりましたー
まず、外部生の2人は言葉が足りてない。内部生の3人に話が通じてなかったです。
それから、内部生の3人は根本的に勘違いしてました。
経験者の言葉は重いです。初心者はちゃんと耳を傾けてください。
問題の根本をお話しします。
軽音学部で割り当てられている週一回1時間の練習時間というのは正確に言うとバンド練習の時間です。
バンド練習はバンドとして各楽器を合わせて練習するもので各楽器個別での個人練習とは別です。
つまり個人練習をバンド練習の日まで自主的にやってきて
自分のパートを弾けるようにしてくるのが本来のサイクルということです。
内部生の3人はそこから分かっていなかったのでバンド練習の時間で個人練習をするのが当然のことと考えていた。
外部生の2人はそこは分かってる前提で個人練習をやってきてないことだけを非難、
つまりただサボってるだけだろうと断定してしまったというスレ違いの悲劇でした。
ということでお互いに誤解があったことはご納得いただけたかと思いますが
既にお互いに踏み込んではいけないところまで踏み荒らしてしまって感情的に収まりがつかない感じでしょう。
もうそうなれば出来ることは一つ!解散です。
初手から行き違っていたようなので惜しくもないでしょうけどカタチだけでも続けていたのは理由があるはずです。
これも思い当たる事が一つあります。学園祭に出たいのではないですか?
やっぱりそうですよね。
でも学園祭で演奏出来るのであれば軽音でなくてもいいのでは?
特に経験者のお二人はどうでしょう?
許可は生徒会にとらせればいいでしょう。ついでに会場も考えてもらいましょう。
ここに置き物のようにいるだけのメシアくんが頑張ってくれますよきっと。
PAなんかの業者関係はお金で解決出来ますし。
自分もやりたいですしなんなら全額負担もやぶさかではないということで解決でいいでしょうか」
「フンス、フンス、フンス、フンス!」
シズカ方面からたまに発せられる荒ぶった鼻息は聞かなかったものとする。
のちに鬼ヶ崎裁きとして鵬皇学園高等部生徒会に語り継がれる名裁判である。
これにて一件落着!




