二話『命の恩人と迷子の異世界人』
テンポ良くないし文字数も少ないけどこれでも必至に頑張っているんですよ…………多分、
アイリス=シルヴァース。
そう名乗った金髪赤目の美少女に釘付けになる一星。
見惚れるというのはこういう時のことを言うのかと初めてその言葉の意味を実感した。
そして、問いかけても一向に反応のない一星の様子を見て首を傾げるアイリス。
「…………? もしかしてやっぱりどこか怪我があるんじゃ……っ⁉︎」
「…………っ、あ、いや、大丈夫、です。はい、おかげさまで助かりました!」
「そ、それなら良かった……」
と、ホッと胸をなでおろす。
「…………?」
そのアイリスの様子に怪訝な表情を浮かべる一星だったが、命の恩人に対して失礼になのではとすぐに改める。
そんなことよりまず言うことがあるのだから。
「えーと、助けてくれてありがとうございます、アイリスさん」
「どういたしまして! 特に目立った怪我もなさそうだから本当に良かったよ。私は治癒の力は使えないからね……」
(治癒の、力……?)
気になる単語が出てきたが、触れないでおく。
「そういえば、私は貴方のことをなんて呼べばいいのかな?」
「まだ自己紹介してませんでしたね。俺の名前は一星晴翔って言います」
「イチホシ……ハルト……、なんだか珍しい名前だね……。でも、うん。良い名前ね。よろしく、ハルト!」
近くの手頃な岩に腰掛けて水筒の水を飲み喉を潤していく。
アイリスも同じように水分補給を取ってから、落ち着いた頃を見計らって語りかけてきた。
「そういえば、どうしてここにいたの?」
「ここには…………、」
あれ、どうしてここにいるんだろうか。
気がついたらここにいた一星には今の現状を説明する術を持たない。そもそもどうやって言葉にすればいいのかも分からない。
「そ、その……実は────」
信じてもらえないかもしれないので、元の世界という言葉を回避しながら説明していく。
(…………いっそのこと記憶喪失ってことにした方がいいのだろうか?)
そんなことを考えながら、何となく身振り手振りで説明していく。
アイリスも一星が置かれている状況を把握したのか、何度か頷いて、
「ハルトは家にどうすれば帰れるか分かる?」
家にどうすれば帰れるか。
この異世界から、元の世界にどう帰るのか。
それが分かっていたら苦労はしない。
ボタン一つでログアウトしたい気持ちになる。
(これはゲームでもなければ遊びでもないってことかね……、)
渋々、この歳で言うのも少しばかり恥ずかしいものがあるが、言う。
「………………帰り方が、分かりません」
情けない一言だった。
アイリスだって呆然としていた。
「…………えーも、もしかして、独りでここに? 誰か仲間とかいなかったの?」
「………………はい、一人です」
「…………むむ、困ったね。帰り方が分からないのか。住んでた場所とかの名前は分かる?」
「………………日本ってところです」
「ニホン………? うーん、やっぱり聞いたことないかも、」
ダメ元で言ったものの、やはりこの世界は別の世界なのかもしれないという確信が一星の中で広がっていく。
となると、やはり帰り方は分からないままだ。
これからどうすればいいのか考えていると、アイリスから提案があった。
「行くあてがないなら、私達の街に来ない?」
「アイリスさん達の……?」
「たった独りの貴方を放っておくわけにはいかないもんね。それに、街中には魔物だって出ないから安心して過ごせるよ!」
確かにアイリスの言う通りだった。
この草原で野宿したところで、またさっきの魔物に襲われるかもしれない。それなら街まで行って安心安全な宿を探した方がいい。
「なら、うん。お言葉に甘えて、お願いしようかな」
「なら決まりだね!それじゃあ早く他の人とも合流しましょうか!」
「他の人……? アイリスさんの他にもいるんですか?」
そう言って周りを見渡してみても、人は見当たらない。
(そういえば、アイリスさんはどうやってここに来たんだ?)
そんな疑問を頭に思い浮かべながらアイリスの方へと向けば、彼女は空に向かって大きな声で呼びかける。
「おいで、ブルー‼︎」
(ペットかな?)
その直後だった。
どすん、と音を立てて一星の背後に巨大な何かが着地した。
何か、大きな生き物が、いる。
振り返ると、そこには翼の生えた大きなトカゲのようなものがいた。
絶句する一星の横を通り抜けて、アイリスはその翼の生えた大きな生き物の頭をよしよしと撫でる。
「この子はスカイドラゴンのブルー。私の相棒なの。この子に乗って他の人、私の仲間達と合流しましょうか」
「…………すかい、どらごん……、」
説明するアイリスの言葉を聞きながらも、一星はスカイドラゴンへと視線が釘付けになっていた。
人生初のドラゴン。
生まれて初めて見るドラゴン。
漫画やゲームで出てくるあのドラゴン。
目の前に実物として存在する、空想上の生き物。
一人の男として、こういうものに憧れてきたということもあり、少し、いやかなり、感動している。その反面怖さもあるのだが。
「うわー、めっちゃ異世界…………」
生まれて初めてドラゴンを見た感想としては、あまりにも語彙力不足となってしまった。
〜〜スカイドラゴンについて〜〜
大きくてそれなりにスリムな人間2、3人乗せられそうなコモドドラゴンってイメージです。
瞳は緑色で柴犬っぽい目つきで脳内補完したください。(これはあくまで作者である山豹のイメージであります)