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#3 双子の親友

 息を切らせながらも、私とヒロは待ち合わせ場所『噴水公園』にやっと、到着していた。

この公園は、散歩に利用する人が多く、色々な散歩コースがある。

そして、ほぼ中心に位置する所には、公園の名前の由来にもなった、大きな噴水がある。

噴水は、待ち合わせ場所として有名なので、私達もよく利用していた。


それで、今日も待ち合わせで噴水の前を指定されたんだけど……──


「遅い!!何分待たせる気なの!?」


茶髪のショートヘアが似合う、明るく元気な春華は、鬼…とまではいかないものの、すごい形相で仁王立ちしていて、空気がピリピリしていた。


「あ、二人共、来たね…おはよう」


だが、そんな空気をぶち壊すほどの、呑気な声が私とヒロにかけられる。

まだ眠いのか、少し寝癖のついた短い茶髪を揺らしながら、夏輝くんが手を振る。


「ごめんね、春華!それと夏輝くんも、本当にごめん!」

「悪かった。遅れて、すまない」


勢いよく頭を下げる私とヒロ。

こっぴどく怒られると覚悟を決める。


「はあ…いいわ、許してあげる!」


しかし、春華は一つため息を吐くと、あっさり許してくれた。

珍しい春華の態度に拍子抜けし、私達は顔を見合わせる。

すると、春華が待ちきれないといった様子で、歩き始めた。


「今日はそれどころじゃないの!早く行くわよ!」


訳が分からず呆然と立ち尽くしていると、いつの間にか隣に来ていた夏輝くんが、私の手を引いて歩き出す。


「行こう、春がもっと怒るからさ…」


「え?…え??」


「あ!おい、夏輝!?」


ズンズンと先に進む春華、スタスタと前を歩く夏輝くんに半ば引きずられるようにして歩く私、そしてその後を追いかけるように、ヒロが続く。


そして、春華について来て数分。


「な、なにこれ!?」


私とヒロは、目の前の光景に目を見開く。


「ふふん!どうよ、これ!」


「どう…って聞かれても……。これなに?」


自信満々な顔で微笑みかけてくる春華に、動揺を隠しきれず、聞き返す。


「何って、見れば分かるでしょ!ミステリーサークルよ!」


「「ミステリーサークル!?」」


私とヒロの声が綺麗に重なり、辺りに響く。

確かにそう言われてみれば、そう見えなくもない…といったものが地面には描かれていた。


「絶対そうよ!大きな円、見たことのない図形!それに文字!どこからどう見ても、ミステリーサークルだわ!ふふふ!」


不気味な笑い声を上げながら、変なテンションで、春華は図形をメモ用紙に描き込み始めた。

そんな春華の様子を、呆れたように見ていたヒロが、何かに気づいたのか声を上げる。


「おい……今、気付いたが、ここって…。学校の裏じゃないか!?」


「…そうだけど?」


ヒロの言葉にサークルの向こう側、林の方を見ると、確かに学校の校舎が見えていた。


「だったら、待ち合わせなんかしなくても、普通に学校行くとき寄ればいいだろ!?」


声を荒げるヒロに、春華は唇をとがらせると、駄々をこねる子供のような声を出した。


「え~?だってそれじゃあ、朝練にならないじゃん…。それに、他の奴に先越されるかもだし…」


「なんで、朝練なんかする必要がある!?」


「まあまあ…落ち着いて、紘斗」


「そうだ~…もっと言ってやれ~、紘斗」


「夏輝くん…煽らないで」


棒読みに言う夏輝くんを窘めると、私はヒロの腕を引いた。

だが、振り返ったヒロは、少し寂しそうな顔をして、私を見つめる。


(あれ…?何で、そんな顔?)


不思議そうに見つめ返していたからだろうか、ヒロはハッと我に返ると、また春華の方に体を戻す。


「と、とにかく…俺達の部活は、朝練なんかしなくて良いだろ?大会とか、出るわけじゃないんだからさ!」


その言葉に春華意外が、しっかり頷く。勿論、私も…。

だって、頷く理由は簡単で…。


「春…。僕達の部活は『異世界研究部』だよ?朝練なんて、眠くて…眠くてやってられないし、する必要もないと思う。」


双子の弟である夏輝くんの言葉に、流石の春華も「わかった」と言って朝練は簡単に終わったのだった。

───キーンコーン…カーンコーン……


丁度その時、学校のチャイムが鳴り、私達はいつの間にか時間が経過していたことに気づき、校舎の方に走り出した。


「もうこんな時間になってたなんて!早く集まった意味ないじゃない!」


「……文句言ってないで早く走って、春。」 


(な、なんか…今日は、走ってばかりな気がする!)


「葵!遅れるぞ!…っ…手、かせ!」


「え、あ!」


皆より遅れていた私の手を掴むと、ヒロはスピードを上げる。

その速さに必死について行く中、私はさっきのヒロの顔を思い浮かべた。


(今、ヒロに葵って呼ばれて…なんか、寂しいって思った。……もしかして、さっき紘斗って呼んだから…ヒロも?)


そんな考えが頭に浮かび、私はヒロを見つめる。


(まさか…ね?)


半信半疑だったが、私の中には言いようのない嬉しさが広がっていた。







此処まで読んで下さり、ありがとうございます!


春華と夏輝は変わった人物ですが、葵にとっては、ヒロと同じくらい大切な存在なのだと、思います…!


次は、紘斗目線を中心にいきたいと思ってます。

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