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致命的なミス 異世界人パート

これは異世界の人のお話です。

マキナ視点ではありません。

その日は快晴で絶好の仕事日和だった。

年は15~18歳だろうか、軽鎧を着込み左の腰にグラディウスと呼ばれる剣を差している。

その少女名前はアリス・エルフォード。

アリスは冒険者ギルド ガーランド支部と書いてある建物の中へ入っていく。

そこはたくさんの丸いテーブルがあり、それを囲うように4つの椅子が置いてある。

奥にはカウンターが有り受付員らしき女性が立っているのがわかる。


「お姉さんこんにちはー」

アリスが気軽に挨拶をすると受付の女性はにこやかな笑顔をつくり挨拶を返してくれた。

「あら。アリスちゃんこんにちは。」

「”ちゃん”はやめてくださいって!」

「私から見ればまだまだアリスちゃんだよ。」

「だー!それやめてー!」


隣の職員は”またいつものが始まった”と、言う顔をして苦笑いをしていた。

少しの間言い続けた後アリスはついに諦めたのか仕事の話を始めた。


「…で、何かいい依頼ありますか?」

アリスの顔は真っ赤で少し息が切れている。

それほど”ちゃん付け”されるのが嫌だったのだろう。

「うーん。この商人の馬車護衛とかどうかな?」

受付の女性は全く息も切らしておらず、先ほどの言い合いの応酬はなかったかのようだ。

「馬車の護衛か~。それはどこまでの護衛?」

「次の街までみたいよ」

「よし。それ参加します。」

「は~い。アリスちゃん参加っと。」

受付の女性は羽ペンで羊皮紙に”アリス・エルフォード”と記入した。

他にも名前があるがそれは護衛に参加する人の名前だろう。


「…ありがとう。じゃ、行ってきます。」

「は~い。気をつけるのよ~。」


ギルドを出たアリスは依頼書に書いてあった待ち合わせ場所へと向かった。

向かう途中には露天商が立ち並び、親子連れの女性がものを買ったりしていた。通称 露天商通り。

中には薬を扱っている露店もあるらしく、冒険者らしき人が薬の効能について聞いていたりもしていた。


そして露天商通りを抜けるとそこは少し開けた場所で真ん中に剣を持った銅像が飾ってある。

その下に幌馬車と商人らしき男性、甲冑を着込んだ者や弓を持った耳の長い女性が居た。

きっとあの集団がこの依頼書のメンバーなのだろう。


アリスはその集団へと近づき商人らしき男性に声を掛けた。

「すみません。冒険者ギルドからこの依頼書をみて来た者ですが。」

そう言うと男性はこちらに目を向けた。

それを見たアリスは依頼書を男性へと手渡した。

「ふむ。君も私の依頼を受けてくれたのか。感謝するよ。」

男性は依頼書にサインを施し、アリスの方へ手渡してくれた。

アリスはそれを受け取った。サインにはダンリック・エドソンと署名が書かれていた。

商人の名前なのだろう。

「ダンリックさんですね。私はアリスと言うものです。本日は警護させて頂きます。」

「アリスさんですね。私達商人は戦えずいつも冒険者に頼ってばかりです。頭が上がりませんよ。あはは。」

「いえいえ。そんなことは無いですよ。」

「あはは。そう言ってもらえると助かる。」

他愛もない話をしているとアリスの顔に細い影が落ちた。

銅像の持つ剣の影がちょうどアリスと重なったのだ。

「ふむ。時間だな。皆さん出発します。本日は護衛よろしくお願いします。」

アリスや甲冑の人たちは歩きで耳が特徴的な女性は幌馬車の上へ。

どうやらそこで索敵や弓を射るようだ。


街の出口には大きな木製の扉があり幌馬車は一度そこで止まり、冒険者とは違う少し豪華な甲冑を着込んだ兵士がこちらに話しかけてきた。

「この先は魔物がでますから気をつけてください。」

兵士はそれだけ言うと先ほどと同じ位置へ戻っていった。どうやらお決まりの文句らしい。

それだけ聞くと幌馬車は再び動き出した。

街を出ると道はまちなかほどでは無いが石で舗装され歩きやすくなっていた。

しかし街から離れるにつれてむき出しの地面に変わっていった。

歩きの冒険者にとっては凸凹した石畳より地面の方が若干歩きやすそうだ。

幌馬車は冒険者の速度に合わせゆっくりと歩みを進めている。

幌馬車の上に乗っている女性は頻りに辺りを見渡し、異常がないか見ているのだ。

アリス達が気が付かない異変も彼女が気づいてくれれば直ぐに対処出来る。

気がつくと、気が付かないでは全く違うのだから。


日がすっかり登った頃そろそろ休憩しようかと商人が話を持ちかけてきた時だった。

上に登っていた女性が何かに気づいた。

それは背後の森の中から聞こえた”ドスン”という音と茂みに鈍く光る存在だった。


「進行方向右側の茂みに何か居るわよ!!」


その声が周りに響いた時冒険者達は一斉に剣を抜き商人は幌馬車の中へ入っていった。


「皆警戒を怠るな。」

甲冑の男が警戒を促す。

「茂みに射ち込むわよ。」

女性が弓を構え弦を引き絞る。

それに伴い弓がたわみ、キリキリと音がし始める。

そして射る。

弓から放たれた矢が一直線に茂みへと突き進み茂みの中へと消える。

それと同時に沢山の生物が茂みから飛び出してきた。


「ゴブリンだ!」

誰かが叫んだ。

「なんだこの数は!」

誰かが驚愕した。

「皆落ち着け!冷静に各個撃破するんだ!」

甲冑の人が冷静に他の冒険者へと指示を飛ばす。

リーダーシップを発揮してくれる人がいるおかげか困惑気味だった冒険者は落ち着きを取り戻し剣を握り直した。


「普通ゴブリンはあんなに群れないはず。なぜあんなにも。」

アリスがそう呟いた。

それが聞こえたのか馬車の上の女性は言い放った。

「群れてようが群れなかろうが殺らなきゃ殺られるだけよ。」

「それはそうだよね。よし!頑張ります!」

「その意気よ!」


アリスは剣を力強く握り直し向かってくるゴブリンに目を向けた。

そして2射目の矢が放たれ戦闘が始まった。

こちらの護衛冒険者の数は前衛8に後衛の1だ。

相手はぱっと見数えきれない程だ。


甲冑の人が剣を横薙ぎするとそれに斬られた数匹のゴブリンが血の海に沈んだ。

その隙を狙おうとするゴブリンが居たがもう一人の冒険者に切り伏せられた。

前衛はツーマンセルで行動しており互いの隙を埋めるようにして戦っている。

戦いが進むに連れ、剣の切れ味が血肉により落ち、足元は死体で足場が悪くなっている。


「後退!」

甲冑の人が叫んだ。

おそらく足元が悪くなってきたため足を取られないように下がるのだろう。

冒険者達は少しずつ下がりながら切り伏せていく。

このまま行けば勝てると誰もが思っただろう次の瞬間までは。

幌馬車の反対側の茂みから音がしたのを幌馬車の上にいた女性は耳にした。

振り返ると先程よりは少ないがこちらに向かってくるゴブリンの姿。


「反対側より少数のゴブリンの奇襲よ!」

そう言いながら弓を構え反対側のゴブリンへ射る。

その矢は吸い込まれるようにゴブリンの頭へ突き刺さった。

「各ペアは一人馬車の反対側の対処へ迎え!」

甲冑の人が叫び皆それに従った。

「くそ!こいつらなんでこんなに連携が出来るんだ!」

「知るか!逆に俺が聞きてえよ!」

冒険者の愚痴が怒鳴り声となって聞こえてくる。

アリスは反対側へ周り奇襲を仕掛けてきたゴブリンへ目を向けた。

既に軽鎧は血で汚れており、グラディウスには払っても落ちなかった血肉が少し付いていた。


「これを凌げば私達の勝ちよ!」

アリスは自身に言い聞かせるように叫び、ゴブリンへと向かっていった。

アリスによりゴブリンの体に一筋の深い切り込みが入った。

それは右肩から左太ももまでの斬り込みである。

それを受けたゴブリンは大量に血液を流し倒れ伏せた。

アリスは流れるかのように左へ振り下ろした剣を右へスライドさせる。

剣の線上に居たゴブリンはそれに斬られ絶命した。

が、切れ味の悪くなっていた剣がゴブリンの肉に挟まり動きが止まってしまった。


「あ…」


アリスの口から声が漏れる。

幌馬車の方から女性の悲鳴にも似た叫び超えが聞こえた。

「アリス避けて!!」


一匹のゴブリンがこちらにナイフを突き立て動きが止まったアリスへと突進していたのだ。

近くには冒険者は居るがとても手が開いているようには見えない。

幌馬車の女性は矢を放ったが狙いが外れてしまい、ゴブリンは一直線にアリスへと向かっていった。


「(あ…これ私終わった。短い人生だったな…)」


迫り来るナイフ、忍び寄る死神、心を支配する絶望。

死神が鎌を振り下ろそうとしていた。


13/5/12 誤字、脱字修正

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