地竜討伐 その2
今回話し調整につき少なめ
“オーバードライブ発動 制限時間20分スタート”
マキナから青いオーラが立ち上る。
魔導炉で生産される魔力量が急激に上昇しているのがマキナのステータスから分かる。
マキナは迫り来るUnknown地竜を右腕だけで受け止めた。
若干後ろに押され、地面に足が食い込んだがそれほどきつい訳ではないようだ。
“ステータスを表示します。”
魔導炉出力12000m/s
身体強化 200%
冷却機構 100%
冷却魔術 オンライン
重量制御システム オフライン
装甲強度 120%増加
「ふーん。そういうことねぇ。」
Unknownはマキナを攻撃しようとしているが、頭を抑えられており攻撃を加えることができない。
マキナは抑えている手に魔力を集め始めた。
通常時より早くエネルギーが集まることを実感できた。
「あー。このまま吹き飛ばすと危なそう。」
たとえ森の中であっても誰かがいる可能性もある。横に発現させるのは危険である。
マキナはUnknown地竜を空に向けると衝撃魔術を行使した。
それはアインス対カーディで使用した衝撃魔術の比にはならないほどの威力だった。
爆音と共にUnknown地竜は衝撃波によりバラバラになってしまった。
そして空からはUnknownの血肉の雨が降り注ぐ。
「あー。血肉だらけに…。」
“オーバードライブ終了”
「うわ。通常出力に戻っただけなのにだるく感じる。この体になって感じることはない感覚だと思ったんだけどなぁ。」
マキナは気だるさと共に仲間の方へ振り返った。
アリスside
「さて、私が相手よ!」
「人間の女か…お前を倒した暁には性奴隷として飼ってやろう。」
「ばかじゃないの?やられるのは あ な た。」
「だとコラ!」
アリスはそっと目を閉じた。
「【アレ出来ると思う?】」
「【今のアリスなら出来るだろう。ただし気を抜くなよ。】」
「これでも喰らえ!」
そう言うとドラゴンブレスを吐き出してきた。
アリスは動かなかった。
そして直撃の直前に目を開いたの。
地竜は動けずに人間は即死したかと思った。
しかし、その予想は大きく外れることとなった。
目の前にいたはずの人間が居ないのだ。
居た後にあるのは地面を鋭いものでえぐったような後だけだ。
そしてドラゴンブレスが引き裂かれ、自慢の鱗までもが斬り裂かれているのだ。
「なっ!」
「ふーっ。ふーっ。コレ結構キツイね…。」
地竜が振り向くとそこにはアリスが居た。
しかし、いつものアリスではなかった。剣を先ほどの場所に置いたままである。
だが姿が少し違かった。
両手にはフェンリルの爪が現れ、足にもフェンリルの爪が現れている。
目は縦に割れ、猫の目と同じようになっていた。
「な、何だその姿は!お、お前人間か!?」
「ふーっ。ふーっ。私の今の状態ハ半人間半フェンリルってところカナ。【少しでも気を抜いたら持っていかれそう…】」
「【それはそうだ。我の魂の半分を共有しているのだ。当たり前のことだ。耐えてみせよ。】」
「は、半人間半フェンリル…!?そ、そんな存在が居るわけが!」
地竜は頭のなかではわかっていた。フェンリルの爪ならば自分の鱗などたやすく斬り裂く事ができる事自体。
しかし、たかが人間がその力を持っているのを否定したい気持ちのほうが大きかった。
「い、今のはまぐれだ!コレならどうだあああ!<母なる大いなる大地よ!その大いなる大地、その大いなる加護、その大いなる抱擁を持って我に答えよ!我望むは敵の滅殺! ハイ・アース・ロジング!>」
アリスの四方に土の壁がせり上がった。そしてそれは半球になるかのように閉じていった。
そして壁の一部が盛り上がり勢い良く内側に向けて凹んだ。
そう、内側に土の槍が繰り出されたのだ。
この魔法はまだ終わりではない。
この後対象を土の中に引きずり込むと言う工程が残っている。
「に、人間が調子に乗るからだ!」
地竜はこれで確実に倒したと思っていた。
しかし次の瞬間圧倒的な威圧が土壁の中から発せられたのだ。
「ひぃ!?」
魔法が終わる前に土壁にヒビが入った。
それは次第に大きく、全体を蝕むように広がっていった。
ついには土壁は崩れてしまった。
その中からアリスは歩き出す。
「アブなかッタネ。さすがフェンリルダヨ」
アリスには傷ひとつついておらず、付いているのは土埃だけだ。
「そんなバカな!」
「そろそろキツイカラコレでおわリ」
次の瞬間には地竜の腹にアリスの腕が突き刺さっていた。
爪先には地竜の心臓が刺さっていた。
「グガ…」
絶命したことを確認したアリスは半フェンリル状態を解いた。
「うへぇ…きっつい…」
「【よく頑張ったな。これからも修練を続ければ次の段階まで行けるぞ】」
「【お、お手柔らかにお願いします…】」
ミルフィーSide
「マキナはド派手に突っ込んでいったわね…。」
「おい人間よぉ?俺たちを誰だと思ってやがる?」
「さすがマキナと言ったところかしら。」
「おい。無視するな!」
「ん?あら?私のことかしら?」
「貴様…!殺してやる。」
「最初からその気でしょう?第一私人間じゃないわ。」
ミルフィーは最初から呼ばれていることをわかっていたがあえて無視していたのである。要は挑発である。
地竜はその挑発に乗ってきたのだ。
馬鹿にされた怒りにより他の地竜より強いドラゴンブレスを吐き出す。
ミルフィーはそれを見ながら一言つぶやいた。
「ハイ・ウォータ・シールド」
水属性の結界が展開され、それに土属性のドラゴンブレスが直撃するが、結界には傷ひとつ付かずに無効化された。
「なっ」
「<逆巻く水流よ。ウォーター・ブレード>」
ミルフィーの体に刻まれたハイエルフとしての証の一つで有る刺青が青く光る。
詠唱が破棄された複合属性魔法が地面を削りながら突き進む。
それは科学技術の水圧の刃ウォータージェットと同じ物だ。
本来距離が離れるほど水は拡散し、威力が落ちてしまう。
しかし、風のトンネルを作ることによりそれを防ぎ水圧の刃を維持する事ができる。
ミルフィーの放った魔法は地竜の体を鱗ごと切断していく。
「――――!!」
声にならない声を上げ、体を半分に切り裂かれた地竜は臓物を地面へばら撒きながら絶命したのだった。
「挑発に乗ってあんなに硬直が長い物使うから行けないのよ。」
ドラゴンブレスは放った後の隙が大きく、ミルフィーにそこを狙われたのだ。
結果がこれである。
油断大敵とはこの事である。
「さて、他は終わったかしら?」
ネザリアSide
地竜は何も言わずに武器である爪を振るってきた。
ネザリアはそれをバックステップで回避すると魔法を唱えた。
「<水よ!全てに宿りし物、その力個々に集い我の敵を打ち砕け!ミッド・ウォータ―・インパクト>」
ネザリアが杖を地竜に向け魔法を唱えると先端に付けられた魔石が青く光その先に水球が生成された。
それは勢い良く大きく膨れ上がり地竜へ襲いかかった。
水球は地竜の方へ破裂し、水圧が地竜を押しつぶす。
「う…ガァアア!」
地竜はその強固な体でそれを受けきり、再び飛びかかってきた。
「その程度でやられる我々ではない!」
「知ってます!<我を守りし盾をここに!シールド><風を纏いし煉獄の炎よ。その大いなる風炎渦巻き、螺旋を描く槍と成せし、我が敵を穿け!ミッド・ファイア・ランス>」
地竜が衝突と同時に無属性の結界はヒビが入った。
しかしネザリアにはそれで十分だった。
結界の後ろではミッド・ファイア・ランスが発現しており狙いを定めていた。
「結界ごと…撃ちぬいて!」
放たれたミッド・ファイア・ランスは砕ける寸前の結界をいともたやすく砕くと、地竜に吸い込まれるように魔法が叩きこまれた。
形状的に貫通性能が高いファイア・ランスは地竜の鱗を融解、肉を焼きながら貫通した。
「ガァ…な、何だその魔法は…」
「今なら!<炎よ!我汝を求めるもの。その高貴なる炎よ、気高き大いなる炎よ!その具現を我に示し、煉獄の炎を与え給え! ハイ・ファイア・ジャッジメント>」
肉を焼かれ、怯んでいた地竜の足元に青白い炎が立ち上った。
裁きの炎に焼かれ地竜は炎を鎮火しようと暴れまわるが次第に動きが鈍くなっていった。
「グガ…人間如き…」
地竜は喋った表紙に息を吸ってしまった。
地竜の肺を炎の熱が容赦なく焼き焦がしていく。
それが止めになったのか地竜は地面に倒れこみ次第に炭化していった。
「ふぅ…これがSランク…」
一方的に見えるがネザリアはこのチームの中でも一番弱い位置にいる。
他の3人がおかしいだけなのだが。
ネザリアが地竜を倒し終わると爆音のような音が鳴り響いた。
SideOut
「マキナ!」
「んお?ミルフィーどうしたの?」
「今の音な…何も言わなくていいわ。」
ミルフィーはマキナの姿を見た途端事のすべてが分かってしまった。
「(どうせ粉々に吹き飛ばしたんでしょうね。)」
そこに二人も戻ってきたようだ。
二人共やはり先程の爆音が気になっているようだ。
「マキナ―ってどうしたのその姿…」
「アリスも人のこと言えないよ。」
アリスも地竜の返り血を浴びているのである。
「アリスさんにマキナさんも血を洗い流したほうがいいですよ。」
「あー。そうだね。」
「私水出します。<水よ。ウォーター>」
ネザリアは発現させた水球をそれぞれの頭の上で放出した。
桶から水を被ったかのように水が流れ落ちる。
水の勢いで体についていた血肉が流れ落ちていく。
2、3回ほど繰り返すとすっかり綺麗になっていた。
「さて、綺麗になったら帰るわよ。」
「うん。帰ろー。」
「おなかへったー!食べに行こう!」
「あの、アリスさんその前にギルドに報告を…」
4人は王都へ向け歩き出した。
???Side
「ちっ。二体もやられたか。せっかく苦労してあそこから抽出したのに。」
それはルインとともにいた男だ。
「あれに飲み込まれると魔物以下の知能にまで落ちる。散々注意したのにな。
…しかし、研究もあと少しで完成する…その時は―」
SideOut
「あ”ー王都まで一日かかるんだったぁ…。私のご飯…」
「アリスさん頑張ってください!」
「あはは…そろそろ昼食に―」
「調理道具準備完了。マキナ食材!」
「アリス…いつの間に出したのよ?」
マキナはいつの間にか調理道具を広げていたアリスに残りのウルスの肉を手渡した。
アリスは怒涛の勢いで調理を始めたのだった。
その後マキナ達は森の中を歩いていた。
街の方角
「ふぅ…働いた後は食べるに限る!」
アリスは笑顔で言い放っている。
「そうですね。お腹も減るし言っていることはあっているのですが…。」
「そうね…。」
「アリスが言うと説得力が無いよね」
いつも何かしら食べ物に食い付いているアリス。
しかし人一倍スタミナを使うのはアリスである。
「えー。だってお腹減るしぃ…。」
「アリスは力使いすぎてるからじゃない?」
アリスはフェンリルに意見を聞いて見ることにした。
「【そうなの?】」
「【人間本来の領域を出ている。その副作用かもしれないな。】」
「そうみたい。」
フェンリルの力は本来人間には有り得ないものであり、それを扱うアリスはそれ相当の体力を消費していることになる。
力を使えば使うほど体力を奪われる。
そして体力回復のために食べる。
これでアリスの力の代償は補われている。
「大丈夫なんですか?」
「平気!平気!たくさん食べてるからね。」
昼食を食べ終わったマキナ達は王都へ向けて歩いて行ったのだった。




