第一話 目覚め
最初はまだまだ感情たっぷりのうるおい肌。
真っ暗闇。
目前の状況を語るにはその一言だけで事足りた。
確か自分は火災に巻き込まれたはずだ。
ならばここが天国と言うものなのか。
自分が立っているのか横たわっているのかも解からない中、藤崎健人は手を前に伸ばす。
すると粘土を押すような抵抗を感じた。
どうやら「何か」の中にいるらしい。
そこでやたらめったらに目の前をかけ分けていく。
するとどんどん視界が開けて行った。
(おぉ……)
目に飛び込んできたのは空を覆い尽くさんばかりの褐色の枝と青々しい木の葉。
その木の葉からこぼれる陽光がまっすぐ目に刺さるが不思議と目が眩むことはない。
そのまま両手で「何か」だったただの土を押さえて穴の中から体を引っ張り出す時、滑った手が固いものに当たった。
(え……?)
そこには知らない文字の刻まれた長方形の石がひとつと石にぶつかっている土くれのついた5本の細い白樺の枝のようなものがあった。
どう見ても骨である。
人体模型でしか見たことのない人の手の骨だ。
それが自分の手であると認識するのに数秒の時間を要した。
(あー……なるほど?)
なんとなく状況を把握してきた。
古い墓石と白骨化した指。
そして埋まっていた自分。
それが指し示すのは――。
(やっぱり私は死んだのか)
恐らく死んで埋葬されてしばらくたってから甦ったのだろう。
不思議とそのことに驚きはなかった。
しかしなぜこんなところに埋葬されているのか。
なぜ骨になっているのに動いているのか。
わからないことだらけであった。
「……っ!」
声も出なかった。
喉を触るとごつごつとした骨がそこにあるだけだ。
肉がないのに喉が空気を震わす訳がない。
(じゃあなぜ感覚がある?)
声帯がなければ神経もない。
声が出せないのなら感覚もないはずだ。
しかし美しい景色は見えているし五月蠅いくらいの鳥のさえずりも聞こえる。
(……)
始めに景色を見て音を聞いた時、まだ自分は骨になっているとは気づいていなかった。
だが、喋ろうとしたときにはすでに自分が骨であると認識していた。
つまり――。
(できないと無意識下で思っている?)
自分が人間ではなくなったと意識することにより、当たり前にできていた事に対して出来るわけがないと無意識のうちにストッパーをかけてしまっているのかもしれない。
「ア、ァあ"……んン"っ!」
ためしに少し意識を内側に向けて声を出してみたら思っていたより高く、ぎこちない声だが案外すんなり喋れた。
だがこの先、人とで会うことを見越して円滑にコミュニケーションが取れるようにしなければならないと考えるとまだまだ調整不足。
(ま、ぼちぼちね)
しかし、そう急ぐことはない。
生憎、時間だけはたくさんありそうだから。
(というか普通に考えてアレだよな。スケルトン……)
目先の疑問を解消した健人は埋葬されていた穴からはいでながら状況を整理する。
この姿はよく見るファンタジー世界の生ける屍。ゾンビと並ぶアンデッドの代表格、スケルトン。
現世に未練を残した者が生者に恨みをもって襲いかかる。
そんな超魔法的存在。
(でもなぁ……未練っていってもなぁ……あるっちゃああるけど……)
彼は途中だったゲームなどやり残したことを思いだし、つるつるになった頭を撫でた。
どんな人間でも未練の一つや二つあるはずである。
その全員がアンデッドになるのならこの世界はすでにゾンビ映画のような荒廃した世界になっているはず。
(考えられるのはここがだいぶ後の未来ってことか……)
行き過ぎた科学は魔法と言うし、長いこと土の下に眠っている間に死人を生き返らせるような技術が出来たのかもしれない。
突拍子もない話だがいったい何年間死にっぱなしであったのか解らない以上、無いとは言い切れない。
「……マぁ、人ヲ、探、スか」
わからないことは考えるより人に聞くのが一番手っ取り早い。
健人は雑草の隙間に見つけた石畳の小道をたどり、小山を下りて行った。
まぁまだまだ導入なので主人公紹介、彼の現状みたいな感じで軽く。
なるたけ展開を早くして話数が増えるにつれて面白くなるようにする予定。
気になったらぜひ続きも読んでね!




