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第八話 僕と言う存在

偽物はどちらか。


 「なにをばかな」


 人形の言葉を戯言だと健人は言う。

 そんな何の根拠もない話を信じるほど馬鹿ではない。


 「デハ、記憶ノ整合性ヲ確認シヨウ」


 人形が提案する。

 記憶を確かめて本当に藤崎健人本人なのか確かめようという事だろう。

 上等だ。

 健人は返事代わりに頷いた。


 「好キナ食ベ物ハ?」

 「そんなの決まって……あれ?」


 おかしい。

 何も頭に思い浮かばない。

 真っ白なまま選択肢の一つすら出てこない。


 「答エハカツ丼。ジャア趣味ハ?」

 「え、えと……日記を書く……とか?」

 「正解ハ小説ヲ読ム、ダ」

 「あれ? あれ……? おかしいな……なんで……なんで?」

 

 おかしい。

 おかしいおかしい。

 スケルトンは頭を抱える。

 なぜ自分の好物や趣味を聞かれて何も思いつかないのか。

 まるで真っ白なキャンパスに「藤崎健人」と言う銘だけ押された作品のように頭の中が真っ白だった。

 なぜ今の今まで気が付かなかったのか。

 それは自身が藤崎健人であると盲信していたからだ。

 そうではないと証明するものが何もなかったからだ。 

 だが、目の前の存在がそれを否定する。


 「て、適当なことを言っているんじゃないのか……?」


 自分を疑えないなら相手を疑い始める。

 だが、逆に人形は呆れたように問いかけた。


 「ソレハ、オ前ガ答エラレナイ理由ニナルノカ?」

 「……」


 正論を押し付けられ、健人は押し黙るしかなかった。

 認めるしかなかった。

 

 「オ前ハ何者ダ?」


 自分は「藤崎健人」ではないと。

 ならば自分は誰なのか。

 怖い。

 とても怖い。

 自分を定義するものがなにもなくなり、自分と言う存在が透明になっていくような気がした。

 世界から消えてしまうような恐怖が胸の奥からじわじわと染みだしてくる。


 「わからない……」


 スケルトンには再び問われた問いに何も答えられなかった。



自分を定義できないのは怖い。

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