行方不明だってよ 1
「 ──は?
今何て? 」
「 だからさ、シズカが家に帰ってないんだって! 」
「 家に帰ってない?
おぃおぃ、そんなの──冗談だろ? 」
「 冗談でこんな事、言わないって。
“ 神社に行った日 ” から帰ってないらしいんだわ 」
「 はぁ?
それだと…… “ 2週間も帰ってない ” って事になるんじゃないのか? 」
「 そうだよ。
捜索願いも出されてるんだよ 」
「 マジかよ……。
…………いや、待てよ。
シズって彼氏が居たよな、確か。
彼氏の家で暮らしてんじゃないのか? 」
「 ばぁ〜か。
シズカの彼氏は実家暮らしだぞ。
それに神社へ行く3日前には別れてんだよ。
彼氏の浮気が原因でな! 」
「 またかよ…。
別れるサイクルが早いな。
前カレとは2ヵ月も続いたのにな…。
今回は1ヵ月か? 」
「 1ヵ月と8日だな。
オレは頑張った方だと思うぞ。
相手が浮気さえしなけりゃ、新記録を更新出来たかも知れないしな 」
「 1人と2ヵ月より長く付き合えたら奇跡だよ、奇跡!
オレなら断然 “ 続かない方 ” に5万賭けるね! 」
「 自信満々だな…。
どっからそんな自信が出るんだか… 」
「 逸その事、お前がシズと付き合えば良いのにな。
お前とシズって、兄妹みたいに仲が良いんだからさ 」
「 絶っ対に嫌だね!
オレはシズカとは絶対に付き合わないって決めてるんだよ。
1000万くれたってオレは断固、断るね! 」
「 お前も相当な自信家だぞ?
まぁ、冗談は置いといてだ。
シズが転がり込みそうなダチに心当たらはないのかよ? 」
「 無いなぁ〜〜。
一通り連絡してみたんだけどさ、皆シズカとは会ってないらしくてさ。
オレのダチ網はお手上げだよ 」
「 暗礁に乗り上げてるわけか…。
最近、シズに新しい彼氏や友達が出来た──とか考えられないか?
新しい彼氏や友達ならオレ達にも連絡先が分からないからなぁ… 」
「 シズカは2週間前から行方知れずなんだぞ。
最近は無理だろ 」
「 2週間前を最近って言うだろ?
オレは1ヵ月前を “ 最近 ” って言うぞ 」
「 お前の中身はババァかよ…。
時間にルーズな奴だとは思ってたけど、其処までとはなぁ…。
南無だな、南ぁ無ぅ〜〜〜 」
「 はぁぁあ?
普通だろうが! 」
「 普通じゃねぇよ…。
…………たくっ…仕方ねぇな。
サツも当てにならねぇし、どうすりゃシズカを見付けられるんだか…… 」
「 探偵に頼むか?
言っとくけど、オレに探偵の知り合いは居ないゼ★ 」
「 いや、普通にオレにも居ねぇから。
どうスッかなぁ…いや、マジで 」
「 サツの真似事するわけじゃねぇけんど、現地に行ってみるか?
シズが行方不明になった手掛かりとか見付かるかもだし? 」
「 ドラマの見過ぎだぞ〜〜。
まぁでも…無駄元で行ってみるか? 」
「 行くべ,行くべ。
マヨシとトムゴも誘って行こうぜ 」
「 あぁ〜〜……あのオカルト好きの2人も連れてく気かよ…。
オレなぁ…カルト野郎は苦手なんだよ… 」
「 カルトじゃないから。
オカルトっても都市伝説とか七不思議とかそっち系だから。
危害ないって!
大丈V! 」
「 不安しかねぇよ…。
一気に気が進まなくなった…… 」
「 言うなよ、言い出しっぺ!
明後日、賀狐麼神社へレッツゴーな! 」
「 言い出しっぺは、お前だからな! 」
オレはシズカとお向かい同士の誼で実の兄妹のように育った。
だからってわけじゃないけど、シズカの事なら他の誰よりも知ってると自負している。
シズカを賀狐麼神社へ誘ったのは、誰でもないオレだ。
だから…家へ帰らずに、行方不明になっているシズカに対して、少なからず責任を感じている。
何とかしてシズカを見付けたい。
何で…賀狐麼神社なんかへ誘っちまったんだろう…。
何で…神社の敷地内で “ かくれんぼ ” なんてしちまったんだよ…。
じぃさん,ばぁさんが未だ生きてた時に、耳タコになるぐらい聞かされてい話がある。
「 “ 狐 ” の付く神社では絶対に “ かくれんぼ ” をしたらいけない 」って話だ。
冗談だと思って、言われる度に聞き流して本気にしてなかった。
シズカは未だ賀狐麼神社の敷地内で “ かくれんぼ ” をしてるのか??
どうしたら、シズカを助ける事が出来るんだ…。
オカルト好きのマヨシとトムゴなら何か情報を持ってるかも知れない。
気は進まないけど、シズカの為だ。
駄目元でマヨシとトムゴに相談してみるか…。
「 ただいまぁ〜〜、シズぅ。
今日はさぁ、ツトシとマヨシ,トムゴと一緒に賀狐麼神社へ行って来たんだよぉ〜〜。
クハハッ!
3人共、シズが “ お狐様の祟りに遭った ” って信じてたよぉ〜〜。
ツトシがさぁ「 “ 狐 ” の付く神社で “ かくれんぼ ” をしたらいけない 」なんて言い出すからさぁ、便乗しちゃったよぉ〜〜。
クハハハハッ!
シズはぁ、『 ずっうと賀狐麼神社の敷地内で、お狐様の気が済む迄 “ かくれんぼ ” をしている 』って事になったからぁ、此処から出してあげる必要がなくなっちゃったよ。
何時までも見付けてもらえない “ かくれんぼ ” をしていようねぇ 」
「 ………………………… 」
「 あれぇ?
何で返事をしてくれないんだい、シズぅ?
………あぁ、そっかぁ……シズはもう話せないんだっけ。
ツトシと会った日の夜にオレがシズを●しちゃったんだもんね。
アハハハハハッ!
シズ……、お前が悪いんだ。
お前がっ、オレのヒラグを誘惑なんかして付き合ったりするからぁぁぁぁぁぁ!!!!
お前はぁっ●んで当然のぉ、クソビッチなんだよぉぉぉぉぉ!!
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。
お前の死体は賀狐麼神社の池にでも捨ててやるよぉ!!
見付けてもらえるんだから、有り難く思えよな! 」
「 ──シズカ!
良かった!
帰って来たんだな!
たく……3週間も何処に行ってたんだよ…。
連絡ぐらいしてくれよ。
心配したんだぞ! 」
「 めんご、めんご〜〜。
何か分かんないんだけど、気が付いたら近所の公園に居たのよね…。
何で砂場に座ってたのかしら?? 」
「 理由なんていいよ!
賀狐麼神社に誘った後に行方不明になったからさ…、シズカを誘った事を後悔してたんだ。
責任…感じてたんだ… 」