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09 試練のほこら・証

 『はい、これ』


 「ありがとうございます!」


  目の前の空中からと突然現れた物を受け取りながらタダシは反射的にお礼を言っているが〔思ったのと違うなあ〕と頭上の()()が出ている。


 勇者の思念に無造作に渡された一枚のカードをタダシはまじまじと見る。どうやらこれが勇者の証らしい。指輪とかネックレスの様な装備品を想像していたタダシはすこし拍子抜けする。


 手のひらサイズの金属製のカードなのだが、なにやらいろいろ書いてある。しかし、この世界の文字で書いてあるのでもちろんタダシには読めない。かろうじて読めるのが、自分の名前くらいはわかっておいた方がいいだろうとエスケレスに教わった”タダシ・キヨキ”と書いてある部分だけだ。


 〔これが勇者の証かあ。これ、なんて書いてあるんだろう?〕そんなタダシの頭上の疑問に、


 『これには『この者、タダシ・キヨキを勇者として認める。伝説の勇者、ディアス・ランバート』と書いてあるのだ』


 勇者の思念は親切に答えてくれるが、その言葉はタダシの疑問の説明には十分ではなかった。


 「そうですか。その割にはずいぶんたくさん書いてあるようですけど・・・」〔どう考えてもそれだけしか書いてない文章量じゃないけど・・・〕


 『ああ。有効期限とか特典とかも書いてもあるからな。後は俺の輝かしい実績を手短に書いてあるのだ」


 誇らしげに言う勇者の思念だが、タダシは『輝かしい実績』よりもその前の言葉の方が気になっている。


 「有効期限があるんですか?」とタダシは表面上は普通に確認しているように見えるが〔更新とかあったら面倒だなあ。そのたびにこの試練のほこらで半日も歩かされたらたまらないよ〕と面倒くさがっている。


 そんなタダシに勇者の思念は苦笑しながら、


 『心配するな。ちゃんと魔王討伐には支障が出ないようになっている。有効期限について気になるのなら後で仲間にでも読んでもらうんだな』


 勇者の思念はこの場で教えてくれる気がないらしいので、タダシは別の質問をする。


 「特典って言うのはなんですか?」


 『ああ。お店で買い物をしたりすると勇者ポイントがたまるんだ。たまった勇者ポイントはお金代わりに使うことができる。・・・嫌がられるけど』


 「・・・じゃあ、使いません」

 

 そう答えるタダシの頭上に〔なんかこれ全然役に立ちそうにない・・・使わない道具として整理しておこう〕と出ているのを見て勇者の思念も少し焦った様子で真面目なトーンで話しはじめる。


『ちゃんとすぐに使えるようにしておくんだぞ。この勇者の証自体は持っているだけで少しだけ攻撃力や防御力等の総合力ををあげる効果もある。あと重要なのは勇者の証があれば俺の使っていた勇者の装備を手に入れる事ができるのだ』 


 勇者の思念の言う事には世界各地に封印された勇者の装備を手に入れるためには、この勇者の証が必要だという。



 『勇者の装備』という言葉に下がりかけていたタダシのテンションも少し戻って「どうすればいいんですか?」ときいてくる。


 『勇者の証の裏面を見てみろ』


 勇者の思念に促されて勇者の証の裏を見ると、


 『これがこの世界の地図だ。四つ光っているところがあるだろう。そこに俺の装備があるってことさ。剣、盾、鎧、兜と一通りそろっている』


 地図の上には四つの点が光っている。勇者の装備は世界中に散らばっているようだ。


 「ここにあるんですか・・・」


 〔これって世界地図だろ?さすがにこの大きさの地図で場所を示されても大雑把すぎて探せる気がしないなあ。世界地図を持って国内旅行をするようなもんだよ・・・〕タダシの()()はだんだん図々しくなっている。勇者の思念の威厳のなさに緊張感が薄れてきているのだ。


 元々そういう事にうるさくない勇者の思念はタダシの頭上を見ても特に気にしないで続ける。


 『その光っているところを押してみろ。その装備までの道のりが出てくるから』


言われるがままにタダシが光っている場所の一つを押してみると空中に詳細な地図の画像が浮かび上がって来る。


 『その地図は拡大縮小ができるし、最短ルートも出るから便利だぞ』


 「へえー。すごいですね!こんなふうに画像が浮かび上がるような物がこの世界にはあるんですね」


 と感心するタダシに勇者の思念は(君の頭上にも似たようなものが浮かんでいるんだよなあ)と思うがそれは言わないでおく。その辺の空気は読める勇者の思念だ。


 『まあ、俺の使っていたお古だけど勇者の装備は手に入れておいて損はないぞ。この世界の武器や防具の中では素材も含めて間違いなく最高峰の物だからな』


 「ありがとうございます!きっと魔王討伐をして見せます!」


 何度目かになるキリっとした顔で魔王討伐を宣言するタダシだったが、その頭上には〔それにしてもなんでこういうのって一か所にまとめて保管してくれないんだろ?せめて兜と鎧くらいはセットで置いておいてくれればいいのに。・・・先代は整理整頓が苦手なタイプに見えるし、いわゆる片づけラレネーゼってやつなのかなあ?〕と表示されていたのだった。

次回は10 南へ です。 

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