コロシアムでのマキナ
「これは異例のことだ!まさか登録したばかりのFランク冒険者、若干14歳か15歳の少女がシーサーペントを倒すなんて!」
「本当に倒したのか?」
「ここに証明部位もある。」
「確認に人を出す。それに依頼受注から帰還が早過ぎるのが疑問だ。馬を使っても往復できる時間じゃないぞ。」
「俺はそいつの相手をしてくる。まだ追加報酬の話が済んでないみたいだからな。」
そう言うと職員はカウンターへ戻ってきた。
「職員変わらせていただきます。追加報酬の件ですが、何かわかりましたか?」
「ああ、それ?湖の底に穴が開いてたよ。そこを通ってみたら海に出たからその穴から入ってきたんじゃないかな。」
「…どうやって確認したんですか?」
「どうやってって泳いで?」
「いやいや、トモス湖から海まで30kmは有りますよ!?息持たないですよ!?」
「私が開発した魔法見たい?」
「魔法を作ったのですか?」
「そう。(適当に誤魔化そう。)自分をシールドで包み移動したんですよ。」
「なるほど。…見た目とは裏腹にすごい能力を持っているみたいですね。」
「昔からよく言われる。」
「ではコロシアムにでてみるのはいかかでしょう?」
「コロシアム?」
「はい。自由参加の戦いです。」
「出てみようかな。」
「では手続きは私どもでやっておきますのでカードの提示をお願いします。」
マキナはポケットから取り出す振りをする。
もう慣れたものだ。
「はい。」
「少々お待ちください。」
何やらギルドの職員が水晶を操作している。
コロシアムの受付依頼を登録しているのだろう。
「お待たせしました。コロシアムは4日後になります。頑張ってください。」
「分かった。で、報酬は?」
「それが何分Fランクの冒険者がAランクの魔物をいとも簡単に倒したという異例中の異例なので確認を行っています。宿もあると思うので成功報酬の1割を譲渡します。」
「まあしょうがないね。受け取れる分は受け取っとくよ。」
「3金貨になります。もしもですが討伐が確認されたらギルドの規則に則り貴方をFランクからAに昇格します。」
「そんなまた急な。」
「貴重な人材を逃すわけには行きませんので。」
「はぁ。でもコツコツやってる人にとってそれはずるいと思うけど。」
「ここだけの話ですけど、Aランクの冒険者の一人が行方不明なんですよ。それでギルドとしても痛手でAランクになる可能性のある人材を探しているのです。」
「ふーん。」
「まぁ登録しても問題ないけど保障はしないよ。」
「?保障とは?」
「依頼を受けに来るかってこと。」
「わかりました。」
「じゃ、また来れたら来るよ。」
マキナはギルドから出ると泊まる宿を探した。
別に寝るだけなら路地裏でもいいのだが路地裏にも人の反応があるため宿を取ることにした。
「宿はどこだ?ギルドから離れてないと思うけど。」
マキナは周囲をマッピングしながら探しているとマユ亭と言う看板を見つけた。
「あそこかな?」
マキナはマユ亭に入ると受付の人が立っていた。
「いらっしゃいませ。」
「4日だけど、いくら?」
「食事付きで一日3銀貨です。」
「食事なしだといくらになる?」
「2銀貨になります。」
「じゃ食事なしの4日で。」
「8銀貨になります。」
「金貨しか無いから釣り銭はいらないよ。」
「え?」
「言葉の通りだよ。」
「は、はぁ。ありがたく受け取ります。こちらが鍵になります。」
「ありがと。」
そう言うと鍵の番号を確認し、部屋に向かうのであった。
「ここか。」
鍵を使い扉を開けるとシングルベッドが一つと椅子とテーブルが置いてある質素な部屋だ。
部屋に入り鍵を閉め、マキナはベッドで横になると4日後の朝にスリープのタイマーを設定し、スリープモードへ移行する。
時間の概念はどの世界でも同じに流れており、同じ惑星であれば時間がずれる心配はない。
世界線が違くとも惑星事態は変わらない。
玉に地殻変動や何らかの原因により自転速度が変わる世界線があるが、マキナのシステムによって同期される。
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一方マキナが討伐したシーサーペントを確認しに行った職員はトモス湖に着くと唖然としていた。
それもそのはずだ。
Aランクのシーサーペントが真っ二つに綺麗にわかれているのであるのだから。
「なんだ…これは。」
「何をやったらこうなるんだ…?」
職員が断面を見たりしている。
「綺麗な断面だ。相当切れ味の良い物を使ったんだな。だがどうやってこの巨体を真っ二つにできたか…だ。」
「そうだなぁ…空からなら切れそうだが人間だしなぁ。」
「うーん。どうやったんだ?」
職員はその後もあれやこれやなど仮説を立てたが、条件が合わずに仮説は崩れ去っていくのである。
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4日後の朝、マキナは定刻通りスリープから復旧した。
「久々にスリープにしたけど、やっぱりこれ便利ね。」
ベッドから起き上がるとどこも異常が無いことを確認する。
「よし。コロシアム行くか。久しぶりに体動かすのもいいかもしれない。」
マキナの体を支える金属は錆びることはない。
錆、腐食に強い素材を元に作られた体だ。
動きも忘れることもないので技や魔法は大丈夫だが実戦経験が無くてはただの人形にしか過ぎない。
戦うために生まれた存在だからだ。
部屋を出ると鍵を閉め受付に鍵を返却する。
受付の人には満面の笑みで見送られた。
おそらく金貨が影響しているのであろう。
「さて…っと。コロシアムはどこかな…っと思ったがどう見てもアレだな。でかい。」
一目瞭然でコロシアムだとわかった。
その次に大きいのは城だ。
城はいくらなんでもコロシアムではない。
大通りを通ってコロシアムまで行くとお祭りの様になっていた。
「まるでお祭りだな。」
コロシアムに入ると受付へと行く。
「マキナだけど登録済んでるよね。」
「マキナ様ですね。少々お待ちください………はい。登録されています。」
「ちなみに優勝賞品は?」
「金貨100枚になります。」
「ほう。結構な額ね。」
「そろそろ招集がかかるのでお待ちください。」
ロビーの中をふらふらしていると、係員らしき人が入場を促した。
「参加者の闘士は待合室に移動してください!」
「時間か。」
マキナは待合室に入ると使う武器の選定に入った。
「(この世界の魔法がどのようなものなのかわからないから杖を選んでおこう。剣はこんな物じゃ折れかねない。)」
杖を手に取ると周りにばれないようにハッキングを始めた。
やはりこの世界でもセキュリティの概念が無いらしくあっという間に解析が完了してしまった。
「(魔法を光弾に変える式か。まぁ、本物の魔法が使われたら大怪我か死ぬからな。一回戦目はこれを使おう。二回戦目は剣使えばいいか。)」
暫しその場で待機していると呼ばれたのでリングへ上がっていく。
リング上には多数の参加者が開始を今かとまっている。
そこにルール説明が入る。
毎度参加している者は聞き飽きたと態度で示していた。
しばらく話を聞き流していると開始の合図の銅鑼が鳴らされた。
「出力どうしようか…。」
そんなマキナに不意打ちをしようとする参加者が板がマキナのレーダーには赤く表示されているため不意打ちも意味を成さない。
「試しに5パーセントで撃ってみるか。」
不意打ちをひょいっと躱すと杖に魔力を流し込み魔術を発動させた。
魔法式に則り魔術は光弾へと変化され、大量の魔力により人一人分を飲み込む巨大な光弾になったのだ。
「んー。出力大きいか?まあいいや。」
マキナは襲い掛かってくる相手だけを狙い撃ちにしていた。
そもそも人類を守るために作られた故に攻撃の意思を無いものを攻撃する必要性が感じられないのだ。
その後も何人かがマキナに攻撃を仕掛けてきたが杖に受け流されたり光弾で場外に落とされるものも。
マキナに対する敵対マーカーがなくなったためマキナは攻撃をやめ残りの戦いの行方をみていた。
「んん~?あの4人魔力のまとい方が一緒だな。もしかしてチームで出てるのか。」
そんなことを考えていると試合終了の銅鑼が鳴り響いた。
「終わりか。」
司会が何か喋っているが重要なことではないので無視していた。
そこに先ほどリングで戦っていた男性が近寄ってきた。
「ねえ君!名前なんていうの?可愛いね!お兄さんと遊ばない?俺アラスって言うんだけど!」
また定型文みたいなナンパが来たためそれも無視するマキナ。
無視されたことでなにやらしょんぼりしているが気にも掛けない。
最後まで残ったメンバーは再度ここに集合とのことなのでマキナはお祭り騒ぎのコロシアム外を見てみることにした。
「ほう。この世界にはりんご飴があるのか。帰ったら職人に作り方を教えよう。」
"スキャンモード”
一瞬りんご飴を見るとスキャンモードでリンゴのと飴の成分を解析する。
「よし。データはとれた。他にはなにか無いかな。」
久しぶりに童心に帰るマキナであった。
時間が過ぎそろそろコロシアムの第二試合が始まるのでコロシアムに戻ることにした。
待合室まで戻ると剣を一振り持つとそれを携帯し椅子に座る。
「組み合わせが決定しました。張り出しますので各自ご確認ください。」
組み合わせ表が張られた瞬間を記録し、自分はどこで当たるのかを把握する。
「すこしいい?」
「…?」
マキナは突然話しかけられちょっとビックリしていた。
「第一回戦で杖使ってたよね?なんで今は剣なの?」
「この世界の魔法の法則に合わせただけ。少し興味があったぐらい。そもそも私は剣を使うからね。」
「?」
銃も使うがそれは言わないことにした。
知らないことを言っても混乱するだけだと思ったからだ。
「そういえば名前は?私は倉木鈴って言うんだけど。」
「私は…そうね。マキナって言うの。よろしくね。」
「マキナね。よろしく。組み合わせでは最後まで勝ち抜かないとマッチしないけど戦えたら戦おう。」
「そうだね。会えたら会いましょう。」
その後少々話をしていた。
そして休憩時間が終わり誘導員が闘士二人をリングへ誘導し始めていた。
「マキナは見ないの?」
「私はいいわ。」
鈴の誘いを断ると鈴を観察し始めた。
「(さっきの鈴って子魔力が無い。世界の法則からしたらおかしい。存在自体が世界に矛盾を与える。もう一度。)」
"スキャンモード“
マキナは鈴を注意深く観察する。
魔力がやはり無く、この世界にはおかしな存在だった。
"ディープスキャンモード“
「(ん?何かあるな。魂に何か付加されてる。もっと調べる必要性がありそうだ。)」
マキナは鈴の魂に焦点を当てていく。
「(解析結果でたな。これは神力か。そういえばこの世界に入るときに感じたな。後で挨拶にでも行こうかしらね。神力で矛盾を補ってるって感じ…何か加護でもつけてるのかしら。)」
マキナは注意深く鈴を観察していた。
「(脳の働きにもおかしな点があるな。まるで頭のなかで自分と会話しているようだ。)」
体の隅から隅までスキャンし終えたマキナはふぅっと息をついた。
その瞬間観客の歓声が上がった。
どうやら勝負がついたのだろう。
次の試合は鈴のようだ。
少し気になったので見てみることにした。
"ディープスキャンモード“
試合が始まった直後から神力が体を覆うように変化を始めた。
「(なるほど。あの神力は体をサポートするためにあるのか。)」
情報を収集するとマキナは再び元の椅子に座る。
しばらくすると試合に決着がついたのか歓声が聞こえてきた。
あの調子だと勝者は鈴だろう。
戻ってくると何やら話していたが、先ほどマキナにナンパしてきたアラスが他の女性に言い寄っていた。
それを見ていたマキナはやれやれと思いつつ鈴を見ると、手元が光り銃が出てきたのである。
「!?」
ポスンっという音とともにBB弾が発射されアラスの体に当てていた。
「(銃を知っているのか。これはもしかしなくても異世界人だな。このおかしい世界線の隣の世界から来たのか?)」
マキナは鈴に目星をつけるといつもどおり魔力パターンを登録しようとしたが、魔力が無いことを思い出しやめた。
魔力がないと不便だっと思いつつ、鈴の状態を観察する。
しばらくして試合が終わったのか股間を抑えて戻ってくるアラスの姿があった。
マキナは何が有ったか想像してみたがどうしようもないことなので破棄したのである。
そしてアラスはまた同じ女性にナンパを始めていた。
マキナもまたかと言いたくなるほどの男だった。
「マキナ闘士とアーム・スミス闘士はリングへ上がってください。
「私か。」
横では鈴がアームを応援していた。
「アームさん頑張ってください!」
「ああ、頑張ってくるよ。」
そう言うとアームはリングへ上がっていった。
続いてマキナもリングへ上がっていく。
司会が何やら言っているがマキナは目の前のアームだけを見ていた。
マキナは一つ気になっていたことが有った。
それは。
「なぜあんな非効率な魔力の纏い方をしているのか。あれでは魔力が逃げてしまう。」
そんな疑問を抱えていると試合が始まった。
“戦闘モードへ移行”
“視覚装置ハイスピードモード”
“駆動プロファイル変更:近接戦闘モード”
最初はアームが槍で攻撃してきたがそれを全て躱す。
今のマキナにとってアームの動きはスローに見えるのだ。
筋肉と目の動きで次の一手がどこに来るか予測できる。
後は体の性能を活かし高速で躱すだけである。
「そんなバカな。この早さはミミ以上だぞ!」
槍の間合いに素早く入り込むと何もできなくなるため後退するしかなくなる。
マキナはそうやってアームを少しずつ確実にリングアウト寸前まで追い込んでいく。
「くっもう後が!」
アームが槍を振るうタイミングでマキナは体を捻らせながら垂直にジャンプする。
そうして槍を避け空中回し蹴りにてアームをリングアウトさせたのであった。
「怪我はなさそうね。」
“敵性反応消失、モードを通常モードへ移行します。”
そう言うとマキナはリングから降りていったのである。




