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第二十五話 決闘

さすがに街中じゃあできないから。


 翌日の朝、街のメインストリートを王の馬車が走っていた。

 市民の間ではその光景を見て王が出陣するという噂で持ちきりだった。

 突然の事にざわめきが広がる。


 「なんで急に?」

 「なんでも『魔女』をやったアンデッドを倒しに行くらしいぞ」

 「大丈夫なのか?」

 「まぁあの人壊れ気味な感じだったしなぁ……」

 「今まで何ともなかったし大丈夫だろ。俺らはいつも通り生活するだけさ」


 平和が長く続くこの国では危機感を抱く者は少ない。

 大した動揺を与えることなく馬車は最後の門を通過した。


 「で、何処でやるの?」


 馬車に揺られながら尋ねるケルトに彼女の正面に座るサルヴァ=コレスは肩をすくめた。


 「さぁ? とりあえず広いところかなって」

 「適当カヨ!」


 結局、ケルトたちは決闘を了承していた。

 なぜ受けたか。

 その理由は提示された決闘の報酬にあった。


 「では再確認をしておこう。私たちが勝っても君たちが勝っても石板は破壊する。そのことで私たちは力を失い、君は自由になるだろう。そして君たちが勝った場合、我が国の最新機械を進呈しよう」

 「よしのった」


 こちらに不利な条件の全くない好条件に異を唱えるべくもないのだ。


 「罠デモ貼ッテルンジャネェノカ」


 さすがにうますぎる話なので罠があるんじゃないのかとアルマが疑うが、真っ向から「それは違うのである!」と正す者がいた。


 「疑うのも無理はないが、我らは力を競い合える敵がいなくなったのだ! 故に対等以上に戦えるであろう貴君らに胸を貸してもらいたく決闘を申し出た所存である!」


 彼は筋肉だるまという言葉が一番しっくりきそうなくらい暑苦しい大男だった。

 その存在一つで馬車の空間が半分になったと錯覚するほどの体積だ。


 「トコロデソイツハ誰ダヨ。コイツト戦ウ予定ハナイヨナ?」


 見覚えのない大男を指さしてアルマはまっとうな質問を王にした。

 すると大男が間髪入れずに唾を飛ばす。


 「やや! これは失礼! 自己紹介はまだでしたな! 私は騎士団長をしている『騎士』グリズ=ボラスである!」

 「ア、ハイ、ドウモ」


 アルマはまともに応対するのも疲れる大男グリズの握手をしようと伸ばされた手を無視する。

 その様子を見ていた王はグリズの自己紹介に補足説明を付け加えた。


 「この『騎士』も君の『感情』の持ち主でね……ぜひ手合わせをと五月蠅いもんだから連れてきたんだが……良いかね?」

 「良いですよ。こちらのアルマがお相手します」

 「オイィ!?」


 勝手に決められたアルマがバシィxっとケルトの腕を叩くが時すでに遅し、グリズが満面の笑みで再び握手を求めてきた。


 「よろしくするのである!」

 「……ヨロシク」


 仕方なくアルマはぬいぐるみの小さな手でその大きな手を握った。

 言動の一つ一つが大げさで本当に暑苦しい。

 一刻も早く目的地に着かないかと思うのは大男以外の全員が持つ共通の思いであった。

 

汗臭そう。

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