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浦島太郎

作者: 長光一寛

私どもフローレンスはメンバー3人で、中野区あたりのケアセンターを訪れて唱歌や演歌や民謡を主に管楽器で演奏させてもらい、皆さんにいっしょに歌ってもらっています。


このところ童謡「浦島太郎」をプログラムに入れています。歌詞は5番まであり、注意していないと今何番を演奏しているのかわからなくなってしまいます。しかしどれかを抜くと物語が壊れてしまいます。そんなわけで、この曲は演奏は比較的やさしいが、演奏を終えるタイミングを見失う可能性が高いという意味で難曲です。そこで4番目の歌詞をよく覚えておきます。そろそろという頃、皆さんの歌声に耳をそばだてます。「帰って見れば、こはいかに、(もと)いた家も村も無く、みちにきあう人々は、顔も知らない者ばかり。」この歌詞は不穏な印象与えてくれます。この不穏さを合図にさあ次は最後の5番とわかるわけです。


さて、5番はさらに悲劇的です。「こころぼそさにふたとれば、あけて(くや)しき玉手箱、中からぱっと白煙(しろけむり)、たちまち太郎はおじいさん」ハッピーエンドの多い日本の童話の中でも珍しく悲しい結末の、始末の悪いお話です。


これは楽しきことはあっという間に過ぎゆくもので、節度をわきまえず時間のたつのも忘れて遊びほうけていると、そのつけは身寄りのない孤独な老人・・・ということを教訓としているのでしょうか。しかし老人の多いケアセンターでは、いまさらそのような教訓はやぼというもの。そこで親しんできたストーリを逆手さかてにとって、思わぬどんでん返しを末尾に隠して、意表を突こうと思っています。下記のように5番の歌詞を変えた歌集を配ります。変えたのを隠したまま歌ってもらいます。読者の皆さんも1番から歌い読みしてみてください。


①むかしむかし、浦島は

助けた亀に連れられて、

龍宮城へ来て見れば、

絵にもかけない美しさ。

②乙姫様のごちそうに、

(たい)やひらめのまいおどり、

ただ(めずら)しくおもしろく、

月日のたつのも夢の(うち)

③遊びにあきて気がついて、

おいとまごいもそこそこに、

帰る途中(とちゅう)の楽しみは、

みやげに(もら)った玉手箱

④帰って見れば、こはいかに、

(もと)いた家も村も無く、

みちにきあう人々は、

顔も知らない者ばかり。

⑤こころぼそさにふたとれば、

あけて(うれ)しき玉手箱、

中からぱっとおとひめが

太郎にとびつきあついキス


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