出会い
書きたいと思って衝動的に書いたものです
過度な期待はしないでください
あと健康のため画面から30センチは離れてみてください(笑)
彼女に出会ったの数年前だ
母の勤める病院のロビーに彼女はいた
歳は見た感じ中学生か高校生くらいだろう
車イスに乗り何をするでもなくずっと外の景色を眺めていた
声をかけたのは単なる気まぐれだった
母親の仕事が終わるまで病院で待たなければいけなかった俺は特にやることがなかった
何を見てるんだ?
振り返った彼女を見て俺は驚いた
その子は確かにアジア系の顔をしているのに肌が恐ろしいほどに白かった
まるで冬に降る注ぐ雪のように何もかかれていないキャンバスのように
ただ白かった触れれば壊れてしまいそうで幻想的で、
しかし肌とは違い見つめていれば心が不安になるほどの赤い目が彼女の幻想的な雰囲気を壊し、どこか不気味さを覚える
外の、あの木を見ているの
彼女の指の先には確かに一本の大きな木があった
葉はついていない
秋になりもう冬になろうとする今の時期にあの木も他の木と同じように葉を枯らしていた
そんな木を見ていて面白いのか?
尋ねると彼女は答えた
あの木は私に似ている
ずっと一人きりでとても寂しそう
君も一人なのか?
ずっと一人
私は他の人とは少しだけ違うから
いつも私はみんなの輪に入れない
寂しいのか?
寂しくはない
ただ、退屈で少しだけ悲しいかも
悲しいと寂しいは違うの?
違うよ
寂しいは哀愁の感情、
悲しいは悲哀の感情
俺にはどう違うかがわからないけどな
彼女は振り返り俺に訪ねた
あなたは誰?
……マイケル
……マイケル?
それって偽名だよね?
俺の容姿は一般的な日本人のそれだ
両親が国際結婚でもしていればマイケルでもあり得なくはないが、そんな事実はもちろんない
まあ結果偽名な訳だが
まあ誰だっていいさ
君の名前は?
自分の名前も教えない人には教えられません
そういって彼女はまた外の木に視線を戻した
そうやってずっとあの木を見ているのか?
そう
なんで?
別に意味はないよ
他にやることもないから
そうか
俺も彼女と一緒に外の木を眺めた
冬に差し掛かる秋の空は灰色に曇り今に雪でも降りだしそうだ
そんな中に一本だけたたずむ木は寂しさを掻き立てるようだった
ああなるほどこれは確かに
俺は深い思考に落ちていった
驚くほど静かに落ち着き払い自分の気持ちを静め考え事に集中した
それのほとんどはどうでもいいようなことだったけれど少しだけ理解できたものがあった
隣にいる彼女もきっと今の俺と同じように深く考えを巡らしているのだろうということ
どんなことなのかは予想もできないがきっと深い悩みがあるんじゃないかと思った
しばらくして携帯に仕事が終わったと母親から連絡があった
じゃあ俺もう行くから
そう
それじゃあさようなら
別に名残惜しそうにもなく俺と彼女は別れた
自宅に帰る車のなかで母親に彼女のことを聞いてみた
彼女の名前は白鳥雪乃
聞けば彼女はアルビノだと言う
先天性白皮症
先天的にメラニン色素が欠乏により体毛や皮膚が白く、瞳孔は毛細血管の透過により赤色を呈する。らしい
他にも視覚的障害や日光による皮膚の損傷やガンになるリスクが非常に高いという
車イスに乗っているのは小児麻痺により弛緩性の麻痺が残ってしまったものらしい
数日ほどして俺はまた病院を訪れた
そして彼女も数日前と変わらずあの場所で外を眺めていた
彼女の隣に並び横目で彼女を見る
やっぱりきれいだと思った
触れてはならないようなそんな気さえするほどに彼女の存在はこの世とは切り離されているように思う
ただ、赤いその目は美しさとは対照的にひどく恐ろしかった
なにも考えていないような、無感情でひどく冷徹な目に見えた
また来たんだ
いつの間にかこちらを向いていた彼女にそう聞かれた
まあな少し用があって
そう
彼女の視線はまたあの木に戻った
数日前と変わらずに薄暗い灰色の雲のした寂しく一本だけたたずんでいる
今日も一人なのか?
そう
特になんの感情も含めずに彼女は言った
今日だけじゃない
昨日も一昨日もその前もずっと一人
きっとこれからも一人きり
やっぱり寂しいの?
いいえ
退屈なだけ
そうか
実は俺も今退屈なんだ
用があるんじゃなかったの?
ないこともないがまだ時間がある
俺の用なんて母親の仕事を待つだけだ
だから今のこの現状は時間があるといっていいだろう
少し話をしよう
……別にいいけど、あなたは……その、私のこと気味悪いとか思わないの?
そんなこと思わないよ
他の人と少し違うかもしれないけど
誰だって少しずつ違うんだから君も別におかしいわけじゃない
嘘だ
俺は少なからず彼女に気持ち悪いという感情を持っている
彼女、他の人とはあまりにも違いすぎる見た目そして目の色に俺は畏怖した
それでも彼女を傷つけたくないという思いから俺は嘘をついた
彼女は驚いた顔をしてこちらをみた
そんなことを言った人は初めて
そして嬉しそうに笑った
その笑顔は綺麗だった
白く美しいそれはやはり触れたら壊れてしまいそうなそんな儚げな印象を与えた
少しだけ嘘をついた罪悪感が芽生えた
君のことを聞かせてくれないか?
なんで?
別に何となくだ
彼女は不思議そうな顔をしたが外の木を眺めながら語りだした
私はアルビノなの
アルビノって知ってる?
俺はああとだけ返事を返した
そう
私はこの病気のせいであまり外には出られないの
私のこの肌は紫外線にすごく弱くて
長時間浴びるとがんになる可能性が非常に高いらしいの
それにこの足も動かないしね
そういって彼女は自分の足に手をおいた
だから私は生まれたときからこの病院の敷地から出たことがないの
お父さんもお母さんも二人ともお仕事で急がしいらしくてそんなに会えないし
それでこの見た目だから病院の中でも友達はできなかった
だから本当に退屈だった
何をするわけでもなく流れていく時間に身を任せているだけでとても退屈だった
そんな退屈を埋めるために本をたくさん読んだ
この病院図書館があるのは知っている?
そこの本はすべて読んだ
読書をしてるときは楽しかった
まるで自分が物語のなかに入り込んだような感覚になるの
それに色々なことを知れるしね
例えば海
私は本物の海を見たことがないけれどそれでも絵や写真を見て形や大きさなんかも想像できる
物語に出てくる描写で何となくではあるけどそこにたっている感覚も想像できるの
本を読むことによって私は色々な世界を疑似体験できるの
悲しいことも嬉しいことも楽しいことも苦しいことも
多くの体験ができるの
とても楽しいわ
でも、
読み終わったあとは少し寂しくなるかな
病室で本を読み終わり窓の外を眺める彼女の姿を想像してしまった
実際は図書館で読んでいるのかもしれないが、どちらにしても想像の中の彼女は一人きりだった
私の話はこんなところかな?
聞いていてもあまり面白い話ではなかったでしょ?
そんなことはないと俺は言った
別に気なんて使わなくていいよ
自分でも自覚しているから
彼女はこちらを向き言った
ねぇ今度はあなたの話を聞かせてよ
私だけにしゃべらせるのはずるい
ああそうだな
どんな話が聞きたい?
そういったとき携帯が鳴った
見れば着信は母親からだった
悪い
もういかなくちゃいけないから話はまた今度な
……また今度?来てくるれの?
驚いたかおをした彼女に俺はできるだけ優しく言った
ああ
約束だ
うん
約束
出口へ向かおうと歩き出そうとした俺の服の裾をつかむ手があった
……なんだ?
つかんでいたのはもちろん彼女
……白鳥雪乃
消え入りそうな声で彼女は言った
私の名前
恥ずかしそうなその顔と声を俺は素直なかわいいと思った
そっか、
じゃあな白鳥
うん
裾から腕をはなし手をふった
それに手をふりかえし俺は病院を出た
気が向いたら続編書きます