第十七話 哀しみの使徒 2
戦闘パート
「あぁ悲しい。私の全力がコケにされてしまいました……なんて悲しいのでしょう」
「アリアナ様っ……!」
アリアナがその場に泣き崩れると教徒たちは駆け寄り慰め始めた。
「アリアナ様はお強い」
「正しいことをしてらっしゃる」
「だから神は力を与えてくださるはずです」
そんな彼らの様子をケルトたちはぽかんと見ていた。
「なんだこれは?」
「サァ」
まるで演劇か何かの一幕のようだ。
「そうですね……では大変悲しいことですが……悲しい戦いを終わらせるための犠牲になってはくれませんか?」
「もちろんですとも」
「ありがとうございます……それでこそ悲しみをその手に引き受ける者の姿です」
ぐにゃりと彼女の輪郭が再びぼやけ始めた。
それと同時に従者たちの姿も歪みだした。
「なんだなんだ……」
ケルトたちが若干引き気味に事態を見守っているとやがてそれらは一つにまとまり始めた。
「あぁ……感じます……わが同胞の悲しみを……」
アリアナは涙を流しながら光悦とした表情を浮かべた。
「これはなかなか……」
「キモイナ」
はっきりと形作られた彼女の姿はもはや人間のそれではなくなっていた。
巨大な芋虫のような肉の体躯は5メートルほどもあり、その節々から細長い腕が触手のように伸びている。
その体の所々には顔のような形があり、何を元に作られたのかがはっきり分かるよな姿だ。
「私は全にして個。個にして無形の哀しみの使徒。抱えきれぬ哀しみ故に化物となりましょう」
その頂上にアリアナはいた。
彼女は完全にその化物と一体化しており、まるで伝説上の生き物アラクネのようであった。
「貴方にも哀しみを背負っていただきましょう」
アリアナは尾の部分を振り、後ろの家を壊し始めた。
その先あったものは――。
「彼らの親しい人間となり、殺していくときの彼らの顔はとても悲しみに満ちていていました」
村人たちの死体だった。
「貴方はどうですか? こうなったのはすべて貴方のせいなのですよ?」
見覚えのある顔ばかりだった。
向き合って倒れる村長とオードウィン、腹を抑えたまま絶命しているマークス。
最後の助けを求めるかのようにこちらに手を伸ばしたリリとロロ、縮こまったまま動かないサミア、彼女たちを守ろうとしたのかその前で大の字になって倒れるカナン。
「そうか……私のせいか……」
彼らの無残な姿はケルトの中の何かの感情を揺さぶった。
「ま、過ぎたことは仕方ないな」
だが、まるでその感情の箱に何も入っていないかのように心が動くことはなかった。
「どうしたのですか? 悲しんでください。泣き叫んでください。自分によくしてくれた村人が死んで悲しいでしょう? 悲しんで? なぜ悲しまないのですか? 悲しめ悲しめ悲しめ悲しめ悲しめ悲しめ悲しめ悲しめ」
アリアナは焦ったように言葉を浴びせるがケルトの心は動かない。
「オ前、コレヲ見テ悲シミトカ怒リハ無イノカ?」
だが、アルマにも言われてケルトは考え込んだ。
(怒り? 悲しみ?)
その言葉の意味が理解できない。
何かを思い出せそうで思い出せないもどかしい気持ちが胸の中でもやもやする。
「悲しまない者など存在する価値もない」
そんなケルトにアリアナは芋虫の体の正面に開いた穴から出てきた巨大な十字架の銃を出すと長い手足を地面に深く差し込み体を固定した。
「芥も残さず消し飛べ」
十字架には光の粒子が集まっていた。
恐らく先ほどの砲弾とは別物の攻撃が来る。
「オイ! サスガニコレハヤベェッテ!! オイ!!」
光の密度が尋常じゃない量になり始めたのを見たアルマが必死に訴えかけるがケルトは動かない。
アルマはケルトを持てる力の限りで押した。
ジッ
しかしてその光線はケルトの体を穿った。
「喪失」
すんでのところで頭への直撃を避けた光線はケルトの左半身と背後の森を消し飛ばした。
「そうだ。私は――」
ケルトは自らの体を失って初めて気づいた。
自身が転生者でも人間でもないことに。
思い出せ




