プロローグ
処女作です。文章書くの初めてなので、気楽に読んでもらえたらうれしいです。特にファンタジーとか女の子の主人公とか好きな方!読んでいただけるとすごく喜びます。
サク、サク、サク。
女は足を進める。
一面に広がる真っ白な世界。
そこに、薔薇のように真っ赤な鮮血。
ハァハァ…
轟々とたたきつける氷の欠片だけが舞う中で、女は荒い息を吐く。
「くっ…ゲホッ」
女の息がつまると、ボタボタッと音がし、同時に大輪の薔薇が雪上に咲く。
「ゲホ…やっと、ついた…」
鈴を転がすような美声も掠れたまま、彼女は真っ白な平原に唯一建つ小さな小屋のドアを開ける。
と、同時に転がるように少女が出てくる。まだ幼く、齢6~7才の少女が女の姿を見てぱぁっと白い頬を染め、女の足に抱き付く。
「お母さま!お帰りなさい!」
女は、足に抱き付いた少女を見てその美しい顔を綻ばせる。しかし一瞬のち、その顔は悲しさをにじませながら苦しげに歪んだ。泣き出す寸前の顔をしながら、女は少女の頭にそっと手をのせ、頭をなでる。
「ようやく帰ったのかい。」
奥からは少ししわがれた声をかけながら、老女がランプを掲げながら出てくる。そして女の顔、外の様子を見てはっと息をのむ。
「おまえさん…」
「…ヨシュアさん、申し訳ありません。…私はもう、限界です。まもなく魔物が大挙しておして押し寄せてくるでしょう…。初めのお約束通り、この子を。シエラをお願いします…」
女の言葉にヨシュアと呼ばれた老女は一瞬目を伏せたが、すぐに女と目を合わせる。
「分かっているよ。約束だからね。」
「お母さま?」
少女が、自分に声をかけない母を訝しみ、顔を上げ、首をかしげる。少女の、肩の上で切り添えられた黒髪がさらりと流れ、そのまん丸の紫紺の瞳がきょとん、と女を見つめる。
女は、その様子を見て、しゃがみ込み、少女を強く抱きしめる。
「…っ、ごめんね、ごめんね、シエラ。まだ幼いあなたを一人で残していく母を許してちょうだい…」
「お母さま、何をおっしゃっているの?」
「シエラ、母が渡したその魔石を肌身離さずつけておくのよ?」
「これ?」
少女は首から下げた真っ黒の少女の小さな拳大の大きさの石を手に持つ。
「そう、それよ。」
女は愛しい娘の頭に口づけ、もう一度抱きしめると老女の方へ強く押す。
「ヨシュアさん、お願いします。」
言われた老女は少女を抱えると迷いもせずに玄関を飛び出す。吹雪の中、老女は老女らしからぬ速さで雪の上を駆ける。
少女は老女に抱えられたままぽかん、としていたが、徐々に小さくなる母と小屋の姿を見て、少女は何が起こっているのか気づき、老女に抱えられた腕から抜け出そうと暴れだす。
「おばあさま、離して!お母さまのところに行きたい!」
老女は小屋から離れた林群の方へ足を止めずに向かう。
「おばあさま!」
老女の腕の中で暴れていた少女は、ぞわりと。自分の腕に鳥肌が立つのが分かり、一瞬抵抗が止まる。気温のせいではない、強い寒気が彼女を襲う。
―何か、とても嫌なことが起こる―
「おばあさま!」
「静かにおし!ここにいたら巻き添えを食らうよ!」
吹き付ける豪雪の中、薄闇の中から段々大きくなる黒い塊が、小屋に向かってきているのに少女は気づく。
黒い塊、いや、それは幾千、幾万にも及ぶ禍々しいモノたちの集まり。少女は魔物を見たことがなかった。しかし、それがとてもよくないものであるはすぐに分かる。
次の瞬間。
それが小屋を破壊し、突っ込んだ。迷いもせず。既に遠くに離れた小屋が粉砕される。それでも執拗に、魔物たちは次々と壊れた小屋に入っていく、小屋はもう黒い塊にしか見えない。
少女が息を飲み、叫ぶ。
「お母さま!!!!」
少女が叫んだと同時に、小屋が爆炎につつまれる。
魔物と、愛しい母がいるはずの小屋が。
少女はそれを認識した瞬間、意識を失った。
連続投稿します。