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食べ過ぎ、やり過ぎ注意

「で、どういうことかしら?」

「それは騎士不足を補うために人集めをだな…」

「そのために私達を使ったのかしら?」

「最初はそんなつもりも闘技大会もなかったんだ。ただ、お前たちが受けた依頼の報告が入ってな。それとこの間の一件を使って人を集めようと…。」

「はい。」


アリスが手を出した。

国王は理解できずに手を見ている。


「は?」

「渡すものあるんじゃないの?」

「え?あ、あぁ。謝礼か。今持ってこさせ―」

「ちっがあああああう!」


アリスが叫んだ。

それを聞いていたマキナたちは呆れ顔になっている。

国王たちは何事かとアリスを凝視していた。


「お金?そんなものより食材!料理!食べ物持ってこーい!」


静まり返る玉座の間。

国王王妃、近衛騎士団、騎士、マキナたち。

皆がアリスを見ていた。


「…そういうことだからよろしく。」


ミルフィーは頭を抱えながらそう答えた。


「あ、あぁ。料理だな?料理長に最高の料理を作らせよう。」

「やったあああああぁぁぁやっほおおおおおぉぉぉい!料理だああああぁぁぁぁ!」

「で、だ。マキナよ。闘技大会でてくれないか?」

「ん~?別にいいけど。ミルフィーたちは?」

「私は反対よ。」

「私もちょっと…。」

「(これは…計画がずれてしまう。こうなったら…。)」

「(ナハト…また貴方は変なことを考えて…。)」


国王はアリスの方を一瞬見るとこう提案した。


「全員出場してくれたら最高級の食材を与えよう。」


そう言うと、騒いでいたアリスがピタリと止まりマキナたちの方へ振り返った。


「闘技大会…出るよ!!!」

「よくぞ言ってくれた!マキナ一部免除登録(シード)、ミルフィー、ネザリア、アリスは通常参加で登録しておくぞ。」

「ふふふ。私の食材…いやっほぉぉぉぉ!」

「はぁ…」

「ど、どうしましょう…」





その夜、大食堂にて国王、王妃を交えた食事会が開かれた。

アリスの前には他とは比べ物にならない料理の山々。


アリスは恍惚の表情を浮かべている。


「お前たちの連れはよく食べるな。」

「…そうですね。いつものことです。」


ネザリアとナハトが言葉を交している間にアリスは順調に食べ進めている。

すでに半分の料理を食べ終えている。


「美味しい。美味しいよぅ。」

「【やれやれ…】」


フェンリルさえ呆れるアリスの食欲。

一体食べたものはどこへ消えているのだろうか。


この世界よりよっぽどファンタジーである。


「これ美味しいね。」

「そうね。さすが王城の料理ってだけはあるかしら。」

「私達ってなんでこんなに王族に会うんだろうね?」

「知らないわよ。」

「ミルフィーなんてすっかり慣れちゃって。」

「なんかマキナと居たらどうでも良くなったわ。」

「むむむ。何その言い方―。」



「すみませーん!おかわりお願いします!」

「えぇ!?」


アリスの常識はずれな事にネザリアが驚いていた。


「まぁ、たくさん食べることはい良いことだ。立派に成長するだろう。」

「貴方…?どこ見て言ってるのかしら?」

「……なんでもない。おほん!闘技大会は三日後開催される。それまでに英気を養うようにな。」

「はーい。」

「どうせマキナが優勝して終わりそうね。」

「いやぁ。わからないよ~。私より強い人いるかも!」

「それはもはや人の形をした何かよ…。」

「なにそれひどい。」




「今日はごちそうさまでした!」

「ごちそうさま?」

「マキナの国の食後の挨拶みたいなものよ。」

「ほう。そういうものがあるのか。」

「ついでに食べ始めるときは”いただきます”って言うんですよ。」


国王と話していると食堂からアリスとネザリアが出てきた。


「食べ過ぎた。ちょっと皆、ゆっくり帰ろう…。」

「アリスさん、大丈夫ですか?」

「【馬鹿者が…】」


食べ過ぎにより動けなくなったアリスをネザリアが支えている。

その後ろでは疲労からかぐったりとしている使用人とコックが立っていた。


「しかしよく食べたな。あの量の食べ物はどこに消えてしまったんだ?」

「さぁ?」

「それじゃ、私達は帰るとするわ。」

「あぁ。闘技大会の件、まかせたぞ。」

「わかってるわよ。全く。」

「もう国王に対する礼儀も何もないね。」


マキナ達は国王と別れ夜の街へと戻っていった。


「で、貴方。先ほどのことですが。」

「な、なんのことだ?」

「貴方アリスさんの胸を見ながら何か言っていましたよね?」

「いや、あれは…」

「ちょっと来てください。寝室で話しあいましょう。」

「あ、ちょっと勘弁して下さい。あ、そこ引っ張らないで!」

「…国王様…。」


ぐったりとしていたコックや使用人が憐れむような目で国王を見送った。


「料理長…この食器の山どうしましょうか。」

「どうしましょうも何も、片付けるしかないだろう…。」

「…ですよね。」


アリスの座っていた位置には三十センチ近くつまれた食器の山々が合った。

それに合わせ全員分の食器を足すと相当な数になる。


次の日ぐったりとした使用人と料理長、国王が見つかったのは言うまでもない。




闘技大会の知らせは各国まで届いていた。

各国の冒険者の中にはこれに興味を示すものがいた。

冒険者以外にも興味を示すものはたくさんいた。

自分の腕試しに声を上げる騎士、家庭のために出場する者、国へ取り入ろうとする浮浪者。


その者達は一斉にクォーツィを目指した。




「うーん!いい朝!今日も元気に食べよう!」


アリスである。


「【朝から気分がよさそうだな。】」

「【あったりまえでしょ!昨日あんなに美味しいものをお腹いっぱい食べれたんだから!】」

「【お前は食べることにしか興味がないのか?】」


フェンリルと話しているとアリスの声に反応するかのようにミルフィーが起きたのだった。


「うるさいわ…朝からなんでそんなに騒がしいのよ。」

「ごめんごめん。」

「…闘技大会出るからには優勝狙うわ。」

「お?ミルフィーやる気満々だね。」

「ってことだから、練習試合するわよ。」

「えぇ?いきなり?…もしかしてさっきの事で怒ってる…?」

「さぁ、マキナ起こして行くわよ。マキナ起きなさい!」

「はぃ?おはようございます。」

「ほら!ネザリアも起きて!さっさと行くわよ。」

「ん…なんですか。まだ朝早いですよ…。」

「マキナ。クォーツィの外に転移して。」

「了解。」


“空間跳躍起動”

“跳躍先確保完了”

“魔導炉出力上昇”

“空間跳躍開始”



一瞬の視界のブレと同時にマキナ達はクォーツィとアインスを結ぶ街道へ移動していた。


「ここならいくらでも暴れても平気ね。」

「あのー。ミルフィー?」

「さてお仕…闘技大会の練習試合を殺るわよ。」

「何かおかしい!」


ミルフィーを先頭に街道から外れた広い平地まで移動していく。


「【ねぇ?これ絶対怒ってるよね?】」

「【あぁ。確実に怒ってるな。】」

「ね、ねぇ?ミルフィー?さっきは―」

「アリスはそこで止まりなさい。マキナとネザリアは少し離れてくれるかしら。」


そう言うとミルフィーはアリスと距離を取っていった。


「【言いそびれちゃったよぅ。】」

「【まぁ。頑張れ。】」

「【うぅ。絶対怒ってるよぅ。】」

「行くわよ!」

「はひ!」

「<シャイニング・レイ>」

「て、手加減してよね!」


アリスは飛来する光の槍を軽く避けるとミルフィーの方へ走りだした。


「【あー!もう!フェンリル!】」

「【いけ!アリス!】」


アリスの右手にフェンリルの爪が構成されていく。


「やああぁあ!」


アリスはミルフィー目掛け、構成された爪を振り下ろした。


「<ミッド・シールド>」

「まだまだぁ!【左手!】」


アリスの左手に爪が構成される。

構成された爪をシールドへ突き刺した。


バリっと言う音と共に爪がシールドへ突き刺さった。


「離れなさい!<風を纏いた炎よ。ファイア・ランス>」

「っ!」


アリスは爪をクロスさせファイア・ランスを正面から受けた。

ファイア・ランスの勢いによりアリスは後ろへ吹き飛ばされた。

が、アリスには傷ひとつ付いていない。


「予想通りね。<ハイ・ファイア・ジャッジメント><ミッド・アース・クラード>」

「ちょ、ちょ!殺す気!?」


アリスは咄嗟にその場から飛び退いた。

次の瞬間にはアリスのいた地面からは青白い炎が立ち上った。

そして炎を超えて飛来してくる石の塊。


「追い打ち!絶対怒ってるよね!?…せい!」

「<ライトニング・エンチャント>そこね…!」

「!?…い”い”い”!」


アリスは飛来した岩を砕いたが、その後ろに隠れて飛んできていた矢に気付かなかった。

矢はフェンリルの鎧に弾かれたが、エンチャントされていた電気がアリスに流れ込んだ。


「し、痺れ…る!」

「<ライトニング・レイン>」

「!?グガっ…」


雷が雨のように降り注ぎアリスに直撃した。

アリスは先程の矢により体が痺れていた為動きが鈍っていたのだ。


「【フェ、フェンリル。アレ。】」

「【二回目だ。前よりは楽だろう。】」


「あああああああああああああああああ!!」

「さて、ここから本番ね。」


アリスは体から煙が立ち上っていたが、それを吹き飛ばすかのように白いオーラが立ち上った。


「いくよぉぉぉ!」

「来なさい。」


アリスは両足に爪を構成すると地面を抉りながら飛び出した。


「<ハイ・シールド> ・・・!?」


アリスとミルフィーの展開したシールドがぶつかると、シールドに波紋が起きた。


「まだまだああ!」


アリスはシールドにぶつけた両手を引き戻すと地面に足の爪を食い込ませ更に突きつけた。

爪は目にも留まらぬスピードでシールドに突き刺ささり、シールドを左右に裂いた。


「爪解除おおお!」

「グッ…!」


爪を解除した右手でミルフィーを殴りつけた。

ミルフィーは間一髪腕で体を守ることができた。が、数メートル吹き飛ばされてしまった。


「さすがの馬鹿力ね。<ヒール>」

「させるかぁぁぁあああ!」

「こっちのセリフよ!<暴風を従えし地獄の業火よ。ハイ・ファイア・ランス>」


跳躍し、拳を突き出してきたアリスにミルフィーは魔法を繰り出した。

「そんなもの!こうして…!」


アリスは左手の爪で目の前に迫る炎の槍に突き立てた。

2つの刃が交わった時大きな衝撃波が巻き起こった。


「くっ。」


ミルフィーは衝撃波で舞い上がった土煙で前が見えなくなっていた。


「<ウインド> ・・・!」

「終わりだ!」


土煙を晴らすと同時に無防備になったミルフィーの懐にアリスが飛び込んだ。

視覚に頼らずとも、強化された嗅覚によりミルフィーの居場所は匂いでわかっていたのだ。

そして土煙を晴らす時が絶好のチャンスだということも。


「っ!(一か八か!)」


ミルフィーは手のひらをアリスへ向けた。


「いまさら遅い!」


アリスはそのまま攻撃に移ろうとした。


「(シールドの要領で方向性のない魔力を圧縮…!そして開放!)喰らいなさい!衝撃魔術!」

「なっそれはマキナの…ぐっ。」

「うぐっ。」


ミルフィーは一か八かの賭けをした。

以前マキナに衝撃魔術の使い方を習っていたから使えたのだ。

マキナによる知識、ハイエルフの魔法の適正。これらが作用し、成功したのだ。


しかし、開放された魔力は全方向に放出されミルフィーまでも吹き飛ばしてしまった。


「いつ…失敗したけど、殴られるよりましね…。」

「決まったと思ったんだけどな。まさかマキナの使うとは思わなかったよ。」

「貴方の詰めが甘いのよ。<ウインド>」


ミルフィーはそう言うと弓を魔法で遠くの地面に下ろした。


「弓おろしちゃってどうするの?魔法勝負?」

「こうするのよ!」


ミルフィーは矢筒の中身をすべて空に放った。


「<ライトニング・エンチャント><ウィンド・ストーム>」


空に浮かんだ矢に雷が付加され、アリスへ一斉に襲いかかった。


「これは前の!【フェンリル!魔力借りるよ!】」

「【良いが、何をするつもりだ?】」

「【こうする!】アアアアアァァァァアアアア!」


魔法が不得意なアリスはフェンリルの魔力を用いてシールドを気合で展開した。

しかしそれはシールドとは言えず、魔力を使った咆哮。

咆哮が衝撃波となり、矢を撃ち落とす。


「五月蝿いわね…<ミッド・アース・ニードル>」

「ガッ!」

「<シャイニング・レーザー>」


貫通性の高い二つの魔法もフェンリルの鎧には効果がなく、吹き飛ばすだけに収まった。

しかし、アース・ニードルで空に打ち上げ、レーザーで吹き飛ばしたのだ。

どんなに硬い鎧でも衝撃は通るのだ。


「ふぅ。終わりかしらね。<ヒール>」







「あちゃー。アリス盛大に吹っ飛んだね。」

「そ、そうですね。アリスさん大丈夫ですかね。」

「うん。大丈夫。それどころかなにかやるみたいだね。」

「え?何かやるってどういうことですか?」

「見てればわかるんじゃないかな。」







「【フェンリル。】」

「【なんだ?】」

「【力借りるよ。】」

「【今更だろう……アリスまさか!】」


アリスは起き上がるとミルフィーに向かって歩き出した。


「あら?まだやるのかしら?」

「…。」


アリスは両手を空に向けて掲げた。


「コレガワタシノゼンリョク!」


アリスの手の中に十メートルの一振りの大剣が構成されて行く。


「っ!?<万物に宿りし大いなる力よ。すべてを切り裂く刃となり、敵を討ち滅ぼす斬撃となれ。我ハイエルフミルフィーが命ず。その力を今ここに体現せよ。エン・ボイド・スラッシング>」


ミルフィーの手の中に光さえも飲み込みそうな黒色の大剣が発現した。


そして二人はそれを同時に振り下ろした―。







二人が振り下ろそうとする頃


“警告 大容量の魔力を検知。”

「あ、まずい。」

「で、ですよね!」

「ちょっと止めてくる。」

「え?ま、マキナさん!?」


"ATS -フォトンウィング-”


「オーバードライブ。シールド出力200%」


二つの巨大な剣はお互いに交じること無く両手を広げたマキナに止められた。

もし、これほどのエネルギーを持つ物がぶつかった場合辺り一帯がすべて吹き飛ぶことになるだろう。


そのエネルギーを持った魔法を受け止めたマキナのシールドは若干の歪みが生じているものの、問題はなかった。


「ちょっと!私が居たから良い物を、もう少し考えて魔法使ってよね!」

「マキナ…私としたことが熱くなりすぎたわ。」

「…。」


マキナがアリスを見ると地面に伏せていた。

先ほどの一撃で力や精神力を使い果たしたのだろう。


「全く。次回から気をつけるよ~に!」

「わかってるわ…今回は…やりすぎた。」

「マキナさーん!大丈夫ですかー!」

「大丈夫だよー。ネザリアはミルフィーに肩を貸してあげてくれる?私アリス担ぐから。」

「わかりました。ミルフィーさん大丈夫ですか?」

「え、えぇ。少し…疲れたわ。」

「帰るよー。宿の中はずれる可能性があるから王都外に転移するよ。」

「わかりました。」


“空間跳躍起動”

“跳躍先確保完了”

“魔導炉出力上昇”

“空間跳躍開始”


「よっと。到着~。」

「便利ですね。」

「そうね。」


マキナ達は一瞬にしてクォーツィ王都前に移動した。

目の前ではいきなり現れたマキナ達に驚いている騎士の姿があった。


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