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第二十七話 決闘 3

アルマの方はどうなっているのか。


 「始まってますな!」


 ケルトたちから離れた場所にいるのは『騎士』グリズ=ボラスとアルマ。

 遠くで聞こえる爆発音をバックに向かい合っていた。


 「俺ラモサッサト始メヨウゼ」

 「しかしこんな小柄な少女と戦うといっても困る物が……」

 「アァ!? 今更何言ッテンダ潰スゾオラァ!」


 狐耳少女は本体であるぬいぐるみを大きく振りかぶって空高く投げた。


 「やや? なん……なんですと!?」


 グリズは太陽の光の中を泳ぐぬいぐるみを見上げて驚きの声を上げた。

 なぜならそれは近づいてきているからだけではなく目に見えて大きく、巨大になって行くのだ。

 それは既に大男であるグリズの何倍もある巨体へと変貌していた。


 「コノママ押シツブシテ終ワリダァ!」


 ぬいぐるみは大きな砂埃をまき散らしつつグリズを押しつぶした。

 狐耳少女の人形はただの飾りではない。

 霊力の貯蔵庫、タンクとしての役割を果たしていた。

 そしては狐耳少女はケルトの霊力から生まれたため彼女の力の一つである『創造』を劣化版ながら使うことができる。

 それをひたすらアルマの体積を増やすことに使っているのだ。


 「オォッ!?」


 だが、そう簡単には終わらなかった。


 「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 気合いの入った声と共にぬいぐるみが押し上げられた。

 押し上げているのはグリズ一人の力だ。

 図体と言い力と言い人間離れしている。


 「ナラバサラニデカクナルマデ!」

 「ぐっ……」


 だが際限なく増えるぬいぐるみの重さに耐えかねてじわじわとグリズは潰されて行く。


 「まさかこんな攻撃をしてくるとは……やはり使わねばならぬか……」


 グリズは思い出す。

 かつての戦争で失った戦友の顔を。

 純心故に憎しみに駆られて敵を惨殺する自分の姿を。

 そして『怒り』を再現した。

 それは自我をも失わせる狂化。

 理性を代償に力を召喚する禁断の技だ。


 「ウォォォォアアァァァァァ!!」


 グリズは咆哮する。

 その音の振動は地面の小石を浮かせるほどの衝撃だ。


 「ナンダナンダ?」


 腹の下に埋まったグリズの様子が全く見えないアルマは状況がつかめていない。


 「ウワッ」


 次の瞬間、ボフッとアルマが爆発したように飛んだ。

 数メートルとはいえ浮いたその体の下には全身の皮膚を赤く染めたまるで鬼のような外見の人間がいた。


 「グォォォォォォ!!」

 「マジカヨ」


 それは元々グリスだったもの。

 感情に飲み込まれて自我を失った破壊の限りを尽くすモンスターと化していた。


 「グォォォォ!!」


 その後も彼氏に振られて枕を殴る女子高生ばりにアルマの腹をやたらめったらに叩きまくる。


 「アァモウメンドクサイナァ!」


 埃の舞う中アルマはさらに体積を増やしていく。

 いくら力が強くなっても圧倒的な質量の前にグリスはなすすべはない。


 「グォォォォモモモモモ……」


 やがてアルマが十メートルにはなろうかといったころ、あまりの体積の多さに負けたグリスは綿の中に埋まっていった。



物理的に押しつぶす。

強いと思います。

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