1-7
「セルア―――!」
部屋に飛び込むと、セルアは武器の整備中だった。彼はチラリとこちらを見て、何?と目で問う。
「次のイノラ町までの護衛の仕事を受けたんだけど、一緒にやってくれる?」
「護衛?」
彼はようやく体をこちらに向けて私の話を聞く体勢になる。
「荷台は3台。報酬は5銀《アイン》。森の中を突っ切るので護送する。出発は明日早朝で、2日以内に届ける日数制限あり。」
「森の中を突っ切る、だって?まぁ、距離を考えれば、4日かかるところだからな、その方法じゃない限り2日以内なんて無理だろうな。」
「どうせイノラ町まで行くし、路銀も乏しかったので受けました!」
「俺の意思確認はないのか?」
「今しているんだよん」
彼は、分かった、と言った。彼に会ったのは今日なのになぜ既に顔に諦めが浮かんでいるのだろう、失礼な。
「じゃあ、私、アロッドさんに伝えてくるね!あとやることも済ませてくるから、セルアはもう寝てていいからね!」
「元から待つつもりはない。」
冷たい。こんなに怒らせることしたっけな。
翌朝、私とセルアは朝ごはんを宿で取ると、旅装を整え、すぐにアロッドさんのところに向かった。
「おはようございます。シエラさん。その方がシエラさんのお連れの?」
「セルアという。よろしく頼む。」
「いえ、こちらこそお願いします。」
アロッドさんとセルアの挨拶がされている間、私は荷台に向かう。馬は全3頭。荷台をそれぞれひかせるつもりらしい。私は荷台の覆いのところに立つと、昨夜中ほぼ徹夜して用意した紙をぺたり、と貼る。左右両側、全3台だから計6枚。
「何してるんだ?」
セルアが私の動きに気付いたのか、声をかけてくる。
こころなし彼の目の下に隈がある気がするが、眠れなかったのだろうか。
「んー下準備?さて、護衛場所のことについて相談なんだけど、私がアロッドさんと一緒に一番前に乗るから、セルア、一番後ろのところお願いしていい?」
「構わない。」
これだけで分かるのか。彼はちゃんと頭の回る人のようだ。しかしあまりにすんなりで彼の今までの態度とそぐわない気がする。
「えーなんか文句つけないの?」
「お前は俺をなんだと思ってるんだ。別に戦術としておかしくなければ反論はしない。」
「戦術って…」
つい繰り返してしまうと、彼ははっとしたようにふい、と顔を背けた。
戦術なんて言葉、使う場面じゃないのは一目瞭然。それが自然に出てしまうということは、セルアは軍隊にいたことがあるのかもしれない。
「出発します!」
アロッドさんの声を合図に私たちは会話をやめ、それぞれの場所に乗った。