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第二十話 侵攻

静かに迫り来る。


 『魔女』が消息を断ってから数日、ログ王国は心配していたアンデッドの襲撃もなく平和であった。


 「気ぃ張ってたけど杞憂だったな」


 王国の門番をしているクレスは同僚のディクに話しかける。

 ディクは返事がわりにあくびを一ついた。


 「ふぁ……強大なアンデッドなんて物語の中にしかいねぇよ。ましてや討伐に向かったのはあの変化の化け物『魔女アリアナ』だぜ? 万が一もねぇって」

 「だよなぁ……」


 季節は夏。

 炎天下の日差しは鉄の胸当てを熱し、卵でも焼けそうな位になっていた。

 あまりの暑さに滴り落ちた汗が地面を濡らす。

 ここは城下町の各所にある関所。

 商隊がこない日はポツポツと外に出入りする住民の整理くらいしかないのでずっと立ちっぱなしで暇なのだ。


 「……ん?」


 ふとクレスは城下町へと続く道の真ん中に二つの人影を見つけた。


 「おい、あれ……」

 「子ども……?」


 熱せられた地面から立ち上る熱気で揺らめくその姿はどちらとも子どものように見える。

 二人が確認したということは太陽の見せた蜃気楼でも暑さから来る幻覚でもない。


 「なんで子どもだけが二人でいるんだ?」

 「さぁ……」


 やがてその人影は彼らの前まで近づいてきた。

 徐々に露になる少女たちの外観はまだ10際前後と言ったところだろうか。

 一人は珍しい青みがかった白髪を波打ち際のように揺らめかせながら。

 もう一人は短く切り揃えた髪に狐の耳を着けて歩いてきている。


 「お嬢ちゃんたち、二人だけ?」

 「うん」


 クレスが屈んで目線を合わせながら訪ねると青髪の少女は無表情のまま頷いた。


 「危ないから今度から大人と一緒に出掛けるんだよ」

 「わかりました」

 「それじゃ住民票見せて」

 「住民票?」

 「持ってきてない? ほら、市役所で発行する青い紙……」

 「無いです」

 「弱ったなぁ……」


 首をかしげる少女にクレスは頭をかいた。

 国の外に出るときは必ず市役所で住民票を発行してもらい、それを提示することで初めて街の外に出られるのだ。

 そして帰るときもその住民票を見せることで入出国の管理を行い、不正入国を防ぐことに繋がっている。


 「いいじゃねぇか入れてやれば」

 「代わりに俺らの首が飛ぶわ……」


 街に入れてやりたいのは山々だが規則を守らなければ罰せられるのは自分たち。

 さすがに代償が大きすぎる。


 「親御さんの名前教えてくれる?」


 ここは親を呼んで身元確認をして引き渡すのが最良の選択肢だろうとクレスは少女たちに尋ねるが、彼女たちは顔を見合わせて話始めた。


 「おーい……おおっ?」


 クレスが話しかけようとすると突然、無口な狐耳少女が両手にかかえていた人形をずいっと差し出してきた。


 「……?」


 どうしたら良いかわからずとりあえず人形に手を伸ばして触れた。


 「触レタナ?」

 「え……?」

 

 人形が喋った。

 そう思った瞬間、クレスの意識は飛んだ。





 「ーーレス。クレス」

 「んお、おう」


 名前を呼ばれたクレスは慌てて返事をする。

 目の前には訝しげに自分の顔を覗きこむディクの四角い顔があった。


 「どうしたんだ急にボーッとして」

 「あぁ、悪い。変な夢見てた」


 まだ意識が朦朧としているクレスは頭をふった。


 「白昼夢か? どんな夢だった?」

 「なんかこう女の子が二人だけで入国しようとする夢」

 「……奇遇だな。俺も同じ夢見てた」

 「……暑さにやられたかな」

 「俺たちは運命の赤い糸で結ばれているのかも……」

 「止めろ気持ち悪い」


 ただの夢だと信じる彼らは気付かなかった。

 その夢で見た女の子二人が背後の方、街の中に歩いて行く姿に。


あなた……疲れているのよ……。

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