第二話 村
ふもとの村です。
石畳の小道を抜け森を抜けると、そこには畑があった。
視界いっぱいに広がる畑には小麦や旬の野菜が整然と植えられており、管理が行き届いていることが伺える。
つまり人がいるというわけだ。
「おッ」
さっそく畑の真ん中で日の光をものともせずに農作業に没頭している男性を発見して声を上げる。
しかしここで焦ってはいけない。
スケルトンなんかが急に話しかけてまともに会話してくれる人がいたらそれはきっと奇人変人の類だ。
たが行動しないことには始まらない。
意を決して話しかけて――。
「おーい! リリ、ロロ! 手伝ってくれ!」
その時、唐突に農夫が鍬を杖がわりに地面に刺しながら声をあげた。
健人は思わず畦道の陰に体を滑らせる。
「「はーい!」」
その農夫の呼び掛けに答えたのは2人の少女。
近くの納屋からとてとてと走ってきた。
恐らく双子であろう容姿の非常に良く似た彼女たちは両手に付いた泥をぱたぱたとはらう。
「どうした? そんなに泥で汚して」
「んー……ちょっとね!」
「ね!」
「……まぁいいが危ないことはするなよ」
「「はーい!」」
無邪気に笑いあう子供たちの遊びに口出しはするものじゃないと農夫は幸せそうに息をつく。
「じゃ、ちょっと倉庫からベリーの種を――」
「ァの……」
「ん……? リリ、ロロ何か言ったか?」
娘たちに指示を出そうとしていたら聞き覚えのない声で話しかけられ、農夫は首をかしげる。
娘であるリリかロロが裏声でも使ってイタズラをしたのだろうと考えたが、二人は揃ってぽかんと口をあけ農夫の後ろを見つめている。
「スいマセん」
「誰……だっ!?」
農夫が後ろを振り返るとそこには瞳に暗闇を宿した一体の動く骸骨がいた。
彼は話しかけるタイミングを完全に失い「ええい! ままよ!」彼らが次の行動に移る前に話しかけたのだった。
しかし帰ってきたのは常人として当たり前の反応だった。
「な、ぁ……スケルトンだとっ!? なんでこんな場所に!?」
声の主をとらえた農夫は慌てて鍬を振り上げ健人に威嚇する。
「ヤっパダメかァ……」
「おい! リリ! ロロ! オードウィンを呼びに行け!」
農夫は話しをしようと片手をあげたまま動かないスケルトンを見てまだ余裕があると踏んだのか、健人から目をそらさずに声を張り上げた。
突然の出来事で固まっていたリリとロロは農夫の声ではっとすると心配そうに農夫とスケルトンを見比べた後、一目散に農道を駆けていった。
取りあえず大切な者が危険に晒されることは無くなった事を横目で確認した農夫は、ここは通さないと言わんばかりに健人と対峙する。
「ワタしハ、わルいスケるトンじャ――」
「うるせぇ! アンデットの言葉など聞いてなるものか!」
「うワっ、ちョッ」
健人が弁明の台詞を言い終わらないうちに農夫は鍬を構えたまま猪のように突っ込んだ。
いきなり振りかぶられた鍬を防御しようと健人は両腕を頭の前で交差させる。
ゴッ
だが、鈍い音がして凶刃は骨の腕に受け止められた。
しかもそれだけではなかった。
ジュゥゥ
まるで酸でも纏っているかのようにスケルトンの体に触れた鍬が溶け始めたのだ。
「……!?」
思わずたたらをふんで下がった農夫が見た鍬は刃がぼろぼろになり、使い物にならなくなっていた。
そのことに健人自身も驚く。
だが、これは大きなアドバンテージだと強気に出ることにした。
「ハナしヲ、きケ」
「……っ!」
友好的にできないのなら無理やりにでも話を聞くまでだ。
威圧を込めながら健人が再び訴えかけるが農夫は聞く耳を持たず、やたらめったらにクワで殴りつける。
鍬が折れるのが先か骨が折れるのが先か。
その答えは白い骨とぶつかるたびに欠けて行く鍬の刃を見れば一目瞭然であった。
農夫の額に冷や汗が流れ始める。
「マークス! 待たせた!」
どう降伏させたものかと頭を悩ませていると、ガシャガシャと金属音を響かせながら髭面のガタイの良い一人の男が現れた。
彼は農夫を守るように前に出てきた。
「オードウィン! 気を付けろ! こいつ、腐食持ちだ!」
「……分かった。後は任せろ」
オードウィンと呼ばれたその剣士風の男は革鎧に直剣といったいかにも衛兵と言った雰囲気だ。
自信満々に腰の鞘から剣を引き抜き、腰を低く構えて健人と対峙していた農夫、マークスと入れ替わる。
「お前は愛しの娘の元にいてやんな」
「……すまねぇ」
マークスは腐食してぼろぼろになった鍬をそこいらに捨てると汗を切って走り出した。
「終ったら酒のいっぱいでもおごってやる! 死ぬんじゃねぇぞ!」
「ふっ……」
マークスの捨て台詞を鼻で笑うとオードウィンは射殺すような鋭い視線を健人に向けた。
「さぁ、こい化物」
「エぇ……」
選手交代し、村人との戦いは新たなステージへと進むことになった。
スキル云々は後程でます。




