第二十四話 交渉
復讐と言うほどの「怒り」は持っていない。
「誰モ交渉スルトハ言ッテイナイゾ?」
「君たちは交渉に乗るはずだ」
あくまで強気なケルトに対して王は机の引き出しから一つの石板を取り出した。
「それは……」
それを見てケルトは目の色を変えた。
それは自分を封じ込めていた石板。
見た瞬間に嫌な感じがして察することができた。
そのケルトの反応を見て王は「やはりか……」と確信を得た様子で頷いた。
「君は『封じられた魂』。そしてそちらの君はアルマ=エルグランデだろう?」
「ナゼソレヲ?」
すでに自分たちの存在を知られていたケルトたちは落ち着いてはいるが驚きは隠せなかった。
「君たちのことは既に有能な部下が調べてある。村でのことも」
「じゃあなんで交渉ができると?」
あれだけのことをしておいてまだ交渉の余地があると思っている方がおかしい。
ケルトはすぐにでも『破壊』をできるように手に力を込めた。
「まぁ待て、あれは私の意志ではない」
「そんな戯言を信じると?」
「それは君たち次第だが……正直私は『魔女』は殺してくれて感謝している」
「どういうことだ?」
ケルトの記憶ではすでに殺した恐らく『魔女』と呼ばれているアリアナは奪われた3つの感情のうちの1つだったはずだ。
目の前の男からも似た気配を感じるのに仲間ではないというのか。
「あやつは壊れかけで既に我らの手に負えなくてな。教会が面倒事を押し付けて国の外に出していたのだ」
「それで私たちの村に派遣されて返り討ちにあって死んだと」
「そういう事だ」
「ジャア俺ヲ殺シタ事ニハドンナ言イ訳ヲシテクレル?」
アルマの質問にも王は詰まることなく答える。
「君は転生者だろ?」
「何故ソンナコトマデ知ッテイル……!」
いろんな情報は喋ったが転生者だとは一言も行っていなかったはずである。
「君だけではないからだよ。転生者は。古文書に出てくる君たちは未知の力を持つ。それは益にもなるが脅威も含んでいる。故に有益な情報を出しきらせて殺した」
「ソレガ王トシテノ正シイ判断カ?」
「そうだ。大を生かすために小を殺す。それが大衆の命を預かる王の責務だ。済まないとは思っているが後悔はしていない」
「仮にそれを信じだとしてどんな交渉をするつもり?」
王はケルトの威圧にひるむことなく手に持った石板を差し出した。
「これを……君を縛るこの石板を壊す」
「手に入れた力をみすみす手放すのか? その見返りに何を願う?」
「なにも願わない。故意ではないとはいえ酷いことをしてしまったからな」
「じゃあ――」
壊させてもらおうとケルトが手を伸ばすと王はすっと石板を下げた。
「何の真似だ?」
「しかし、叶うなら一つだけ願いを聞いてもらえるか?」
「……何?」
どんな傲慢な願いが飛び出すのか。
ケルトは目を細める。
「私と決闘してほしい」
だが、彼の口から出たのは意外な願いだった。




