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デウス・エクス・マキナ


"再起動完了”

"ハードウェアエラー”


「うっ…な、何が…。」


マキナは起き上がろうとしたが何かがおかしいことにがついた。


「え?」


"右腕部大破、左脚部修復、使用不可”


マキナは表示されている内容に目を通すと右腕を見た。そこには炭素繊維で出来た服ごと腕が無くなっていた。


「う、うわ!」


驚くのはまだ早かった。次に目に入ってきたのは折れ曲がり、軸の金属の棒が人工皮膚から折れて飛び出している状態が目に入った。


「う…。」


更に太ももの中程からありえない方向に曲がっており、そこも折れていることに気づいた。


「クソ…皆は…。」


マキナが当たり一帯を見渡すと城が跡形もなく消え去っていた。

そして周辺に有った家さえも吹き飛んで居る。


そして3人を発見した。


「スキャン!」


3人の状態を確認すべく直ぐに体を調べ始めた。

皆生きてはいるが、アリスに至っては全身打撲と骨折が見受けられる。

ミルフィーとネザリアはアリスに守られたのか、軽い打ち身で済んでいるが気絶してしまっている。


「今、そっちに行くからね!」


マキナは動く左腕と右足を使い徐々に三人の元へ這いつくばって行く。


「あと少し…あと少し…!」


残り二メートルぐらいだろうか。そこまでやってきた時魔力反応が増大し始めた。

城が合った場所の空を見上げると邪龍が再びドラゴンブレスを放とうとしていた。


「あ、あ、あ、み、皆!起きて!早く逃げて!」


マキナは必死に三人の元へ移動すると左手でネザリアやミルフィーを揺すったが反応は無く、気絶したままだった。


「このままじゃ…このままじゃ…!」


邪龍の魔力はやがてマキナの計器の限界を越えていく。

またあのドラゴンブレスが放たれるのも時間の問題だろう。


「どうしよう、どうしよう。これじゃ守れない!守れないじゃない!何が神だよ!もっと…もっと、私に力があれば皆を守れるのに…!皆を守りたい。守りたいんだ!大切な仲間を守りたいんだ!もう一度あの楽しかった日々を!」


そして邪龍からドラゴンブレスが放たれた。




“コードDEM最終プロテクトが解除されました。”





【え?ここは?】

"ようこそ、おいでくださいました。”

【何時ぞやのAIじゃない。今更どうしたの?】

"マキナ様は見事最終プロテクトを解除されましたのでその説明にお呼びしました。”

【今頃解除されても、もう…。】

"貴方の強い意思、仲間を守りたいと言う強い気持ちが最終プロテクトの解除キーでした。”

【そうだよ…。仲間を、アリス、ミルフィー、ネザリア。皆守りたかった!でも私には力が足りない…。】

"今ならこの力を使えるでしょう。私より本人から話してもらったほうが良いと思われますので私はここでお別れです。”

【え?どういうこと?】

"やあ、マキナ。いや、鈴木 舞か。”

【この声は最初の音声の人…。】

"そうだ、今回はDEMに保存された私の一部が君に力の説明をする。”

【力?】

"そうだ。世界を統べる力だ。”

【世界を…統べる…?】

"今の君の力は到底本物の神には及ばない。しかし、このシステムを使えばそれさえも凌駕できる。”

【え?】

"システム名 WLCS 細かい説明は省こう。これを使えば君は世界の理を理解することになる。”

【…貴方はそれだけの知識を持ちながらどうして地球を、世界を救わなかったのですか?】

"私がこのシステムを組み上げた時には既に遅かったのだ。これも使えばわかることだ。”

【…わかりました。それでこの力の注意点はありますか?】

"そうだな。それだけは言っておこうか。物事をあまり深く知ろうとするな。”

【それだけですか?】

"ああ、それだけだ。これは重要な事だ。物事を深く知ろうとすればあらゆる因果に引っかかり、それだけ情報量が増えていく。結果がどうなるかわかるな?”

【わかりました。】

"システムの使い方は使えばわかる、では健闘を祈るよ。”

【はい。皆を守って見せます。】





マキナは現実に戻された。

目の前にはドラゴンブレスが迫って来ている。

しかし、マキナは絶望はしていなかった。

その目には確固たる意志が宿っている。


「システム、WLCS起動。」


"WLCS -World Line Connection System-”


その時マキナは不思議な感覚に陥った。

まるで自分が世界と繋がったかのような感覚。

そして全てが私の中で満たされる様な気持ちに。


「――――――――――――。」


何かを紡いだ。

その瞬間辺り一面全てを破壊するドラゴンブレスがマキナに衝突した。






WLCS -World Line Connection System-

ワールド ライン コネクション システム


魔術、空間跳躍モジュールを使用しマキナを世界線から独立させ、直接マキナを世界線に接続する。

この状態のマキナは無限の魔力、可能性を扱うことができる。

ただし、その世界線に接続するため違う世界に移動すると世界から切り離される。

世界線に接続されたマキナは世界の理を知ることになる。

また、世界線に接続された状態では一部機能に制限がかかる。

それは過去視、普遍的無意識領域へのアクセス。

世界線には過去とすべての人の情報が保存されているため、それを処理しようとすれば例えマキナであろうとオーバーフローを起こしてしまう。


また、このシステムの一部である可能性を操る事は世界線に負荷を掛けるためあまり使用はできない。


可能性とは並行する世界線から"起こったであろう可能性”をこの世界に反映させる事。

ただし、大いなる分岐、世界線上の生物の死を覆すことは出来ない。

これを行った場合、可能性の世界と反映した世界は対消滅を起こす。



世界とはひとつの可能性から始まり、様々な結末を迎える。


始まりの世界はビッグバンで出来た世界。

そこから数多の可能性に分岐して行く世界。

これを世界線と称する。


世界線は大樹のように枝分かれしている。

時にその大樹の一部は折れてしまう時がある。

そこから伸びている世界は終わって(・・・・)しまう。

終わってしまった世界は未来、過去が永久に失われてしまう。


なぜ世界が終わってしまうのか。

それはその世界線に多大な負荷がかかるためだ。

有る時その世界に"歪み”が発生する。

それは人々の負の感情を糧としてその世界の生物に寄生しその世界に具現化する。

具現化したそれは世界線に膨大な負荷を掛ける。

その結果その世界は、世界線は終わってしまう。


そう。マキナの世界のように。


マキナの世界は魔術によりすべての生命が絶滅した。

それにより世界線に掛かる負荷は一時的に止まったのだった。

しかし、世界を超えるということは一時的に世界に穴を開ける行為だ。

Unknownの出現により負荷がかかり世界の修正力が失われたマキナの世界はその瞬間に折れて(終わって)しまった。


そもそも、Unknownとはなぜ生物に寄生するのか。

生物は膨大な因果を持っており、世界線と共にしている。

この性質から世界の歪みとも言えるUnknownは生物に寄生する。

Unknownは宇宙すべての生物に寄生するため、惑星の生物、Unknownを消し去ったとしても侵食を一時的に遅らすことしか出来ず、何れ世界は終わる。


終わった世界についてだ。

終わった世界は未来過去がなくなる。

それは世界が終わり、世界線が折れてしまうからだ。

折れた世界線はすべての時が止まり、その世界線へ移動することは出来ない。


次に転移の本質。

元々空間跳躍、転移魔法は座標を交換するだけのものだけではない。

これは魔力により世界を騙して元々そこに居た(・・・・・・・)っと世界に認識させるのだ。


世界を騙した結果、騙した世界を修正するために世界の修正力が働く。

それにより空間跳躍や転移魔法が完了する。

世界の修正力はその世界線に少なからず負荷を掛けるのだ。


同じ世界内で転移する時にも負荷が掛かるのに世界線を超える転移は通常の何十倍もの負荷を掛けてしまう。


通常は世界を騙すだけだが、これは世界に穴を開ける行為である。

更にあらゆる物には因果が発生する。

世界を超えるということはその世界に発生していた因果をなかった事にすることになる。

これは世界線に多大な負荷を掛けることとなる。


結果がマキナの居た世界の終わりである。


もちろん移動先の世界線にも多大な負荷が掛かるが、通常状態の世界線であれば世界の修正力により元から存在したと処理される。


マキナの世界と異世界のUnknown。

これには違いがある。

それは自然発生と人工発生だ。

異世界のUnknownは負の感情を元に生物にUnknownを植え付けている。

負の感情とは世界線に歪みを与える。

そこから抽出されたのが異世界のUnknownであり、ある程度制御可能な物。

このUnknownは少なからず世界線に負荷を掛けるが、倒してしまえば世界の修正力により問題はない。

そもそも因果を持つ物はすべて世界線に記録、保存され、世界線が分岐する際にそれらが分岐に作用される。


大いなる分岐


世界線が無数に分岐する際のことを示す。

例えて言うならば、このAとBの可能性を持つ世界線では第三次世界大戦が起こりそうだ。

しかしAの世界線では戦争は回避される。Bの世界線では戦争が勃発する。

この世界単位での出来事を大いなる分岐と言う。

この大いなる分岐はどうあがいても変えることが出来ない。


世界線のバタフライ効果


バタフライ効果とはカオス力学で使われる物である。

極めて小さい誤差が次第に大きな誤差へとなる事を指す事だ。


マキナが異世界に移動したことにより、異世界の世界線ではバタフライ効果が発生した。

本来存在し得ない者が異世界の世界線に入り込んだからだ。

それは最初は小さい影響だったが次第に大きくなり、大いなる分岐へ至る可能性が生まれる。

例とするなら最初のアインスでの出来事だ。

マキナが異世界に居て間に合う、マキナが居世界にいて間に合わない。

この大いなる分岐が存在する。

しかし、もしマキナが居なかった場合は分岐は発生せず、アインス軍は全滅しアインスは攻め落とされていた。


神々の誕生と消失。

神々は元々世界線には記録されておらず、存在すらしなかった。

人々は不幸、絶望から逃げるために自身を助けてくれる存在"神”希望を創造した。

数ある世界線で"神”と言う存在が知的生命体で認識された結果、世界線上に神と言う存在が定義された。

世界線に定義、記録された神々は人々の前に現れ時に争い、祝福を与えた。

しかし、ある時を境に神々は世界線から消えてしまった。

その為すべての世界から神と言う存在が消えてしまったのだ。


それは神を生んだ原因でもある人々の感情だ。

神に祝福される者、されざる者。

神を生み出した希望を恨み、憎しみが上回ってしまったからだ。

そこから生み出された"邪神”はすべての神を屠り、自身の力が一番強い場所(普遍的無意識)へ住み着いた。


神とは人々の希望により世界に創造され、人々の認識により世界に具現化することができる。しかしその邪神は人々からは正確に認識されておらず、世界に具現化出来ない。


しかし、神々の記憶と言うものは世界線に記録されているため無くなることはない。




そして今、世界線に直接接続されたマキナは世界の理へとたどり着いた。

しかし、過去視、普遍的無意識領域へのアクセスはシステムによりロックされているようだ。

だが世界の仕組みは理解できた。



「さぁ。再び始めようか…。」



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