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私の意味、彼女の願い

デウス・エクス・マキナ。

それは機械仕掛けの神。舞台で危機敵状況に陥った主人公を舞台装置(機械)が手助けをし、主人公が劇的に問題を解決する。


元の世界では世界と言う舞台で危機敵状況に陥った人類を人類が創りだした神が助け、解決すると言う考えで創りだされた。


しかし、元の世界ではそれは叶わなかった。


だがこの世界ではまだそれを叶える事ができる。

まだ終わっていないのだ。


マキナは戦場をズームアップした。

大量の魔物に押されている騎士たちの姿が合った。

魔物の後ろにはカーディの騎士と思われる弓兵が居た。

手にはクロスボウと呼ばれる弓を持っている兵士の姿があった。

魔物は次から次へと後方から補給され、アインス軍は魔法、弓、魔物の物量に押されている。


騎士が盾を持ち壁となり国王率いる魔法使いを守っているようだ。


時折敵陣から大きな魔法が飛来する。

大きな魔法が炸裂し、そのたびにアインス軍の逃げ遅れた騎士や魔物が死に絶える。

そして魔物は補給され、元に戻る。


そしてまた一人と魔物に飲み込まれ殺される騎士が出ている。


このままではアインス軍は物量で押し負けてしまうだろう。


そしてまた大きな魔法が放たれたようだ。

それをアインス軍が総力を上げシールドで防いだようだが、シールドは砕けてしまい騎士たちは吹き飛んでしまっていた。


近衛騎士団の鎧姿が切り込んでいる。

何かに引っかかり転んだりしていたがマキナを放り投げた近衛騎士がそれを防いでいた。


しかし騎士たちが一斉に後退している。


“警告 大容量の魔力を検知。”


先ほどのシールドの砕け方から察するに次の魔法は確実に防げないだろう。

そうなればアインス軍は全滅する可能性がある。


「まだ終わってなんかいない。私は私の創られた意味を今ここに示すんだ!

加速。加速。加速。加速。加速!」


フォトンウィングの光が増して行く。

マキナは加速と同時に焦りも加速し、戦場へ迫っていく。

火炎弾が発現しアインス軍へ迫る。


"シールド展開”


「間に合えええええ!!」


マキナは火炎弾に突っ込んでいった。



レオンside


魔物が大量に迫り、騎士と魔物が殺しあう戦場の中にレオン率いる近衛騎士団は居た。


戦場の状況から少しでも多くの戦力を得るため、戦闘力が違う近衛騎士と騎士の一部を交換し、近衛騎士全員が前線に出ることになった。

レオンは下がった騎士に盾を持たせ、国王周辺を守らせた。


「お前たち!ここで絶対に食い止めるぞ!できなかったら明日はない!」

レオンの言葉に騎士たちが雄叫びを上げる。

そして騎士たちが魔物に向かい走りだした。

「せいっ!」

レオンが魔物を斬り裂く。

王国特注の剣は魔物をいともたやすく切り裂いていく。

近衛騎士団は他の騎士よりも多くの魔物を切り裂き、周りの騎士の士気を上げる。


「一匹でも多く倒せ!」

レオンの声に騎士たちが答える。

カリスは近衛騎士に風の加護を付与した。

「<風よ!彼の者達に加護を!ウィンド・ブレス!>」


魔法により飛んでくる矢はカリスのウィンド・ブレスの風の鎧で軌道を逸らされている。

近接攻撃よりも歪みが少ない矢はカリスに余り負担を掛けていないようだ。


それでも7人分を掛けているカリスの負担は計り知れない。

時より疲労回復の薬を飲むカリス。

魔物を切り裂きながら魔法を維持、修正し続けていく。


レオンは負担を減らすべくなるべく多くの魔物を斬り裂いていた。


首を落とし、臓器がはみ出るほど腹を切り裂き、腕を切り落とし。

粘着性のあるどろりとした血液が地面を、鎧を汚していく。


何十匹か倒した頃には、既に足元は魔物の臓器や血肉で地面が見えなくなっている。

歩くたびに鎧に吸い付くような肉の感覚が足元から感じられる。


「くそ!数が多い!どうなってるんだ!」

レオンは悪態をつきながらも魔物を切り裂いていく。

時折剣を振るい、血肉を落としている。

特注の剣と言えども、血肉のせいで切れ味が落ちるのだ。

「奥から増援を確認!」

騎士声にレオンが奥へと一瞬目を向けた。

「くそ!奴らどれだけの魔物を集めたと言うんだ!」

「隊長!魔法が来るぜ!」

「脳筋気をつけろ!」

近衛騎士の2人が警告を発した。


敵陣方面から人の頭程度の火炎弾が飛んできたのだ。


一番前に出ているのは隊長であるレオンと脳筋の大男の近衛騎士だ。

レオンは素早く魔法をかわすと加速を使用し、立て続けに敵を切り裂いていく。

大男近衛騎士は魔物を掴むと魔法に向けて投げつけていた。

目標を失った火炎弾は地面に激突し、地面を少し抉り取った。

投げ飛ばされた魔物は四肢をバラバラに吹き飛ばしながら火だるまへと変わった。

「ガハハ!俺に魔法はきかんぞ!」

「「なんか違う。」」

警告した近衛騎士も闘いながら思っていた。


「皆の者!魔物に魔法を放て!」

「<炎よ!火球となりて爆ぜよ!ファイア・ボール!>」

国王率いる魔法使い団が一斉に魔物へ向かい、魔法を放った。

魔物が一体一体焼け死んでいくと、そこに補充されるかのように魔物が敵陣営から飛び出してくる。


少し後ろではカリス、エミリー、リンネが周りの騎士と魔物を殲滅していた。


「アハハハ!死ね!死ね!死んじゃえ!アハハハハハハハ!」

「これだからエミリーは…」

「いつも通りだろ。」


エミリーは剣を振り回し、魔物を殺し回っていた。その身は魔物の返り血で染まり、近寄りがたい雰囲気を出していた。


周りの騎士や近衛騎士の若干引いているようだ。


その時後ろに居た国王が声を上げた。

「む。この魔力は…!いかん!皆下がれ!」

「全員後退!」

国王は大きな魔力の流れを察し、すぐに指示を出していた。

レオンは国王の言葉を聞き、すぐさま命令を出したのだ。


数秒後、敵陣営から特大のファイア・ボールが飛んできた。

「これは魔法陣による多人数の魔法行使!」

隊の魔法使いが叫んだ。

「魔法使い達!結界を展開しろ!」


国王が言い放つと下に敷かれている魔法陣が光り出した。

魔法使い達は魔法陣に魔力を送り魔法式を起動させる。


十分な魔力がたまると同時に撤退してきた騎士たちの前に結界が張られた。

そこに衝突する魔物達。

「衝撃注意!」

数秒遅れてカーディの魔法使いが放った火炎弾が衝突した。

爆音が轟き、外に居た魔物は焼かれ吹き飛ばされた。

そして結界は火炎弾をたやすく防いだのだ。


「隊長よ被害報告はどうだ!」

国王が叫ぶ。

「はっ。魔法使い隊は現在の結界により魔力の数割が減少、前衛に関しては無傷です。」

「そうか。相手が魔物も一緒に焼き払ってくれたからいいとするか。」


しかし、休息もつかの間だった。

敵陣方面からは何かが大量に走ってくる音が聞こえる。


「魔物が来るぞ!全員気をつけろ!」

レオンが叫ぶ。辺り一帯は火炎弾の爆発の影響により視界が遮られている。

「<風よ。ウィンド>」

魔法使いが風を起こし、砂埃を吹き飛ばしていく。

そこに居たのはカーディの騎士と魔物の組み合わせだった。


最初にやられたのは前線に居た騎士だった。

カーディの騎士に鎧ごと頭を砕かれ即死。

相手はメイスを持っている。鎧を来ている相手では剣は役に立ちにくい。

衝撃を加えることにより脳震盪も起こさせることが出来る鈍器のほうが役に立つ。

気絶した後殺せばいいからそのほうが楽なのだ。


「この野郎!」

レオンが加速し、鎧の隙間からけんを差し込み肉を斬り裂く。

その剣は体表を斬り裂き、肺まで達すると剣を引き抜いた。

相手の騎士が口から大量の血液を漏らし、痙攣したかと思うとメイスを地面に落とし倒れ伏せ、兜からは大量の血液が。胸元からも大量に溢れ出ている。


そのままレオンは周りにいる魔物や騎士の排除を開始した。


騎士が混じったことにより、魔物の短調とした攻撃から不意を突かれる騎士が増えたことによる被害も増えていた。


それを補う為に魔法使い達は騎士を狙い魔法を放っていた。


「報告します。9名魔力切れを起こしました!」

「残り何人だ!」

国王が叫ぶ。

「残り45名です!後2回結界を張ることができます!」

「弓兵!森に向かって矢を放て!魔法を使わせるな!」

「はっ!森に向かって矢を放て!」


森に向かって何十とも言える矢が放物線を描きながら飛んでいく。

しかし、それは弾かれてしまった。


「国王様!相手は結界を張っています!」

「小癪な…!」


矢は見えない壁に阻まれ地面へと落ちていった。

レオンは森に向かって放たれた矢が弾かれた場面を見ていた。


「くそ!奴らめどれだけの魔法使いを連れてきているんだ!」

敵を斬り伏せていくレオン。

飛んでくる矢が鎧に当たり始めた。

「カリス!大丈夫か!」

レオンの叫び声にカリスが反応を示した。

「魔力が残り少ないです!魔法の継続は困難です!」

カリスの魔力が尽きる寸前のため風の加護が使えなくなっていた。

「国王様!相手の弓兵をなんとかお願いします!」

「弓兵!相手の弓兵を狙え!」

国王が指示を出すと相手の弓兵に向かって矢が放たれた。


アインスの矢は鎧を貫くというより、鎧を叩くようにできている。

そのため、弓自体が普通のサイズより大きく。威力が高い。


重力に従い速度が乗った矢が相手の弓兵に叩きこまれた。


薄いプレートの鎧は当たった箇所が歪み、運の悪い兵士は目の部分に矢が当たり、格子状になっていたプレートを突き破り頭蓋骨にヒビを入れた。


「そのまま放ち続けろ!相手に矢を放たせるな!」


アインス軍の矢の嵐は敵兵の鎧を歪ませ、動きづらくさせるとともに弱い部分へと致命的なダメージを与えていた。


「投石機前へ!」

砲兵隊の隊長が魔法使い隊の後ろから投石機を準備していた。

「火炎樽を乗せろ!いいか!目標までの距離は100メートルだ!」

「はっ!角度よーし!隊長行けます!」

「導火線に火をつけろ!…放て!」


導火線に火が着いた樽は魔物や騎士達の中央に飛んで行き、頭上数メートルの位置で爆発を起こした。


中に入っていたオイルに引火し、それを被った魔物や騎士が燃え始めた。

鎧の隙間からオイルが入り込み内部を燃やされ、熱により蒸し焼きにされていく敵の兵士たち。


「効いているぞ!もう1射行くぞ!」

「はっ!現在再装填中!」


投石機や弓兵の援護により、戦場の危険度は随分と下がった。

しかし、未だに魔法の脅威は残っている。


「ガウス!生きているな!」

大男の近衛騎士が反応を示した。

「当たり前だ!俺を殺せる奴などいない!」

「殲滅速度を上げないと魔法がもう一発来そうだ!」

「ガハハ!わかっている!」


ガウスはハルバードを振り回し、魔物をなぎ払っていく。

レオンは一体一体斬り伏せながら周りを確認していた。

右側に居た騎士は魔物に飲まれてしまっていた。

魔物が持つ鈍器により鎧が歪み、鎧を毟り取られ露出した体にナイフや鈍器でミンチにされるのだ。

叫び声をあげていた騎士はものの数秒で沈黙し、人の形をしていたとは思えない肉の塊になっていた。


「くそ!許さないぞ!」

レオンは倒しにくい敵騎士を器用に鎧の間から剣を差し込み腕を飛ばした。

「ぎゃああああ!腕が!腕がぁ!」

「うるさいぞ!」

レオンが腕のあった場所に剣を差し込んだ。

剣は半ばまで刺さり、敵の騎士を殺した。


「次だ…っ!」


レオンは動こうとした時地面に転がっていた分断された魔物の死骸から伸びていた腸に足を取られた。


倒れこんだレオンの手には粘着性のある血肉が付着し、足には魔物の臓器が絡まっている。


「しまっ!」

「隊長!」

後ろからリンネの悲鳴にも似た叫び声が聞こえ、前からは敵騎士がメイスを振り上げていた。


その時近くに居たガウスがハルバードを盾に前に出た。

相手のメイスはハルバードに阻まれレオンに届くことはなかった。


「ガハハ!情けないな隊長よ!」

「すまん。助かった!」


レオンは立ち上がると武器を構えた。

ガウスは盾に使っていたハルバードでそのまま敵の騎士を叩き殺した。


巨大ゆえ鎧など紙のようにひしゃげ、断面がひどいことになりながら敵騎士は地面へと倒れこんだ。


「魔法が来るぞ!下がれ!」

国王が叫けんだ。

「後退!」

レオン達が下がると相手の騎士は全力で魔物と追いかけてきた。

国王と魔法使いが結界を張ると相手の騎士はすべて結界内に既に入っていた。

一部の魔物は入れずに衝突していた。


「絶対に通すな!国王様を守れ!」

レオンが叫びながら敵味方が乱れ合う中剣を振るった。

他の騎士を狙ったメイスがレオンの腕を叩いてしまった。

空振りだったため威力は落ちていたが、鎧の接合部分が歪み片腕を動かしづらくなったのだ。

「畜生が!」

レオンは剣を引くと相手の兜の目の位置に突き立てた。

加速を利用した突きは兜を貫通し、相手の騎士の頭を貫いた。


レオンをカバーするかのように他の騎士が守りに入った。

その間にレオンは突いた剣を敵騎士から引き抜いていた。


先ほどと同じ魔法陣仕様ファイア・ボール。


結界との激突により土埃が舞い上がり、結界にヒビが入った。


「隊長!被害報告はどうだ!」

国王が隊長に向かって叫んだ。

「45名の内14名が魔力切れを起こし残り31名!結界にヒビの発生を確認!」

「結界は後一回は張れるか?」

「正直つらいかと思われます!良くてお互いに相殺、悪くて結界を一部が貫通する恐れがあります!」


国王は顔を渋らせた。

手詰まりである。

次の魔法がきた場合、結界でふせげないだろう。

防げたとしても部隊は壊滅的なダメージを負うこととなる。


「レオン!急いで魔法使いを倒すんだ!」

「はっ!聞いたか!?こいつらを突破して魔法使いがいる奥まで走るぞ!死体に足を取られるなよ!

「弓兵!魔物ように矢を換装しろ!」

「はっ!」


レオン達は結界内に居た敵兵士を辛くも討ち取ると敵魔法使い達に向けて走りだした。


しかし、そこに敵騎士と魔物の軍隊が立ちふさがる。


「放て!」

自軍からの声が聞こえると敵に矢の雨が降りはじめた。

小型の魔物は矢に射抜かれ絶命するが騎士は物ともせず突っ込んでくる。

前衛が交える直前に矢は止まり、結界に向けて再び換装した矢が放たれた。


結界の表面に小さい波紋を立てながら落とされていく矢。

「結界と攻撃が別々にいるのか…。やはりカーディの国は多いな…。」

王がそう呟いた。


「弓兵!そのまま撃ち続けろ!」

弓兵隊長騎士が隊に活を飛ばしている隣でも砲兵部隊も活を飛ばしていた。

「約200メートル先!放て!」

投石機の角度が調節され、火炎樽が放たれた。


前線に居るレオン達は火炎樽や微々たる魔法の援護により敵を切り裂いていく。

徐々にアインス軍が前へ押していくのだ。

しかし、カーディ軍はその場から動かずに魔法を構築しているようだ。


魔物たちはその周囲にまだ沢山の数が待機している。


突然敵結界前の魔物が退き始めた。

「…何だ?」

レオンは不思議に思いながらも敵と対峙していた。


その異変は国王にもわかっていた。

敵陣営から漂う魔力が増大していく。

「これは!皆下がれ!魔法が来るぞ!」

「くそ!またか!」


結界範囲内に下がりつつ敵を牽制して行くレオン達。

味方が全員入ったことを確認した国王は結界を発動させるべく残りすべての魔力をつぎこんだ。


騎士たちの前に結界が展開され、敵の侵入を阻む。

敵の騎士は結界を殴っているがその程度では魔法陣で展開された結界には歯も立たない。


一際大きい魔力反応が敵陣から感じた国王は結界の維持に全神経を集中させた。

もちろん他の魔法使い達もだ。


魔法陣ファイア・ボールが結界へと迫ってくる。

「皆衝撃に備えよ!防御姿勢!」


盾を持っていない騎士は剣を盾にし、身をかがめ、魔法で出来たくぼみに隠れたりするものも居た。


最前線に居たレオンが叫んだ。

「着弾するぞ!構えろ!」


レオンがそう言った途端結界外で爆発が起こり、魔力が低下していた魔法使い達が展開した結界を貫き衝撃波が騎士たちを襲う


身の軽い女性騎士は踏ん張りが効かず、後方へと吹き飛ばされていく。

前線に居る騎士達の一部も吹き飛ばされていた。



レオンとガウスは踏ん張っていたが、魔力切れで疲労していたカリスやエミリーが吹き飛ばされてしまっていた。


「カリス!エミリー!返事をしろ!」

辛うじて無事だった騎士が報告をした。

「カリス、エミリー近衛騎士は気絶しています!他の騎士も動けるような状態ではありません!」


この報告に騎士の士気が下がったのは言うまででもない。

「諦めるな!ここで諦めたら王国も俺らも終わりだ!」

レオンの活が飛ぶ。

それと同時にガウスが敵騎士と魔物を薙ぎ払う。

「諦めるな!無敵の俺がいるぞ!」

ガウスは笑いながら敵をなぎ倒していく。


その光景を見た騎士は士気を取り戻し、剣を握り直した。




が、


「魔法が来るぞ!」

「ば、馬鹿な!早すぎる!」

国王の声とレオンの声が響いた。

既に魔法使いは大規模な結界を展開し、魔力がない状態。

魔法陣が点滅し、魔法式が起動できないのだ。


「手詰まりなのか…?」

「皆魔法を回避!なるべく散り散りに避けろ!」

レオンが叫ぶと同時に火炎弾が飛来した。

騎士達が逃げるのより早く飛来したのだ。


「クソオオオオオオ!!」


そして火炎弾は爆発し、衝撃波が辺り一帯を吹き飛ばした。





「…?」

アインス軍は火炎弾の爆発の衝撃波がこないことに気がついた。

火炎弾は幻だったのではないかと思ってしまったが、確かに衝撃波で発生した赤い土煙が視界を覆っている。


騎士達は自分が死んでいないか体を触ったり、触りあっている。


「何が起きた…?」

国王が呟いた。


赤い土煙が晴れてくると同時に火炎弾が迫ってきていた方向が明るいことに気がついた。

「あれは何だ…?」

一人の騎士がその明かりに指さした。

その指先にアインス軍の目が集まっていく。


赤い土煙が晴れると、そこに居たのは紛れもなく数日間城に居た客人だった。

茶髪の髪の毛をなびかせ、光の翼を広げ浮いていた。


「間に合った。ね?レオン。」


Side Out


「このまま…!突っ込む!」


マキナは火球に一直線に突っ込んでいった。

火球との被弾と共にフォトンウィングの推進力を逆転させた。

それとともに大きな慣性が働き、マキナの体に大きな負荷がかかった。

しかし、それはマキナの体には何も影響を及ぼさないレベルの物だ。


マキナのシールドは火球と衝突し、爆風を受け流していた。

そのため後ろにいる騎士には何も影響はなく、きちんと守れたのだ。


「間に合った。ね?レオン。」


その光景に只々唖然とするしか無いアインス軍。


そこの光景を見ていたのか、カーディからは開戦直後に等しい量の魔物が出てきた。

それに混じって敵騎士も居るようだ。


「マキナ!まずいぞ!早く…」

「ATS 魔導式AVA」


マキナの手に身長を超えるガトリング砲が現れた。

それに魔力を送り砲身を回転させていく。


そして回転が最高速度まで達した時砲身から70口径の魔弾がばら撒かれた。

“身体強化10%”

“駆動プロファイル変更:射撃モード”

“フォトンウィング出力上昇”


以前王都に響き渡った砦の崩れるような音がもう一度戦場で鳴り響く。


魔物の大群は血霧となり、跡形も残っていない。

大型の魔物も、鎧を来ている騎士も後ろにいる弓兵も何もかもが蒸発していく。


マキナが左端から右端まで砲身を回転させた時には目の前に生きている生物は何一つ無く、ただ血霧が漂っているだけだった。


「魔導式AVA解除。レオン大丈夫だった?」

マキナは低空飛行をしながらレオンに近寄った。

「ま、まぁ。大丈夫だ。」

「そっか。実はね、ネザリアと約束したんだ。レオンと国王を守るって。」

マキナはそうレオンに告げた。

「ネザリアったらレオンと国王の元へ行くんだって騒いでて大変だったんだよ?」

「そ、そうか。ありがとな。」

「いいってことよ!」

マキナが笑いながらそう答えた。


その時マキナのディスプレイに警告が発せられた。

“警告 大容量の魔力を検知。”


国王も気づいているらしく、声を上げた。

「奴らはこちらをまるごと吹き飛ばすつもりなのか!?」

再び火炎弾が放たれた。

その大きさは先程の二倍程あり、魔法使いの全魔力を使っただろうと予測された。

「あー!私がせっかく話してたのに!」

“魔導炉出力70%”


マキナは話していたのを邪魔され、若干頭にきたようだ。

「吹き飛べやゴルァあああああああ!!」

マキナが火炎弾の前に出ると片腕を乙女とは思えない声を発しながら勢い良く向けた。


雷が耳の隣にでも落ちたかのような爆音と共に地面が抉り取られた。

火炎弾はその衝撃波に散らされ爆発も何もしなかった。


マキナの魔力により発生した衝撃魔術の衝撃波がそこにあるすべての物を吹き飛ばしたのだ。


一発に込めた魔力はマキナの後方に居る魔法使いの約90人分。

しかし、衝撃魔術は魔力を圧縮し開放することで発生させている。

90人分の魔力を圧縮し、更に90人分の魔力を圧縮し続けた結果がこれである。

地面は数メートルに渡り抉り取られ、奥に居たおよそ5000のカーディ軍もろとも数百メートル近く吹き飛ばしてしまった。おそらく生きてはいないだろう。

マキナの前方の地面は抉れ、空からはそこにあった肉塊の雨などが降ってくる。


“魔導炉通常運転へ移行”


「あー。いやー。やりすぎた。」

マキナは持てる限り可愛くそう言ったが、誰も聞いてないようだ。


そこにレオンが近寄ってきた。

「マキナ。今のは無理がある。」

「ですよね…。」


マキナはそう言うと地面に魔法式を書き始めた。

そこにレオンがついてきた。

「何をしているんだ?」

「騎士たちが唖然としちゃって固まってるから治癒魔法の魔法式でも作って、ぱーとっ回復させちゃおうかと…。」


マキナを中心にミルフィーから習った魔法式を書き込んでいく。

書き込むものはそのへんに落ちていた剣を使っていた。


「えっと。シンプルにこんな感じかな?」


陣が描かれた地面には“開始” “治癒” “再生” “範囲拡大” “発動”と書かれている。


マキナはその中心で魔力を流し始めた。

書かれた魔法式に従い本来魔法を使えないマキナが魔法と言う事象を発生させる。


有り余る魔力により周囲一体が治癒空間と化し、傷ついた騎士達を治癒して行く。


「おぉ!これが魔法かー!すごいね!」

「マキナおまえは何を言っているんだ。」


レオンから見れば初めて魔法を使い、それも範囲治癒魔法を使っているという矛盾。


「レオン。細かいこと気にしてたらハゲるぞ!」

「…もういいや。」


レオンは考えることをやめた。


マキナの魔法式による治癒魔法により傷を癒された騎士たちは、やっと正気に戻り侵略防衛に歓喜していた。


アインス軍は3000の軍勢が居たが、既に1200を切っていた。

マキナがこなかったら火炎弾の直撃により壊滅的な被害をもたらしていただろう。

「マキナよ。」

国王がマキナへ話しかけた。

「何でしょう?」

「今回は助かった。礼を言う。ありがとう。」

国王はマキナに対して頭を下げた。

それにマキナは戸惑っていた。国のトップであろうものが頭を下げるなど合ってはならないのだ。

「こ、国王様頭を上げてください!騎士達が見てますよ!」

「いいのだ。この程度の感謝では済まされない程のことなのだ。」

「ぐぬぬ…。あ、ネザリアが心配していましたよ!帰ったら声をかけてあげてくださいね!」

「そうか…わかった。」


マキナは国王の話をそらすことに成功し、一息を付いていた。


「これからどうするのですか?」

「そうだな…カーディの国に今回のことを問い詰める。クォーツィの国と同時にな。」

「ここぞと時に同盟を使うのですね。」


マキナと国王が話している時、怪我を治癒された騎士たちはまだ人の形を保っている元同僚騎士を運んでいた。


顔が潰れて見分けがつかない者、顔を含め体全体が肉塊となってしまっている者、腸を引き釣りだされ、もがき苦しみながら死んでいったような形相をしている者など、沢山の同僚の遺体が横たわっていた。


生きている騎士は生に感謝し、逝った騎士に手を合わせていた。


逃げ出してしまった軍用馬を連れ戻し、投石機を分解し馬車へ分割して乗せると、レオンが国王へ歩み寄っていった。


「撤退準備完了です。」

「ご苦労。帰ろう…。マキナよ。申し訳ないが国民を連れ戻してはくれないか?」

「お安いご用!一瞬で連れ戻しますヨ!」

“ATS フォトンウィング”


マキナはそう言うと再び空へと舞い上がり、ネザリアの元へと急いだ。


「王都の外に魔力込めて一帯ごと空間跳躍すれば良いかなぁ。」



しかし、その行動が後に国民にどの様な影響を与えるかを考えていなかったのだった。





ネザリアside


「(私はマキナさんを信じています。きっと皆を連れて帰ってきてくれるはずです!)」


確固たる思いを胸に国民を先導しクォーツィまで歩いているネザリア。


マキナが飛び去ってから数分後。

突然雷でも落ちたかのような音が王都の方角から聞こえてきた。


国民は皆振り返り、王都を見るが何も変っていない。


「皆さん!落ち着いてください!大丈夫です!」


「(そう。大丈夫なんだ。マキナは約束してくれた。マキナは絶対に守ってくれる!)」



ネザリアは一握りの希望をマキナにかけていたのだった。


あー。今回もグロ注意でした。


13/5/12 誤字修正

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