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026 ポーラ王国5人衆

 これから会うというツキノワの要人たちについてタダシはエスケレスから説明を受けていた。


「ポーラ王国5人衆ですか?」


 「ああ。姫やレインと並ぶポーラ王国を代表する騎士たちだ。南部防衛の要になっている連中だ」


 エスケレスの説明にタダシは〔ミーシャ姫やレインと並ぶ人たちかあ・・・。いやあ、異世界にしては少ないと思っていたんだよね、美少女が。5人もいたらきっとバラエティに富んでいるんだろうなあ〕と勝手にこれから会う5人を美少女だと思い込んでいる。


 タダシがこの考えはもちろん()()でミーシャやレインにも筒抜けなわけだが、別に二人ともタダシに失望していない。召喚勇者が美少女の事を考えるのはもはや当たり前すぎて少し感覚がマヒしているのだ。


 四六時中「あの~、召喚された勇者なんですけど、俺の事を好きな美少女たちはどこですか?(ミーシャは除く)」と主張していた(ように見えていた)のが今までの勇者なので、タダシのように時々美少女のことを考えるくらいなら何の問題にもならなかった。


 タダシがそんな風に期待に胸を膨らませるというか、頭上に煩悩をさらけ出していたその頃、ポーラ王国5人衆と呼ばれるポーラ王国南部の主力といえる彼らも難しい顔をして作戦会議室に集まっていた。


 ミーシャが王城を拠点としてポーラ王国北部を魔王軍の脅威から守っている事に対して、城塞都市ツキノワに常駐してポーラ王国南部を中心に魔王軍に対抗しているのが彼らポーラ王国5人衆だ。


 一騎当千の精鋭ぞろいで一人一人が守護騎士であるレインと同等以上の実力をもっている。まさに彼らの存在こそがこのツキノワを魔王軍から守っていると言っていい。


 本人たちにもその自負があり、魔王軍八大将の1人サイカクからツキノワが総攻撃の宣戦布告を受けた時ですら慌てる一般兵たちをしり目に平然と構えていたものだ。


 そんな彼らが真剣な顔をして話し合っているのには理由がある。


 このツキノワに異世界から召喚された勇者タダシが訪れてきたとの情報が入ったのだ。


 しかもその勇者と協力して魔王軍と戦わなくてはならないらしい。こんな危険極まりない状態に置かれて緊張するなという方が無理だろう。


 「これから勇者殿が来られるがその前に賢者エスケレス殿から言われた勇者殿と共闘するにあたっての心得を皆に伝える。これは厳命だといわれているので必ず守ってもらいたい。」


 ポーラ王国5人衆の隊長であるイシンに厳格な顔で言われて四人は息をのむ。


 実際に召喚勇者の滅茶苦茶な範囲攻撃に巻き込まれて半死半生になったという例は後を絶たないのだ。


 召喚勇者(何かやっちゃいましたあ)は名目上は味方ではあるが、悪意がない分ある意味魔王軍よりも危険な存在ともいえる。

 

 「守らないと命に係わるってやつですか」


 場の空気を和らげるようにおどけた感じで言うのはニョリという少年だ。


 「真面目にきけよ。ニョリ」


 端正な顔をしたジョノーツにたしなめるように言われてニョリは肩をすくめる。その様子をみてイシンはこいつらは勇者に対しても萎縮していない、さすがに我が国のエリート部隊と頼もしく思う。


 かくいうイシン自身も勇者に対して直接の恐怖心はない。ただ、王城にいた当時自分よりも強いと思っていた先輩騎士が勇者にボコボコにされたあげくに「え?本気じゃないですよね?もっと真面目にやってくださいよ~」とヘラヘラ笑いながら言われて心を折られたという話を聞いたことがあるだけに他の連中がどう思うか不安ではあったのだ。


 全員、最初こそ緊張していたが、ニョリとジョノーツのやり取りで硬さがとれている。


 これなら大丈夫だろうとイシンは本題に入る。


 「勇者殿の頭上に何か見えても絶対にそれに反応しない事!そしてそれについて勇者殿に質問しない事!」


 「・・・勇者殿の、頭上ですか?」


 全員の目が点になる。


 四人は一瞬、イシンが何を言っているのかわからなかった。そんな四人の困惑もお構いなしにイシンは念押しをする。


 「そうだ!絶対に勇者殿の頭上については気にしてはならんぞ!」


 「・・・それは何かの暗号ですか?」


 眼鏡をかけたタイテンの質問に、イシンは少しイライラしながら答える。


 「何を言っている!今の話に頭の上を気にするなという事以上の意味があるとでもいうのか!ポーラ5人衆の頭脳とも言われるお前がそんな事でどうする!」


 (隊長こそ何を言っているんですか)と四人は思ったが、それ以上はきけなかった。


 それほどイシンの顔は真剣そのものだった。ただ、言っている事は全く意味が分からなかったが。

 

 だが、それも無理もない。イシン本人でさえエスケレスからの心得は全く意味がわかっていなかったのだ。この後タダシ本人と会うまでは。


 そんなポーラ王国5人衆とタダシの初対面の様子をタダシの()()を軸にしてすすめてみる。


 イシンたちポーラ王国5人衆を目にした時、さっそく()()がタダシの頭上に出る。


 〔全員がレイン達と同レベルときいていたから期待していたのに・・・・全員男じゃないか!〕


 レインとミーシャと同レベルときいていたタダシは完全に同レベルの意味を勘違いしていた。


〔しかも・・・なんで5人がそろいもそろって同じマッチョタイプなんだよ!全員筋肉ムキムキマンじゃないか!〕


 そう、ポーラ王国5人衆は戦闘のエリートだけあって全員鍛えられた身体つきをしている。当然と言えば当然なのだが、タダシの世界の常識では少し違うようで納得していないらしい。


 イシンたちが自己紹介をしていくが、タダシはほとんどその話をきいていない。


 全員マッチョの衝撃が大きすぎたのか、少し現実逃避を始めていた。


 おかしな方向に・・・。


 〔・・・でも、よく見れば全員マッチョではあるけれど、意外とバラエティに富んでるかも〕


 隊長であるイシンを見ながら()()を出していく。


 〔隊長であるイシンはいかにも頑固オヤジって感じのマッチョだよな。鍛えられた僧帽筋に黙ってついて来いってタイプのマッチョだな〕


 二番目に話し始めたジョノーツにはこう思っている。


 〔こっちのジョノーツは美形タイプのマッチョだな。いわゆる細マッチョってやつだ。女子にモテそうだ〕


 続く、ニョリ、ゴウに対してもロクに自己紹介を聞かないでその容姿を見ている。


 〔ニョリ、彼は甘え上手の弟マッチョだな。なかなか人懐っこい顔をしているもんな。年上に人気が出そうだ〕


 〔うんうん、ゴウは野性味あふれるワイルドマッチョだな。顔と容姿がマッチしたまさにマッチョオブマッチョだ〕


 そして最後のタイテン。


 〔最後の一人、眼鏡をかけたタイテンは知将タイプのインテリマッチョだ。常に冷静に物事を考えるタイプのマッチョだな〕


 怒涛のタダシの()()にポーラ王国5人衆は圧倒されるが、


 (あっ、この勇者殿なら大丈夫そうだな)


 と思うのだった。

次回は 027 八大将サイカク です。

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