マキナの言葉の核爆弾
後半から異世界(14世界)に戻ります。
三日目。
朝起きるとまだマキナが抱きついていた。
正明はマキナを揺するとスリープから解除されたのかマキナが目を覚ました。
「おはよう、いい夢見れた?」
「いや、別に?」
「朴念仁。」
「ん?何か言ったか?」
「なんにも。」
マキナは正明から離れると、部屋の中を観察していた。
「これ何?ヘルメット?」
「ああ、それはVRゲームをするのに必要なハードだ。」
「VRゲーム…該当なし。システム解析。」
マキナはハードを勝手に解析を始める。
それはあっという間に終わってしまった。
「データ収集完了。正明ありがとう。」
「いや、勝手にやったんだろう…。」
普段着に着替え無線を持つとリビングへでる。
朝食がなぜか赤飯だった。
にこにこしている母親に正明は尋ねる。
「なんで朝から赤飯なんだ?」
「あんたのせいよ。」
「俺の?」
確認を取るとどうやら昨日の出来事から赤飯になってしまったらしい。
ここでマキナが核爆弾を落とす。
「昨日の夜は(久しぶりにベッドで寝れて)気持ちよかったです。」
一瞬にして場の雰囲気が凍った。
「お前は何を言っているんだ!」
「まあ!正明あんなに説得してたのに本当は…。」
「あんた何やってるのよ。」
「違う…俺は悪くない…。」
正明は人生で一番の危機に陥ったのだった。
そして時間は進み三日目の午後。
マキナは他に転移者がいないか確認する作業をしていた。
基地には転移に使用する魔力マーカーが置かれている。
「さて、行きますかね。」
マキナは広域スキャンをアクティブで動作させ続け空に上った。
巡航速度はマッハ一で飛ぶ。
レーダーに引っかかった魔力反応を片っ端から見ていく
魔物の場合はLSRで長距離精密射撃で仕留めていく。
二十分ほど飛ぶと、魔力反応が検知された。
レーダーと拡大表示で人間で有ることが確認される。
しかしその人物は倒れていた。
マキナは一旦速度を落とし、その人物に近づいた。
「大丈夫?」
"スキャン開始”
"栄養失調”
"脱水症状”
"左腕骨折”
倒れている冒険者。
杖を持っているから魔法使いだろうか。
「被害者一名発見転移させます。」
「貴方は…?」
「マキナ。ある場所に転移させるけど驚かないでね。あとで状況を説明するからその場で待機しててね?」
「分かりました…。」
転移マーカーの元へ一人を送る。
「さて次いきますか。」
再び空へ上がると関東圏内を捜索し始めた。
そして昼過ぎ…。
転移者は新たに五人増えていた。
皆魔法使いのようだ。
戸惑ってはいたがマキナがこれからの事を話すと次第に落ち着きを取り戻したのであった。
三日間飲まず食わずの人がいたため医療班が出向き栄養失調、脱水症状になっていないか検査したのち食堂で昼食する予定になった。
マキナは医療班と転移者の翻訳として付き添っていた。
四日目。
昨日より遅くついてしまい、朝食時に正明の家についたマキナ。
インターフォンを鳴らすと母親がでてきた。
「あら~今日も来てくれたのね~。」
「おはようございます。」
「おはよう~。朝食用意するから上がって上がって!」
マキナは家に上がるとリビングへ行く。
正明はまだ来ていないようだ。
マキナの分の朝食が用意され食べる。
「おはよ…う!?」
「あら~正昭おはよう~。」
「おはよう。」
「…。」
マキナはシレっとしているが正明はなんでまた居るんだと内心思っているだろう。
「冷めちゃうから早く食べて~。」
「お、おう。」
軽い朝食を食べ終わると、無線機から声がする。
【正昭准尉とそこにいるだろうマキナ君に連絡だ。スパイ衛星が待機中だ。今ならハッキングを仕掛けられるぞ。】
「了解です。」
「軍の回線の方が太そうだからそっちに行くわ。」
【私の部屋に来てくれ。】
通信を終えると家からでてすぐに空へ上がる。
そして基地に向けて音速の速さで飛んでいくのであった。
基地には二十分程で到着するといつものヘリポートへ着地する。
そして篠原少将の元へ急ぐ。
「正昭准尉です。」
「入りたまえ。」
「失礼します。」
「さて早速だがハッキングの用意はできている。端末は私のを使うとよい。」
「わかりました。」
マキナは端末から出ている電波からハッキングを開始した。
意識を一時的に電脳から切り離し、パケットとして乗せる。
「一旦衛星以外も経由しよう。」
ハッキングの出所が分からないようにスパイ衛星から何百と言う端末を経由し国際科学研究機構へ入り込む。
当然のことながら侵入はすぐに検知され障壁が幾重にも張られるが、そんなものは躱し奥へと入り込んでいく。
今のマキナの前には防壁をリアルタイムで解析し。解除、回避することができる。
「これか。」
マキナは異世界探査にかかわるプログラム郡を見つけると自分の元へダウンロードし、処理を始める。
この段階から完全に制御はマキナに乗っ取られたのであった。
「エミュレート開始。核融合炉停止シグナル送信…完了。システムをサブフレームへ切り替え…完了。これでよし。」
マキナは接続を切断する際経由した端末の通信ログをすべて削除していた。
念には念を入れるのだ。
「終わったのか?」
「えぇ。これで世界の危機は去ったわ。後は異世界側にある結晶を破壊するだけ。」
「世界の危機を救った英雄を称えられないのは残念だがしょうがないか…。」
「マキナ。これから異世界に行くのか?」
「そう。異世界で結晶破壊して神とちょっと話して第一世界に帰る予定。最初は面白そうな世界だから遊びに来ただけだし。」
「遊びに来たついでに世界救いましたとかなんなんだ…。」
「まぁ、正明准尉。細かいことは気にするでない。」
「それじゃ私は超えるわ。」
「おう。元気でな。」
「今回の協力感謝する。」
「それじゃ。」
それだけ言うと超巨大な魔力がマキナから発生すると次の瞬間にはいなくなっていた。
その魔力に驚いて魔法使いたちが”何事ー!”っと騒いでいたのは別の話。
第十四世界に到着するとその場で魔力の翼を広げクリスタルへ向かっていく。
「破壊する。ディメンションアンピュテーション。」
空間を切り裂く黒い斬撃はクリスタルを破壊したのだった。
「さて…神と話して帰る予定があったけど子供を保護しなくては。」
マキナは人間を守るために設計されているため人命のほうが優先されるのだ。
「とりあえずバルト帝国のサグンス村。名前はルルベル・シルフィードの救出…。場所がわからないな。この間の街に行ってマップを更新するか。」
マキナは以前のポイントへ転移すると周りの驚きの声を無視しつつ、王都へ入国したのであった。
「図書館どこかしら。ちょっとそこの人。」
「ん?なんだい?お嬢ちゃん。」
「図書館行きたいんだけど、場所が分からないの教えてくれる?」
「いいぞ~。おじさんに任せなさい。」
無事優しいおじさん?に図書館まで案内してもらったマキナはすこしばかりのお礼をすると図書館の中に入っていく。
「大陸地図はっと。これかな?」
大陸の地図をスキャンすると、目的の村を探した。
子供は約二十人居るらしい。
それらを回って孤児院でも開設できたらいいなっと思っていた。
「資金が居るな。とりあえず開設と経営者を雇ってからギルドの依頼片っ端からやればいいか。とりあえず一人目。」
マキナは建物の裏手に入ると翼を広げ空へと舞い上がった。
飛行速度はマッハ2で飛行する。
途中空を飛んでいた魔物とすれ違ったが衝撃波を貰い怒り追いかけ始めたが、マキナの速度には追いつくことができず諦めていった。
「あれがルーツ国っと。この大陸は思ったよりも小さいみたいだ。進路修正。目標まで残り140kmぐらいか。」
少し速度を上げると村へ一直線に向かっていく。
最初の目的地はサグンス村だ。
目的地まで到着すると村の真ん中で空から降りる。
当然村人たちはそれにどよめく。
「ルルベル・シルフィードはどこに居ますか?」
「おい!嬢ちゃん!シルフィードさんを知っているのか!」
「子供を保護すると約束してきました。」
「村長の家に行ってくれ。あの家だ。」
「分かりました。」
マキナは村長の家に行くと出迎えてくれた。
「どうぞ椅子にお座りください。」
「どうも。」
「単刀直入に話しますが、シルフィードさんとはどういう関係で?」
「第15世界に転移してしまい保護されそこで知り合いました。」
「第15世界?なんだそれは。」
マキナは掻い摘んで簡単に説明をする。
専門用語を並べたところで理解できるはずがない。
「にわかに信じがたいですが…子供の証言と一致するな…。」
「そこで孤児院を建てたいのですが、子供好きな夫婦など知りませんか?」
「生憎この村には居そうにないな。皆自分の生活で一杯なんだ。」
「ルルベル・シルフィードは?」
「一時的に家で預かっている。」
「ふむ…孤児が比較的多いルドルフ皇国に建てるとするか。ルルベル・シルフィードはもう少し預かっててもらえませんか?」
「分かった。」
マキナは椅子から立ち上がるとすこしばかりの食料を取り出すと、村長に渡した。
第15世界の軍から少しもらってきた戦闘食だ。
「お湯で温めてください。そうすれば食べられます。」
「文字は読めないがありがたい。」
「では私は行きます。」
「孤児院なんて建てるの大変だろう?」
「直接掛けあってきます。」
マキナは家をでると翼を広げ空へと舞い上がった。
「目的地はルドルフ皇国の大教会だ。」
マキナは通ってきた道なので転移でルドルフ皇国内に移動する。
すでにマップデータはアップデートが完了しているため今いる場所もすぐに分かる。もう少し北に王都があるようだ。
マキナは先ほどと同じ速度で飛行し、王都内に侵入した。
速度を落とし大教会前に翼を出したまま降りると、扉の前に居た神官たちが頭を垂れてきた。
「おお。神よ!」
「入りたいんだけどいい?」
「ぜひどうぞ!」
マキナは無事大教会内部に入ることができた。
翼は魔力でできているため壁にあたってもどうということはない。
そのまま国のトップ大神官がいる場所まで移動する。
すれ違う神官たちはマキナから溢れ出る魔力と翼に頭を垂れている。
「と、とまれ!」
「ん?」
「だ、誰だか知らないが、こ、この先は大神官様がおられる!少し待たれよ!」
神官はおっかなびっくりしながら謁見の間へ入っていく。
マキナは腕を組みながら返答があるまで待っていた。
その間片方の神官はどうして良いかわからず窓の外を見ていた。
「許可が降りた。は、入っていいぞ。」
「分かった。」
マキナのレーダーに赤い点が前方に映っている。
だがそんなの気にせず謁見の間へ入っていく。
「う、撃て!」
大神官につかえていた兵士たちが一斉に魔導ライフルをマキナに打ち込んだ。
だがマキナのシールドに阻まれ銃弾が止まる。
「<スタン>」
「ガッ!」
「ぐぅ…。」
マキナは非殺傷魔法で兵士を一度に気絶させると大神官に話しかけた。
「いきなりの歓迎ありがとう。率直に話すと孤児院作りたいんですが、土地開いてますか?」
「おぉ。お優しい神よ。疑ってしまった私を咎めないとは…お優しい。土地なら開いております。何でしたら孤児院も建てさせましょう。」
ルドルフ皇国では神を名乗ることは重罪なのだ。
それで大神官は銃を兵士に撃たせたのだ。
マキナはそんなことは知らず、普通に入ってシールドを展開し、暴徒?の鎮圧をしただけである。
「あらそう?じゃ、それも頼むわ。」
「はい。神よ。」
「あと孤児どうなってる?この間の事件で孤児が出ていることは知っている。」
マキナはこの大神官が良い人物なのか見定めていた。
"スキャン開始”
"脳波フラット”
「報告によると知り合いの家で生活をしているものと路上で寝泊まりしている者が居るとの…。」
「で、なんで助けないの?」
マキナは少し出力を上げ魔力を散布させる。
これによりこちらが憤怒していると錯覚させるのだ。
「ひっ!?ま、まだそれほど食糧難が解決していなくて保護しようにも保護できない状態でありまして…。」
"脳波に微量な乱れあり。”
「(多分これは威圧したからかな?)そうね。自分たちで精一杯ね。」
「恐れながら…。」
「ふむ…。これ、シーサーペント倒した時の報酬全部あげるから孤児院立てておいて。資金は私が集める。その後は支援者を募って運営していく形で。」
「分かりました。し、神官だれか居ないか!」
扉を開けて神官が一人入ってきた。
その者が目にしたのは兵士が折り重なるように倒れている姿。
「ひっ!な、何でしょうか?」
「これあの人に渡しておいて。」
「は、はい!」
「それじゃ孤児院の件は頼みましたよ?」
それだけ言うと転移で建物の中から出る。
そしてまた驚く周りの人々。
「さて。ギルドはどこかな。」
マキナはギルドを探し、資金源を集めることにした。
お読みいただきありがとうございます。




