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エゴ

作者: 雨風修羅

彼を前にすると、私は神聖な気持ちになる。

私と彼は幼なじみだ。家が隣同士で小さい頃からよく遊んだ。高校生になった今だって、彼との関係は続いている。

朝は必ず一緒に登校する。彼の遅刻防止のためで、私は彼の家の前に毎朝立つ。彼は色々と抜けている性格なのだ。

忘れ物がないかチェックしてから学校へ。気付かずに学校に着いてしまったら貸せるものは貸す。筆記用具、教科書、お弁当。

宿題をしていなかったらノートを見せてあげる。私はこのとき口うるさい。

クラスのみんなは私たちを冷やかす。休み時間いつも一緒にいるからだ。私は反論するが、彼はどこ吹く風。公認のカップル、世話焼きの女房。

私は知ってる。本当は気付いている。これは彼のためではなく、私のためだということを。

私がいないと彼はダメだと思いたい私の自尊心。私は彼に必要な存在。なくてはならない存在。私が彼に尽くすのは、すべて私自身を満足させるためなのだ。

これは私のエゴだ。そんなことわかってる。それでも、私は彼のそばにいたい。

「いやー、助かるよ」

ある日、彼に言われた。いつものようにノートを見せたときのことだ。

「お前のおかげで、俺の学校生活は成り立ってる。ホントに感謝してるよ。ありがとな」

彼の優しい言葉。私は胸が苦しくなる。

「違う、違うよ……」

苦しい。この気持ちを彼にぶつけたい。抑え切れない。

「何が?」

「……私、きっといい子でいたいんだと思う」

あなたの前では。

「いや、実際優等生だろ。押し付けがましくないし。いい感じだよ。これからもよろしくな」

「……うん」

ああ、私はこれからもあなたと共にあり続けよう。どこまでも自分のためだとしても。あなたのためにこの身を捧げよう。

なぜなら、こうして思わせぶりな態度で、あなたの承認を得ることも、私の計算の内だからだ。

彼を前にすると、私は神聖な気持ちになる。

これは私のエゴだ。

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