表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

サイラスと皇帝 「深窓の姫君と騎士の駆け落ち」事件

作者: 白谷芙蓉

サイラスが「深窓の姫君と騎士の駆け落ち」事件を知ったのは

その「深窓の姫君」の父親が

サイラスのところに怒鳴り込んできたからだった。


父親が顔を真っ赤にして口から唾を飛ばす様子は

かなり引いた。

普段は結構イケてるおじさん風だったんだが。


王の側室として候補に挙がっていた「深窓の姫君」は

それを良しとせず、

「身分もないただの騎士」の若造と駆け落ちしてどこぞの

教会で結婚式を挙げたらしい。


王の側室として息子でも生まれれば、

孫が王っていうこともないわけでもないから

出世の野望をもつ貴族としては

娘の暴挙はショックだったろう。


だからといって、サイラスを怒鳴りつかるのはいかがなものか。

どうやら、「身分もないただの騎士」が近衛団に所属が決まっていた青年であったらしい。

責任者であるサイラスにも責任をとれとあの父親はわけのわからない

ことを言っていたが、騎士の結婚にまで責任など近衛団長のサイラスにあるわけもない。


パニックなった犬でも扱うように父親をいなして黙らせたサイラスは

陛下の執務室へと向かった。


(気は進まないけど、一応、報告しておくか。)

陛下は家臣には寛容だ、とサイラスは思っている。

だが、自分の後宮に入れる姫君がそれを嫌って

自分の家臣と駆け落ちしたことにどう反応するのか、

珍しくサイラスには陛下の反応が予想できなかったのだ。


サイラスの予想以上に陛下の反応は寛容だった。

そばでウィリー卿など、この話のなにが面白いのかにやにやしている。

「若い姫ぎみ(推定17歳)に俺の側室というのも、なかなかきついだろうからな。」

陛下(たしか30歳)が自嘲する。

「そうでしょうか。聡明で美丈夫な陛下から望まれるのはこの上なく名誉なことですのに、わざわざ、

格下の相手を選ぶのが姫ぎみのためになるとは思いません。」

サイラスが真面目に答えると、

ウィリー卿が声を上げて笑い出している。

「おい、どこがそんなに面白いのだ?」さすがの陛下もそんなウィリー卿が

目ざわりになったらしい。

冷たい目でウィリー卿も眺める。


サイラスは報告が終わるとすぐに自分の仕事のために戻っていった。


王と二人になったことを確かめたウィリー卿は

まだ、肩を震わせて笑っていた。

「陛下、サイラス卿には本当になにもおしゃっていないんですね。」

ウィリー卿は王に話しかけた。

「うるさい。」

「一体、なぜですか、サイラス卿も言ったとおり、「聡明で美丈夫な陛下から望まれる」のを嫌がる女なんていないですよ。」

「……サイラス卿はただの女ではないからな。」

「まぁ、鼻ぱしらだけは強いですけど。でも、陛下、なんでそう、サイラス卿にはそんなに弱気なんですか。」

ウィリー卿には陛下とサイラス卿の関係がとても不思議で、まどろっこしいものに思えてならなかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ