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災厄の復活

翌朝いつもより早い時間に目覚めると既にアリス達は起きていた。


「あら?二時間も早く設定したのにもう起きてる。」

「それはそうよ。今日は厳しい一日になりそうね…。」

「私…がんばります!」

「私達も頑張るよ~。」

「そっか。じゃ、頑張って今日を越えよう!そしてまたのんびり冒険しようね!」


四人は決意を明らかにし、今日という日を超えるべく立ち上がった。

宿の裏手に回るとダンリックに挨拶をし、アインスへ転移した。

アインスの町並みは国王から御触れが有ったのか露店一つ出ていない。


そして街中央の広場には冒険者達が集まっていた。

皆カーディに向けて出発するようだ。


マキナ達は更に歩みを進めアインス城前までやってきた。

そこには王と騎士たちが立ち並んでいる。


「国王様。」

「ん。おお、来てくれたか。これからカーディに向けて進軍するところになる。」

クォーツィは後ほど合流するそうだ。」

「なるほど。国王様一つ言いたいことがあります。」

「なんだね?」

「Unknown…黒い化け物がもし居たら絶対一対一で戦闘しないでください。」

「なぜだ?」

「たとえるならばその化け物は一体でWS並の体力や攻撃力があります。騎士など殴られたら一発で肉塊です。」

「…なるほど、分かった。騎士たちには私から伝えておく。」


そして騎士たちに国王からの演説が始まった。

更に黒い化け物に注意するようにとも有った。


騎士たちは最初は黒い化け物とはなんだと言った表情をしていたが国王の話を聞いて身を引き締めていた。


そしてアインス軍と冒険者の進軍が始まった。


時を同じくしてクォーツィでも新米が多いが、進軍を開始した。

始めての戦争に恐怖や緊張を覚えている騎士も多く、場の雰囲気に飲まれないか心配だったが、国王がなるべく新米兵士は先輩騎士と行動させるように認め恐怖の感染は起こらなかった。

震える新米を先輩が支え、奮い立たせる。

そんな関係を築かせていた。




一方スペルチェでは他の国とは違う甲冑を装備した騎士たちが隊列をなして歩いていた。

剣の王が指揮する軍のためか剣を携えている騎士が多いようだ。

そして鎧は剣を振るう腕の外側、そして胸当てと腰、足の一部分だけを防御するような形になっている。

機動力に優れている反面防御力は無さそうだ。


そして後方に居る弓を持っている兵士の矢は一風変わった作り担っている。

鏃の代わりに丸い筒が付いているのだ。

これは火薬が詰まっており、衝撃と同時に爆発し相手を吹き飛ばす役目が有るのだ。

その為弓も少し大きくなっている。

魔法使い達も全員が魔石がつけられている杖を持っている。

スペルチェの軍は色々と金を掛けているようだ。



そしてマキナ達はアインス軍が進軍する後ろで冒険者に混じって進軍していた。

しかし、マキナは先日のことが気になっていた。

"私達はカーディ王城で待っている。ただし気をつけるようだな、お前たちを本気で殺しにかかる。お前の言うUnknownでな。 ”

そう、この言葉だ。

つまり私達がここに居るとUnknown化した魔物や人間が襲ってくることになる。

普通の人間や魔物なら騎士や冒険者で何とかなるが、Unknownとなるとそれは難しい。


規模にもよるが、あまりにも数が多いとこちらが全滅してしまう可能性がある。

もちろんマキナの武装なら百や二百程度なんてこと無いのだが、相手はUnknownを送り込んでいた。

多少なりとも制御できると思っていいだろう。もし、空からUnknownを落とされたり横から奇襲された場合マキナの使える武装は限られてしまう。


マキナはそもそも生物、人との連携を前提に作られていないのだ。

マキナがイージスシステムとして機能し、戦場に投入された無人機とデータ・リンクにより戦闘をすることを視野に入れられて作られたのだ。


故にマキナの武装は人の集団戦になる場合使用不可になってしまう。

AVAの弾丸にあたった時には飛散なことになってしまうからだ。


唯一使えるのが高周波ブレードである。


「(ここは早々にカーディの中核に侵入して一気に叩くほうが被害が少なくて済みそうかな…。)」


そうマキナが考えているとアリスが話しかけてきた。


「マキナ?どうしたの?」

「…ちょっと先に行ってくる。」

「え?」


ATS -フォトンウィング-

ATS -高周波ブレード-


「ちょっと!マキナ!待ちなさい!」

「マキナさん!?」

「後で合流しよう!先に行ってるから!」



そう言うとマキナはアインス軍の進軍を追い越し一人でカーディ王城へ向かっていった。


「あのバカ!なんで一人で行ってるのよ!」

「もしかして、説明に有ったUnknownを引き付けるため…でしょうか。」

「そうだとしてもなんで!」


アリス達の混乱は直ぐに国王の耳まで届いた。


「何?マキナ殿が先に?そうか、わかった。騎士たちよ!進軍速度をあげるぞ!」


そう言うと騎士たちの歩く速度が少しだけ早くなった。

それにつられて冒険者達の速度も上がる。


「待ってなさいよ、マキナ。追いついたら殴るからね。」

「私も一発叩かせてもらおう。」

「私もです!」


アリス達はマキナに再開するためにカーディに向けて進軍するのであった。



その頃マキナはカーディの近くまで来ていた。

何故かカーディ付近は厚い黒い雲で覆われ日がさしていなかった。

ズームすると大量の騎士と大量の魔物で辺り一帯が埋め尽くされていた。

恐らく国の男たち総出だろう。

魔物たちは人を襲うこと無くただその場で待機している。

洗脳魔法で操られているのだろう。


しばらくするとマキナはその上を飛び越えカーディの王都上空へ侵入した。

その時だ。

厚い雲から飛竜型Unknownが多数出現した。

Unknownは一斉にマキナに襲いかかる。


「邪魔をする奴は一匹残らず駆逐してやる!」


"対象を補足 数二十”

"戦闘モードへ移行”

“視覚装置ハイスピードモード”

“駆動プロファイル変更:近接戦闘モード”


マキナは高周波ブレードを強く握ると飛竜型Unknownに向かって斬りかかった。


隔壁さえ切り裂く剣が空を舞うUnknownに振り下ろされる。

剣は意図も簡単にUnknownを切り裂く。

確実に殺すために頭だけを切り落としていく。


残り十九匹に囲まれているマキナのディスプレイには常に警告を知らせるアラートが点滅していた。


Unknownは前からも後ろからも迫ってくる。

それを躱しつつ、頭を切り落としていく。


Unknownは同士討ちをなんとも思わないのか味方同士が武器である牙や鋭いくちばしを激突した際に突き刺してしまっている。


「空中戦はやりにくい!私の世界のUnknownには飛行型は!…いなかったからね!」


"対象を再補足 数八”


「あと少し!」


余裕が出てきたマキナはUnknownの頭を切り落とす速度を上げていく。

やがて二十体居たUnknownは全て頭を切り落とされ地に落ちていった。

Unknownと言えども頭を切り落とされてしまっては生きてられない。

地上に民家が有ったがしょうがないことだった。


王都の上空で戦うということは少なからず王都に犠牲を出すということだ。

マキナは落ちた先に人がいないことを祈りながらも王城の最上階へ向けて飛んでいく。


相変わらずテラスに着地するとフォトンウィングを解除し、中に侵入した。

そこにはカーディの国王とみられる男性と羽の生えた男女が居たのだ。


「ようこそ、我がカーディへ。死を持って歓迎しよう。」

「ククク…仲間を危険に晒すまいと一人で来たのだな。懸命な判断だ。お前があのままあの場所に居たらUnknownを突っ込ませる予定だった。」

「もう!計画が潰れに潰れるんだからいい加減にしてよね!」


ATS -魔導式LSR-


魔導式LSRを取り出すと一瞬にして狙いをつけ引き金を引いた。

貫通力の高い七十口径の魔弾が羽の生えた男へ直進する。


が、甲高い音をたてて魔弾は止められてしまった。


「なっ!?」

「少しは落ち着け。言い忘れていたがこの階段を境に俺たちの特別製な結界を張ってある。機械の神、お前専用のな。」

「私専用?」

「そうだ。ちょっとやそっとじゃ壊せはしないぞ…さてここからは観客に踊ってもらおう。」


男がそう言うと階段からUnknownが大量に上がってきたのだ。


"対象を補足 数八十”


「クッ。こんな狭いと銃は使えないな…なら剣で!」


ATS -高周波ブレード-


マキナがUnknownに向かい剣を構えると男が声を出した。


「お前がそいつらの相手をしている間に俺たちは計画の最終段階へと進ませてもらう。」

「何をするつもり?」

「この男を依代として次元の狭間に葬りされた歪を復活させる。こいつはそんじゃそこらの歪とは違うぞ。そして俺たち自身が人柱として混ざることによりその化け物を制御する!」

「なら私はそれを倒すのみ!」

「機械の神よ、それができるかな?世界の理すらわからないお前が。」

「何を意味のわからないことを…。」

「やれ。」


その言葉と同時に前にいたUnknownに数体が襲いかかってきた。


"戦闘モードへ移行”

“視覚装置ハイスピードモード”

“駆動プロファイル変更:近接戦闘モード”


マキナは冷静に一匹ずつ頭を落とし倒していく。

しかしその間にも計画は進行し徐々に時間がなくなっていく。


倒していくにつれてマキナに一つの疑問が湧き上がった。

この大小様々なUnknownは何を素材にして作られたのか。

先ほどのUnknownは飛竜種を元に作られたのだと用意に想像できる。

ではこの二足歩行型のUnknownは?

元の世界のUnknownと似ている。

そしてあの時クォーツィで出会ったUnknownは?

今カーディに居る人は?

男は皆戦争に出ている。

女、子供、老人はどうなっている?


「ま、まさか…。」


マキナはそれでも剣を振りながら声を出す。


「お前!まさか!女性や子供、老人をUnknownにしたな!」

「正解だ、よくわかったな。お前が殺しているのは元人間だ。」


その言葉は少なからずもマキナの思考に影響を与えた。

ディスプレイに思考系の警告が表示される。

マキナのシステムは戦闘に支障を及ぼす危険性を判断し、体のコントロールをマキナの意思から奪いシステムが行動を始めた。


「っ!」


体が勝手に動き出してマキナは一瞬焦ったがディスプレイには警告が出ている。


"警告 思考系に不安定指数が検知されました。戦闘に影響をおよぼす可能性が有るため制御を目の前の脅威殲滅までシステム制御に移行します。”


「(そうか…。所詮私も人間だったんだね。)」

「何のためらいもなく元人間を殺すか!神と言うより悪魔だな!ハハハハハハ!」


"対象を再補足 数六十”

"増援を確認 数百二十”

”魔術式を発動 カタストロフィー 発動”


マキナの目の前に見慣れた魔術陣が出現し端から端までのUnknownを魔砲で薙ぎ払った。

その衝撃で城の一部が崩落し始めた。


「(でも私はマキナ。そう、デウス・エクス・マキナ。Unknownを倒すために生まれてきた。)」


"増援を確認 数十”

"増援を確認 数三十”

"ATS -魔導式AVA-”


マキナの手元に魔導式AVAが転送されバレルが回転を始めた。

そして階段から次から次へと登ってくるUnknownの集団に魔弾が放たれた。

Unknownは登ってきた瞬間に魔弾に貫かれ物言わぬ肉塊となって行く。


"増援を確認 数十”

"増援を確認 数五”


「(そうだ。あの時覚悟を決めたじゃないか。)」


"マキナでいい。これからはマキナという機械でありながらも舞として生きていく。 ”

"大丈夫。私が守る。この体、この名前、作られた意味に誓って。 ”

"まだ終わってなんかいない。私は私の創られた意味を今ここに示すんだ! ”


「(覚悟したんだ。私は…私は…!マキナとして生き、舞としても生きるんだって!)」


"増援なし。殲滅を確認。”

"制御を戻します。”


「だから私は迷わない。」


そう言葉を紡ぎ、前を見る。


「ククク…面白い物を見せてもらったよ。」

「それはどうも。」

「でも遅かったな。今ここに災厄の歪が復活する!」


その瞬間世界に穴が開いた。

穴からはどす黒い何かが流れ落ちてきた。

それはカーディの国王を包み込む。


「ハハハハハハ!さあ世界の終わりの始まりだ!」

「皆死んじゃえ!アハハハハハハ!」


そう言うと二人は何かの魔法を発動しながらその黒い塊に手を触れた。

その瞬間膨大な魔力と衝撃波が城の屋根を吹き飛ばした。




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