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労働

初投稿です。お手柔らかにお願いします。

早朝。俺は4人家族の唯一の収入源となる、大工仕事をするために隣町へと向かった。

隣町へは徒歩1時間以上かかるが、この年で雇ってもらえる仕事などそうそうないうえに、大工仕事は俺の重力魔法が役立つのでありがたく稼がせてもらっている。

「お、ニイ、おはようさん。今日も痩せこけているな、お前は!」

「はざっす……」

親方のモズさんはこんな年齢で現場仕事なんかしている俺のことを気にしているのか、真っ先に俺に声をかけてくれている。

痩せこけているのはどうしようもない事だが。

「よし、じゃあまずはあの木材と足場、運ぶのと組み立てよろしくな」

「っす……」

11歳の俺を働かせてくれる場所なんてかなり限られているが、いくつかある仕事の中で大工が最も俺に合っているし給料もいい。

俺の魔法、重力操作は運ぶ木材の重力やふるうトンカチの重力を自在に変化させることで非力な俺でも周囲の大人と変わらない力仕事をさせてもらうことができる。

ただ重力魔法を使えることは親方にも隠している。理由は単純明快。魔法が使えると知られれば、何に利用されるかわからないからだ。

この世界の多くの人間は魔力を持っていない。魔法師はその体内に流れる魔力を練り構成することで、各々自在に魔法を具現化することができる。

どんな魔法を使えるのかは遺伝や才能によるらしい。俺の場合、母は魔力がないので父親譲りなのだろう。

俺は世間のことなどミリも知らないが、おそらく俺の持つ重力魔法はかなり珍しい。周囲に使っている人間を見たことが無いし、重力魔法は何といっても強い……!

いつも八百屋から逃げきれているのも、いきなり襲われても相手に圧勝できるのも、この魔法のおかげだ。

魔法が使えるやつは貴重な人材として見られる。しかもそれが珍しい魔法で、あんな家の出身となれば俺はどんな扱いを受けるか分からない。

だから親分にも家族にさえも俺は魔法を使えることを言っていない。

「ふぅ。ひとまずこんな所か」

建築に必要な木材の運搬と、大工たちが建築作業に使う足場の組み立てが無事午前中に終了した。

午後は本格的に木材の加工作業、組み立て作業になるが、俺は大工としての技術や知識は無いので荷物運搬や安全確認などの簡単な力仕事をすることになる。

「おーい、昼飯にするぞー」

「ういーす」

親分が現場に大きな声をかけるとみんな一斉に返事をし昼休憩になる。

「ほい、ニイ。これ今日の分な」

「モズさん、いつも要らないって言ってるでしょ……」

親方はいつも昼飯を持ってこない俺に気づいてから毎回弁当を渡してくる。

「そんなこと言うなよ。まだガキなんだから食わないとほんとに死ぬぞ?」

「……そうっすね。じゃあ有難く貰います」

貰ってもどうせ食べられないんだが……。

俺はモズさんから離れ弁当を食べた素振りをしておいた。

モズさんが持ってくる弁当はいつも唐揚げやハンバーグなどといった豪華なメインが1つ入っていて、ここらでは人気の弁当屋さんのものらしい。

初めて貰った時、試しに唐揚げを1つ口にしたことがあったが、普段全く食べていないことと油のまとわりついた肉の塊は相性が最悪だったらしい。

「げぇっ……っうう……」

その日以降、モズさんから貰った弁当は食べられそうなものを弟たちに残して分け与えている。


その日は無事に仕事を終え、この日の日給を手に入れた。


「おーい、モズの親方、あんたに訪問者だぜ。どこの誰か名乗らねぇんだけど旅人らしい」

大工の1人が帰り際モズに声を掛けていた。

俺は関係ないな。今すぐにでも家に帰ろう。

弟たちの顔を思い浮かべながら、俺は素早く現場を抜けた。


「初めまして。貴方が現場監督の方ですか?」

「ああ、モズってんだ。何かうちの現場にようか?土地に関することなら持ち主に直接言ってくれ。ここは街の新しい病院が作られると決まっている」

「いえ、あなた方の仕事に関することではありません。ここに重力魔法を使う少年が務めていませんか」

「……少なくとも魔法を使えるやつはいねぇよ。居たとしても守秘義務があるんでな。他所のやつに教えることはできん」

「そうですか。ではもう1つ聞かせて下さい。今さっきそこのゲートから出てきた少年、彼はここで雇っているのですか」

「……、いや。あれはここで務めてるやつの息子だよ。それより疲れてるんだ。早く帰ってくれ」

「ああ、すみません。用事は済みました。ありがとうございます」

ビンゴだな。

旅人らしき人物は薄ら口角を上げお辞儀をし、その場を後にした。

ここまで読んでいただきありがとうございました!続きます!

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