#1 不思議な悲しい夢
初投稿作品です。素人同然なので、暖かな目で読んで頂けると幸いです…。
何もかもを、全て飲み込んでしまいそうな漆黒の闇。
木々は枯れ果て何もない地に、闇にそぐわない白い雪が辺りを埋め尽くしていた。
──寒い、冷たい、怖い…。
そんな感情が心を支配し、私の体は動かなかった。
倒れた体からは徐々に体温が雪に奪われはじめ、瞼が次第に閉じていく。
「しっかりしろ!大丈夫だ、俺はお前の側にいる、ずっと…ずっとだ」
彼が抱きしめてくれている。
顔を上げることができない、それが余計に怖かった。
(温かい…)
それでも私を包むこの温もりに、強さに、声に安堵した。
だが彼の、その手も声も震えていた。
「好き…よ。『イオ』」
「っ…!」
私は精一杯声を出した。
掠れた小さな声だったが、まるで最後の言葉のように、彼の名前を呼ぶ。
彼への気持ちを、変わらぬ愛を。
「ああ…愛している、俺も…愛している!…だから!」
返事をするように、彼は私の頬に優しく触れ、声を上げる。
まるで引き止めるように…彼の瞳からは涙が溢れていた。
幾つもの雫が頬に落ちてくる。
拭ってあげたかった、抱きしめ返してあげた
かった。
でも、体はもう動くことができない。
「イオ…お願い、ね…あの子を…────」
「…わかったから!もう、喋るなっ!…『アリル』!」
私がそう告げると、彼は私の名前を叫ぶ。
行ってしまわないように、ここにいてくれと。
私も、そうしたかった。あなたの隣に、傍にいたかった。
だが想いとは反対に、瞼は完全に閉じ、体は言うことを聞かなくなった。
「や、くそく、して…お願い、よ。イオ。」
それでも、最後の力を振り絞り、私は頬にある彼の手に触れる。
「……わかっ…た、約束する。お前との約束は絶対に守るっ…」
彼は頷いた──悲痛に顔を歪めながらも、精一杯の笑顔を見せ、彼女に触れられた手に力を込めて、指先を握りながら。
それが嬉しくて、私は小さく笑う。
でも、それと同時に、私からは全ての力が抜けていった。
(ごめんなさい…イオ、傍にいられなくて。愛していたわ…)
彼の手を握る力も、もう残っていなかった。
「アリル?……うそ、だろ?─アリルっ!!!」
握らなくなった手が、彼の手をすり抜け、パタリと雪に落ちる。
「ぁりるっ……わあああああぁ───!!!」
黒と白。二色の世界で、彼の悲痛な叫びが響く。
ピクリとも動かない冷たくなった彼女をきつく抱きしめ、彼は泣き叫ぶ。
その声が、誰にも届かないと知りながらも、叫ばずにはいられなかった。
「ア、リル…っ…アリル! 目を開けてくれ!…俺の…俺の傍にいてくれっ!アリル!」
──ただただ、彼女の名を呼ぶ彼の声が、だんだん遠くなる。
彼女を抱きしめる彼の姿も小さくなっていく。
周りが暗闇に包まれ始め、何かに引っ張られるように、私は彼らから遠ざかっている。
(待って!……あなたは!)
───ピピピピピピピピ…!
「あっ…!」
ハッと目を覚ます。
天井には丸い可愛らしい電気。ベッドの脇には、未だ鳴り続ける目覚まし時計。
そして部屋のドアには…
『葵の部屋!許可なく入るのは禁止!』
というマジックで書かれたプレートがかけてあった。
そう、そこは間違いなく私の部屋だった。
此処まで読んで下さり、ありがとうございます!
次から、色々な人物が出て来る……はずです!