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生贄の儀式前日

2回目のアリスsideエロ注意。

これ以上はノクターン行きになってしまうため便利な言葉で規制。


せーの。 アッー!

次の日の朝。

生贄の儀式まで後1日。


マキナは長老の家へと向かっていた。

結界の修復をしなければならないのだ。


しかし、魔法式で発動させるにも魔力を継続して流す必要がある。

それをどうやって修復するのか。


「うーん。魔導炉なんて無いし、魔力発電所なんてないし…謎だ…。」


マキナは独り言を喋りながら長老の家の扉をノックした。


「お早うございます。マキナです。結界の修復でー。」


ごちん。

扉はどうやら外開きだったようだ。


開いた扉にマキナは頭をぶつけていた。


「いだ!」

突然のことに後ろに下がったマキナは高床式と言うことを忘れていた。

「あ」


長老が外に出てくると上から見下ろしていた。


「朝から元気じゃな。さすが若いだけはある。」

「いや…これ私じゃなかったら結構危ない気が…。」

「とりあえず修復いくぞい。」


長老は家の近くにある洞窟へと入っていった。

マキナもそれに続き洞窟へ入っていった。


洞窟の中は薄暗く、長老は松明を持っていた。

「あの、こんなところにあるの?」

「そうじゃ。結界は地脈を利用し、発動、維持させておった。」

「地脈?」

「そうじゃ。世界を流れる魔力の川だと思ってくれればよい。」

「へ~便利。」


しばらく歩くと、開けた空間に出た。

長老は燭台に松明を使い火を移していく。


部屋の中心部には水に沈んだ砕けた石があるようだ。


マキナはそれに近寄ると、石の表面に何かが書いてあるのがわかった。

それは魔法陣だ。


「ここは里の中心部。そしてその石版だったものが結界を発動させていた。」

「ふむ…」


マキナのディスプレイには魔力を示すパラメータが高いことを示していた。

どうやら水に大量の魔力が溶け込んでいるようだ。


「で、昨日のうちに若いもんに運ばせておいた新しい石版じゃ。何も書いてないがのぅ。」

「じゃ、書き込みますよ~。」

マキナは石版の表面には魔術陣を書き込み、石版の4つの側面に強化の魔術式を書き込んでいた。


長老はマキナが通常の魔法陣とは違うものを書き込んでいるのに気づき、それを眺めていた。


「うーむ。それはなんじゃ?」

「魔術陣って言って、魔法陣の親戚みたいなものかな?」

「魔術陣は複雑よのぅ…。」

「…よし。後は水に浸すだけで発動するよ。」

「おぉ。さっそく浸してくれ。」


マキナが石版を見ずに浸すと魔術陣と魔術式が光を発しはじめた。


側面に書かれた強化の魔術式は石版自体の強度を上げる役割を持っている。

表面にはシールドの規模、強度、効果などを持つ魔術陣が書かれている。


「一旦外に出て確認しましょうか~。」

「そうじゃな。」


長老とマキナは洞窟から外へと出ていった。


行きと同じ道を通り、外に出ると確かにシールドが展開されていた。


「ふむ…?前と少し質が違うようじゃ。」

「あ、分かります?前のは効率が悪かったので効率重視で前の2倍ほどの強度を持ち合わせてる。」

「効率が悪いとな…?」


長老はブツブツと何かをつぶやいているようだ。

どうやらあの結界を作ったのは長老を含む優秀なエルフの魔法使いだったようだ。


「でもとりあえず、これで安心ですね。」

「そうじゃな。試しに奴に来てもらって強度を確かめたいのじゃが…。」

「ははは。そう都合よく来るわけが…」


ドスンっと結界から音が響いてきた。


「都合よく来たものじゃ…。」

「そうですね…。」


結界にはヒビ1つ入らず、例の魔物は帰っていった。

外に居たエルフ達は新しい結界(シールド)が出来たことを見ていた。

そして例の魔物の攻撃にヒビ1つ入らない結界(シールド)を見て精神的にも楽になったようだ。


「さて。家に戻るかな。」

「うむ。ご苦労じゃった。そなたの功績は皆に伝えておくからのぅ。」

「それはありがたい。(まともなご飯食べられそう。)」


マキナは歩き出そうとしたが、1つ気になったことがあったため長老へ向き直った。


「む?なんじゃ?」

「あの、神殿って何祭ってるんです?」

「あぁ。それか。エルフの祖と言われるハイエルフのコーティ様じゃ。」

「ハイエルフ?」


マキナは聞き覚えのない単語だったため聞き返した。


「ハイエルフとはエルフをも超える魔力、知力、生命力を持った存在じゃ。神の加護を受けていたとか。」

「ふむ。で、実際の所は?」

「ハイエルフのコーティ様としか全然わからぬ。」


長老自体も神殿の詳しい事は知らないらしい。


「ふむ。ありがと。ではでは~。」


マキナはそう言うとミルフィーの家へと戻っていった。


「変なやつじゃ。神殿のことなど聞いて。」


相変わらず家の中へ逃げ込むエルフ達。

マキナはその気まずい雰囲気の中を歩いている。


「(すっごい気まずい…。)」


マキナは雰囲気に耐え切れず、走りだした。


ミルフィーの家の前まで来るとはしごを飛び越して(・・・・・)ドアの前に着地した。


「うーん!10点!」

「…なにしてるのよ。」


家の外のテラスで座っているミルフィーがいた。

「えっと、飛んできたから採点を。」

「まぁいいわ。あの結界マキナが作ったのでしょう?」

「自信作」


マキナはドヤ顔で答えている。


「確かに高位の魔物すら傷つけられないから口先だけじゃないわね。」

「むむう。私が口先だけみたいな言い方!」


「…そうかしら。マキナにはお世話になったわ。」


マキナはミルフィーが少しおかしいことに気づいた。

表情の変化があまりないのだ。

それに声に張りもない。


「ミルフィー?」

「なんでもないわ。」


そう言うとミルフィーは家の中へと入っていった。


「(やっぱりミルフィーに取ってここは精神的に辛い場所かもしれない。)」


一日中座っている母親。

そしてそれに付きそうミルフィー。


「(恐らく重度の鬱病。ミルフィーや父親の事で発症してしまったのかな。)」


マキナはチラリと見ながら部屋へ戻っていった。

部屋に戻ると剣の手入れをしているアリスと外を見ているネザリアがいた。


「おかえりマキナ。」

「あ、おかえりなさい。マキナさん。」

「うん。ただいま。」


扉を閉めるとマキナは適当な場所に腰を下ろした。


「さっきすごい音したよね~。」

「例の魔物がシールドにぶつかったんだよ。」

「シールドっと言うと…結界ですか、それにヒビが入らないとはすごいですね。」

「ふふふ。もっと褒めてもいいのよ?」

「キャーマキナすごーい!」

「ふははは!」

「ま、マキナさん…」

「いやいや。ごめんごめん。1つ聞きたいけど、いいかな?」

「うん?」

「何でしょうか?」


マキナはミルフィーの母親について話した。


「ミルフィーの母親って毎日同じ場所にずっと座ってて無気力そうにずっと何もしてないよね?」

「そうだね。私達が見た限りだと椅子にずっと座って何もしてないし、何を見てるのかわからない。」


ネザリアはアリスと同じ意見のようだ。

首を縦に振っている。


「やっぱりかぁ。うつ病っていう病気があるんだけど知ってる?」

「うつびょう?」

「なんですかそれ?」

「やっぱり知らないかぁ。」


異世界ではこちらの病気の殆どは知られていない。

魔法と言うものが有るからこそ、科学技術や医療技術があまり発達していないのだ。


「うーん。簡単に言うと、何に対してもやる気が起きない。精神的に不安定になる。自分を低評価する。幻聴、幻覚を起こす。寝れないなどなど。」

「…聞いただけだと、ただの怠け者みたいな感じだけど。」

「同意見です。やる気がないのは怠けている証拠っと言われますし、しかし幻聴、幻覚はおかしいです。」


やはり異世界ではうつ病は怠けと獲られるようだ。


「えっと、うつ病はセロトニンやノルアドレナリンが正常に分泌されなくなり、脳内活動が低下することによって引き起こされる列記とした病気なんだよね。」

「…?」

「せ、せろとにる?のんあど…?」


どうやら難しすぎるようだ。


「あー。簡単に言うとね、脳内の分泌物が少なくなっちゃうからダメなの。」

「あー。なんとなく。」

「難しいですね。うつ病と言うものと怠け者の見分け方。」

「私の世界には専門の医師が居たから良かったけど、こちらの世界じゃ居ないだろうね。」


その言葉に2人は頷くしなかった。



マキナはこのなんとも言えない雰囲気を払うべくひとつの提案をした。

「さてっと。昼食でも食べに―」

「よし行こう!」


アリスはマキナが言葉を言い終わる前に、いつの間にか扉を開けていた。


「え?アリスさんいつの間に?」

「いつものことだよ。」


3人はミルフィーに食べに行くとだけ伝えて外へと出ていった。

長老から話が伝わっていれば入れるはずである。


3人はエルフ達が集まる道へ出ると、以前のように皆が家の中へ隠れることは無くなっていた。


どうやら長老が伝えてくれたらしい。


「で、マキナ。食堂ってどこ?」

「…あ。」


マキナはすっかり忘れていた。

雰囲気を払いたいと言う考えで言ってしまった言葉の穴だ。

「エルフに聞くのはどうでしょうか?」

「ネザリア!それだ!」


マキナが1人のエルフに近寄っていった。


「あのすみませ―」

「ひっ!あ、ああああ、あの!す、すみません!」


そう言うとエルフの女性は走って行ってしまった。


「あー。何か言葉間違えた?」

マキナは後ろにいる2人に聞いた。

「特には…。」

「恐らく人間への恐怖が抜けてないのでしょう。」

「…数撃ちゃ当たる作戦!」


マキナは片っ端から聴きこむことにしたようだ。


「あの!」

「ひっ!」


「すみません。」

「よ、用事があるので。」


「エクスキューズミー?」

「え?え?し、失礼します。」


「ふえぇぇ。聞いてくださいぃ。」

「なにこれ可愛―人間!?今のはなかったことに。」



……………………



「あぁ。やっぱりダメみたいだね。」

「ここまでひどいとは思いませんでした。」


話しかけるたびに振られるマキナであった。

マキナはこちらに戻ってくるようだ。


「ふえぇぇぇ。誰もお話聞いてくれないよぉ…。」


マキナが2人と話していると後ろから声をかけられた。


「おい!人間今度は何をしている!」


マキナはゆっくりと後ろを向くと、そこには里に入る時に説教した自警団が居た。


「あ、いいところに。食堂ってどこ?」

「…そんなことで騒ぎを起こしたのか?」

「いや、片っ端から聞き込みしてただけ。騒ぎ起こしてない。」

「何人こっちに来たと思っているんだ!これだから人間は…。」


マキナは何時まで経っても差別をする自警団リーダーにイライラし始めた。


「だいたいお前たちが―」


マキナは喋っているいるエルフを掴むとそのまま空に放り投げた。


「うるさい。」

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁ」



ゴツンっと何かが当たったような音がした。

シールドにマキナが投げたエルフが当たったのだ。


そしてそのままエルフはマキナの腕に落ちてきたのだった。


「い、いてえ…。」


どうやら後頭部を打ち付けたようだ。

優しいマキナは念のため後頭部を調べたが内出血も無く、たんこぶができているだけだった。

そこを優しく叩くとマキナは声を掛けた。


「食堂どこ?」


いともたやすく行われるえげつない行為に自警団のメンバーは顔を引き攣らせている。


「人間!よくも―」


マキナはたんこぶをもう一度叩いた。


「いってええ!」

「食堂」

「ケッ!誰が人間なんかに教え―」


マキナは胸ぐらを掴むと場所を少し移動し、そのまま空に放り投げた。


先程は力が強かったのか、シールドにぶつかったが今回は樹の枝にぶつかるように投げていた。


団長は樹の枝や葉っぱを体に纏いながら落ちてきた。


マキナは団長を受け止めると地面に落として睨めつけた。


「…食堂は長老の家の坂を上がったところにある…。」

「よろしい。」


マキナはニッコリとした顔で答えていた。

しかし、それを見ていた体制のない部外者は…。


「団長…。」

「あの人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い人間怖い。」

「あれ以外と怖いんだよなぁ。」

「ま、マキナさん…」

「面白そうだなー【アリスも物好きだな。】」


マキナは樹の枝の生えた団長を引っ張りながら戻ってきた。


「たっだいまー。場所わかったよ~。」

「おかえり~。じゃ、行こうか!!」


マキナに場所を聞いたアリスは我先に走って行ってしまった。

それを追いかけるマキナとネザリア。


「あ、二人共まってくださーい。」


3人が去った後、自警団は大きな嵐が通り過ぎたかのような感覚に襲われていた。


「何なんだ。あの人間。」


一人の言葉が全員の言葉を代弁したのであった。


「クククッ…」

「団長?」

「嘘の情報教えてやったわ。人間め。」


団員はそんな団長を見て嫌な予感しかしなかったのだった。


「あれ?ここって聞いてたんだけど、なにもないよ?」

「」

「あれ?アリス?」

「」

「はぁはぁ…早いですよ二人共…どうしたのです?」

「いやね、ここにあるって聞いたんだけど、何もなくてアリスが固まっちゃったの。」

「え?ここではないのですか?」

「騙されたってやつね~。」


マキナがそう言うとアリスが一瞬ピクリと動いた。


マキナとネザリアが見守る中、アリスから大きな気配と威圧が漏れだした。

「おっと。」

マキナはネザリアを自分の後ろへ避難させるとエネルギーを放出して自分の領域を形成し、アリスから漏れる気配と威圧を防いだ。


「あっの自警団エルフうううううううううううううぅぅぅぅぅぅガアアアアアアアアアアアア!!」


アリスはそう言うと今まで以上の速さで先程の場所へと向かっていった。


「あ~。私しーらない。」

「えっと。アリスさんどうしたのですか?」

「食べ物の恨みは恐ろしいってことよ。」

「…少し獣っぽかったですが。」

「…本能でフェンリルの力と魂ごと引っ張ってきたんじゃない?」


そこに朝方聞いた声が掛かった。


「うるさいのぅ。もう少し静かにできんのか?」

「あ、長老。このへんで食堂ありませんか?」

「食堂かの?それなら儂の家の坂を降りた所にあるぞ。」

「ありがとうございます~!後、少しうるさくなるかもしれません。」

「?食堂を探してたならいいんじゃ。」


マキナとネザリアは挨拶をすると食堂へ向かった。



アリスside



「えらい目に合ったぜ。」

「団長。背中に葉がついてます。」

「おう。ありがとな。」


マキナに投げられ、樹の枝や葉が着いた服を綺麗にしていた団長と団員たち。

そしてそこに聞こえてきた咆哮。


「--------------------ガアアアアアアアアアアアア!!」


「な、なんだ?」

「だ、団長。こっち気配が来てます!」


団長は隣に居た団員に声を掛けた。


「なぁ。俺すっげー嫌な予感するんだけど。」

「き、奇遇ですね。…団長逃げて!」


団長は体を180度回転させると身体強化を全力で掛けて逃げ出した。

後ろから団員の叫び声が聞こえたが気にせず走る。


後ろからは大きな気配が迫ってきている。


「一体何なんだ?」


団長が走りながら後ろを振り向くと自分を放り投げた人間と一緒に居た白い服を着た人間だった。

しかし、それから放たれる威圧は人間のものではない。


上位存在。

そう。人間なんかより高位の存在の威圧感だ。

その人間は薄く白く光っている。


光が腕に集まったと思えばそれが爪の形に変化しだした。

「食べ物の敵ガアアアアア!!」


腕が振るわれると同時に団長は横に回避し、攻撃後を見た。

それは地面を抉っている。


生身で当たったら即死だ。


「ちょ、ちょっと落ち着け!悪かった!」

「食べ物の恨みは恐ろしいんだああああああ!!」

「ちょっ。たんま!」

「砕けろおおお」【砕けろおおお】

「危ねえ!!」


SideOut



「うん。さすがエルフの里だけ合って食堂も緑だね。」

「そうですねー。水なんか流れてます。心地良いですね。」


マキナ達が話していると奥から女性の店員が出てきた。


「人間にしてはわかるじゃない。」

「おー?」

「あれ?意外と自然に接してきますね。」

「敵意が無い奴には誰であろうと関係ないね。」

「おー!久しぶりの良い人だー!」


マキナはエルフの里に入ってからイライラが続いていたのだ。

特にあの団長。


「さて、料理は何にするんだい?」

「エルフの里おすすめで!」

「私もそれでお願いします。」

「ここでしか食べられないおすすめ出してあげるから少し待ってな。」


そう言うと店員は奥へと戻っていった。


「いい店だね。」

「そうですね。今日、昨日は色々ありましたし。」


そこまで話すと鈍い音が外から聞こえてきた。

それも一回ではなく、定期的に聞こえてくるのだ。


「ま、マキナさん?この音は一体…。」

「多分アリス。」

「アリスさんが?で、でもアリスさんは剣士でしょう?ここまでの音は出せないのでは…。」


疑問をマキナにぶつけるネザリア。


「さっき言ったでしょ?食べ物の恨みは恐ろしいって。」

「ってことは、恨みのために力をいつも以上に解放できてしまったということで?」

「たぶん。」

「アリスさん…。」

「いつものことだよ~。」

「はぁ…。」


マキナもマキナだが、アリスもアリスである。

まともな人間エルフはネザリアとミルフィーぐらいしか居ないのだ。


外から聞こえてくる音と水が流れる音を聞きながらリラックスする2人の元に店員が料理を運んできた。


「はいお待ち!里特性の食材を使った料理さ!」


運ばれてきた皿はきのこソテーが1品、ポテトサラダが1品と野菜ジュースが一品ずつ二人分が合った。


「おぉ!美味しそう!この飲み物は野菜を飲み物にしたものですか?」

「よくわかったね。エルフの里で取れる綺麗な水と新鮮な野菜を絞って出来た飲み物さ!」

「美味しそうです。」

「ささ。食べて食べて。」




アリスside




団長は追い詰められ木に押し付けられている。

「待て!話せば分かる!」

「フーッ!フーッ!フーッ!」


既にアリスは話せるような状態ではなかった。

食の恨みによる膨大な力を引き出した結果、フェンリルの一部の魂も引き出してしまったために、理性が吹き飛んでしまっている。


そのため、思考も獣よりになってしまっているのだ。

フェンリル以下、人間以下獣以上。

ただ、食への恨みとして残っているのである。


アリスが団長を舐めまわす様に見始めた。

「お、おい!何をする気だ…。」

「【アリス!力をもとに戻せ!】」


アリスは唇を舌で舐め回すと団長の服を剥いだ。

「お、おい!何するんだ!」

アリスがそのまま噛み付こうとした時、団長のカウンターがアリスに当たった。


身体強化された団長のカウンターはアリスの腹に食い込みアリスは少し吹き飛んだ。


団長は今のうちに逃げようとしたが再びアリスが襲いかかってきた。それを掴むと地面にたたきつけた。


「これでどうだ!」


アリスは動かなくなったため、団長はすぐに逃げようと歩き始めた。



が、



後ろで何かが動く音がした。

団長が振り向くとアリスが立っていた。

「ちっ。しぶといな。」


しかしアリスの様子は先程とは違うようだ。


思考が獣よりになっているため、捕食行為をしようとしたが失敗。

二度目の攻撃も受け止められ地にたたきつけられた。


それにより、自分(メス)より強い相手(オス)と言う関係が成り立った。

獣よりの意識の中、人間の知識が混ざり合いひとつの行動を起こした。


アリスは再び団長へ襲いかかると今度はフェイントを入れて飛びかかったのだ。

それには対応できず押し倒される団長。

そのはずみに、またしても後頭部を木にぶつけてしまう。

それにより意識が朦朧としているところにアリスが近寄ってきた。


「くっ…な、何を…」


アリスは口元だけ笑うと団長のズボンを引き裂いた。


「ちょ、お前…何を…して!」







「アッー!」







その日団長が見つかったのは夕暮れ時だった。

見つけた団員の女性は全裸で干からびて倒れている団長を見つけ、叫びながら水属性の魔法を顔にぶつけたのだった。



「まったく。アリスは愚かだ。我の力はともかく、魂の一部まで引き出すとは。」


喋り方からしてフェンリルだろう。

魂の一部を引っ張りだしたことにより、フェンリルがアリスの体を操っていた。


「まぁ。大したものだ。人間が我の魂の一部とはいえ受け止められるとはな。次は暴走しないだろう。」


フェンリルはアリスの口元に付いていた白い液体を口の中へ舐め入れた。

「ふむ…我はそのような行為は無かったが、まさかアリスが我の気質に影響されるとは思わなかった。」


アリスについているフェンリルは弱い男には興味が無いと言う性格で、死ぬまで子をなさなかったのだ。


それがアリスに影響し、強い男ということでここでは言えないようなことが起きてしまったのだった。


「アリスは…まだ寝ておるか。体は皆の元へ戻しておこう。」


フェンリルは匂いを頼りにマキナ達の元へと移動していった。




SideOut


ミルフィーの家に戻る途中のマキナとネザリア。

「美味しかったね~。」

「はい!お城で食べる料理より美味しかったです!」

「庶民の味っていうのかな?お城では味わえないのも有るからね。」

「そうですね。飛び出してきてよかったです。」


マキナ達が歩きながらミルフィー家の前まで来ると、アリスとばったりと会った。


「あ、アリスおかえり。団長どうしたの?」

「あの男は干からびた。」

「…誰ですか?フェンリル?」

「鋭いな。新しいの。」


ネザリアはアリスがおかしいのを見ぬいたのだ。


「アリスさんはどうしたのですか?」

「案ずるな。少し寝ているだけだ。朝には目が覚めるだろう。」

「フェンリル。人間の体はどう?」


マキナがそう聞いた。


「せまっ苦しく、脆い。使いにくい体だ。ただ、器用な事ができるな。」

「そこが人間の取り柄だからね。」

「さて。我は引っ込むとしよう。」


マキナがアリスの体を支えると、フェンリルは一言礼を言って戻ったようだ。

アリスが体から力が抜けマキナに寄りかかった。


マキナはアリスを背負うとはしごから少し離れた。


「ネザリア。先に行ってるね。」

「え?マキナさん?」


マキナははしごの中段まで飛ぶと、そこから入り口まで飛んでいった。


「あー。」


ネザリアは口を開けっ放しにしながら上を向いていた。


しばらくしてネザリアが上がり終わった頃。

アリスはベッドで寝かされていた。


「お?ネザリアきたー。」

「ツリーハウスも大変なものです…。」

「ずっと王城内だったからね。そのうち体力も付くよ。」

「そうですね…。明日は早いです。今のうちに寝ておきましょう。」

「そうだね。じゃ、おやすみ。」

「おやすみなさい、マキナさん。」


そう言うとマキナはロウソクの火を消したのであった。

「(目覚ましを6時に設定。よし。スリープへ移行!)」


そしてマキナも眠りへと落ちていった。


13/05/12 誤字修正

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