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マキナのドキドキ異世界冒険

ミルフィーとマキナが幌馬車へ戻ると既に護衛のメンバーは準備ができていたようでミルフィー達を待っていたようだ。

そこにはすっかり回復したアリスの姿があった。

先ほどまでの表情は何処にもなく、何か決心したような表情だ。


「すみません。ちょっと個人的な話があって幌馬車から離れていました。」

「おぉ。帰ってきたね。別に良いのだよ。」


ダンリックとミルフィーが話している間マキナは何をするわけでもなく、ただ立っていた。

ふっと、マキナの視界の端からアリスがマキナの方へ歩いてくるのが見えた。


「マキナさん!私甘かったです。冒険者は常に死と隣り合わせな職業でした。でも私には覚悟が足りませんでした。」


アリスの目には確固たる意思が宿っていた。


「ミルフィーさんの言葉で私がどんなに浅はかだと思い知りました。でも、もう逃げません!助けてもらったお礼は必ずします!ありがとうございました!」


アリスは勢い良く頭をマキナに下げてきた。

綺麗な斜め45度だ。

しかしマキナは突然のことで驚いていた。


アリスがやってきたかと思ったら熱く語り始めいきなり綺麗な45度で頭を下げられたからである。


「え?あ、あぁ、頭上げてもいいよ?」


そう言われるとアリスは頭を上げてこちらを見据えてきた。


「う・・。いや、あれは当然のことだし、私の定めというか、なんというか…


マキナはアリスより身長が小さく、年齢も低いのである。

そんなアリスに見据えられたら縮こまってしまうのは当たり前である。

ならない人はよほどの度胸がある人か何も考えていない人である。


その時ダンリックさんが周りに声を掛けた。

「皆さん。そろそろ出発します。準備は大丈夫ですか?」

休憩を終わりにしてそろそろ出発しようというのだ。

日はまだ高くマキナのディスプレイには14時15分と表示されていた。


「おう。旦那準備完了だ。」

「こっちも大丈夫だぜ。」


護衛のメンバーが次々に立ち上がり、準備完了の合図を示唆していた。

14時15分幌馬車は再び動き出し次の街へ進みだした。


それからというもの、最初のゴブリン襲撃から何も起こらず幌馬車はゆっくりと平原の道を進んでいた。

平原の少し先には次の街が見えてきており時々冒険者や商人などと擦れ違いもした。


「そういえばマキナさんはお幾つなんですか?」

アリスが唐突に聞いてきた。

マキナは隠す必要も無いので素直に答えた。

「うーん。115歳だったかな?」

「え?」


マキナは自分の答えた年齢がおかしいことに気づいた。

普通答える前から気づくはずだが、やはり天然気質でもあるのか正直に答えてしまったのだ。

「あー。ごめん。14歳だよ。間違えちゃった。」

内心また”間違えちゃった。てへぺろ☆”とか思っていたマキナであった。

「あぁ。びっくりした。115歳なわけないよね~。でもマキナさんって私より年下なんだね。」

「やっぱりアリスさんのほうが年上なのですね。」


マキナは歴然とした身長差でアリスが年上だと感じ取っていた。

アリスは喋り方や行動が子供らしくないマキナの事を身長が小さい同い年ぐらいに思っていたのだ。


「なら私のことはマキナでいいですよ。アリスさんの方が年上ですし。」

「いやいや、恩人だし呼び捨てにするわけには…」

「別にいいんですよ~」

「いえ。ダメです。」

「いやいや、大丈夫ですよ~」

「いえ。ダメで…」

いつまでも言い合ってそうな二人に幌馬車の上から声がかかった。

「いつまでいい合いしているつもりよ。ふたりとも呼び捨てでいいじゃない?」

「そうですね。ではアリス。よろしくね。」

「うーん…。わかりました。よろしくマキナ。」


二人の他愛もない言い合いはミルフィーの突っ込みによって終わりを迎えたのであった。


「じゃぁ、ミルフィーもよろしく!」


マキナが唐突にミルフィーに向かって声を掛けた。

ミルフィーはなんとも言えない顔をしている。

先ほどまで疑ってかかって、意味もわからずに話が終わった相手である。


「私もよろしくね。ミルフィー。」

「あー。うん。よろしくね。」


歩きながら話していた3人を含め護衛チームにダンリックから声がかかった。


「そろそろ街に到着します。後少しですがよろしくお願いします。」

ダンリックからそろそろ街に到着すると言う声がかかったのだ。

3人は前を向いて見ればもうすぐそこに街の外壁が見えていた。


日が傾き始め草原はオレンジ色に染まり始めていた。

マキナはそれを見ながら歩いていた。


元の世界では自然は破壊されこのような広大な草原など何処にもなかったのだ。

マキナは生まれてから研究所の中から見える風景しか見たことがなかった。

たまに動画やヴァーチャル訓練で見たことがあったが、実際に生で見たのは始めてだったのである。


「綺麗…。」


マキナが小さく呟く。

そのつぶやきは馬車の音にかき消され誰の耳にも届かなかった。





マキナ達護衛チームと商人ダンリックはティールの街へ入った。

ティールの街は外壁の周りに堀があり、入り口は跳ね橋になっているのだ。

マキナ達が入った後すぐに跳ね橋が上がってしまった。

これは夜の闇に紛れて盗賊や魔物などが入り込んでこないようにするための対策である。

この対策は外壁がある街ではどこでもやっている当たり前のことだ。


「皆さん。ここまでありがとうございました。途中苦しい戦いもありましたが無事で何よりです。本当にお疲れ様でした。依頼達成のサインを行いますので依頼書を私の元へ持ってきてください。」


ダンリックは御者台のところにある箱から羽ペンとインクを取り出しペンの先をインクに漬けた。

冒険者達は依頼書を取り出しダンリックの元へ集まって行った。

サインをしているダンリックはサインするごとに感謝の言葉を言っていた。


「律儀な人ねぇ…」

ミルフィーがそう言うと聞こえていたのかダンリックが答えた。

「私が依頼したのですから当然ですよ。ハハハ」


6人の依頼書にサインを書き終わり、残すはマキナ達だけになった。

「じゃ、私サインもらってくるわ。」

「私も行ってくる。」

「いってらっしゃ~い」


アリスとミルフィーはダンリックのところへとサインを貰いに行ったのだが、マキナは当然冒険者ギルドにも入っておらず、依頼さえ受けていないので残りである。


サインが終わったのかアリスとミルフィーが戻ってきた。

「マキナー?ダンリックさんが呼んでたよー」

「あえ? 私? なんだろう。」


アリスにそう言われるとマキナはダンリックの居る方へと歩いていった。

マキナがダンリックの前まで来るとダンリックは口を開いた。


「マキナさん。この度はありがとうございました。ギルドの依頼を受けていないと彼女たちから聞きました。」

「そうですね。依頼どころかギルドにすら入っていませんね。」


マキナはアハハと笑いながら受け答えた。

ダンリックはそれを少しばかり驚いたかのようだ。


「あの強さでギルドに入っていないのですか?」

「え?そうですけど。何か問題とかあったりしますか?」

「いえ。特にはありませんが、貴方程の実力者ならすぐにランク上位まで上り詰められるでしょうに。」

「そうなのですか。私そういうことには疎いので…。」


マキナの頭の中にはハテナが浮かんでいた。

ギルドの事は聞いていないのでさっぱりわからないのである。

「サインはできませんが、これは心ばかりのお礼です。受け取ってください。」


ダンリックはそう言うとマキナの前に手を出し、マキナがそれに手を出すと袋のようなものが手のひらに乗せられた。


「えっと。これは…」

「魔物から私達を守ってくれたお礼です。あなたが居なかったら彼女もただでは済まなかったでしょうし、受け取ってください。」


そう言うとダンリックはマキナに金貨袋を握らせ、挨拶をして去っていった。

おそらく品物を下ろしに行くのだろう。

マキナは振り返り、アリスたちの元へと歩くのだった。




「ミルフィーはこれからどうするの?」

「そうね。…ギルドによって依頼達成報告して宿屋に止まる予定ね。」

「そうだね。そろそろ宿決めないといっぱいになっちゃいそうね」


既に日も落ち、衛兵が松明に日を灯している。

しばらくするとマキナが金貨袋を持って戻ってきた。

それを疑問に思ったアリスがマキナに聞いた。

「マキナそれどうしたの?」

「うん?ダンリックさんにお礼ですってもらったんだよ。」

「どこまでお人好しなのだか…。」


ミルフィーはやれやれっと言う風に首を振った。


「とりあえずギルドへ行きましょう。もう暗いわ。」

「そうだね。行こうか。」

「?」

アリスとミルフィーはギルドへ行くということなので、マキナは何処に行くのかわからずアリスたちの後に続いた。


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