初めての依頼達成!そして王都へ!
ギルドの開け放たれた扉をくぐるとさすがに3度目もあり、野次馬の耐性もついたようだ。
静まることはなく、少し静かになった程度だ。
マキナは受付の女性に依頼書を渡した。
受付の女性はそれに目を通すと待つように支持をし、奥へと入っていった。
「長い依頼だったわ。」
「そうだね。まさかあんなことになるなんてびっくりだよ。」
ミルフィーとアリスは話しているがマキナは女性が戻ってくるのを待っていた。
アルバイトっと言うものは聞いたことがあったマキナだが、実際には施設内から出ることが出来なかったためやったことがなかったのだ。
しばらくすると先ほどの女性が戻ってきた。
板の上には銀貨5枚が乗っている。
貧困街で銀貨5枚は大金だろう。
「(あ…そういえば、お兄さんの名前聞き忘れちゃった。)」
「こちらが報酬となります。」
「あ、ありがとうございます!」
「初依頼達成おめでとうございます。」
「あれ?…あの時のお姉さんだ!」
「はい。説明をさせていただきました。」
「うんうん。大体依頼の流れはわかったよ!」
「ふふ。将来有望な冒険者になりそうね。」
「やだー!褒めても何も出ませんよ!」
マキナはそう言いながら照れている。
ミルフィーが咳払いをしたと思い後ろを向くと、4人ばかり並んでいた。
早く退けっということなのだろう。
並んでいる人たちは一切文句を言わずただ立っているだけだった。
実際には怖いからっと言うのが正解だろうか。
「あ、すみません。今退きます。」
マキナは銀貨を金貨袋に入れると逃げるようにミルフィーのいる場所へ向かった。
「マキナ。少しは周りを見なさい。」
「あはは。ごめんね。」
「まったく…。」
マキナ達は一旦ギルドのテーブルに座り次は何をするかを話し合うことにした。
「さて、初依頼が完了したわけだけど、これからどうするのかしら?」
「…せんせー。私字が読めないし、世界のことがわかりません。」
「そっかー。それもあったね。」
「誰がせんせーよ。文字の読み書きなら教えられるわ。でも世界のことは図書館で読んだほうが早いわよ。」
「ふむ。どちらも問題無いよ!私なら一瞬で覚えれるからね!」
マキナはドヤ顔で腕を組んでいる。
アリスとミルフィーはいつも通り苦笑いとシワを寄せている。
「で、図書館ってどこにあるの?」
「王都にあるんだよ。」
「おうと?王様がいるの?」
「そりゃあ、王様が居るに決まってるじゃない。」
「おー!」
「それじゃ王都へ行くってことでいいかしら?」
「それでいいよ。」
「いざ王都へ!」
マキナは勢い良く外へ飛び出していった。
しかしすぐに戻ってきた。
「…王都ってどっち?」
「マキナ…。」
ギルドを出た3人は王都へ向かうための準備を始めた。
主に武器の確認や食料の確保である。
ミルフィーは護衛の時に消費した矢の補充をするために武器屋へと向かい、アリスは一直線に露店へ向かっていった。
マキナはと言うと…。
「何してればいいんだろう…。」
何も準備することが無く、食料にも武器にも困らないので何もやることが無いのだ。
道の真中で立ち尽くすのは良くないと思ったのかマキナは壁際へと移動した。
「お?いい女が居るぜ。」
「本当だな。よし裏連れてくぞ。」
「うん?」
男二人組はマキナを引っ張って路地裏へと入っていった。
その頃ミルフィーとアリスと言えば…。
「この矢を20本くれないかしら?」
「はいよ。銅貨600枚ね」
「100銅貨6枚でお願いね。」
「毎度どーも。」
ミルフィーは銅貨を店主に渡し、矢筒へ補充していた。
「お姉さん!この干し肉いくら!!」
「1枚銅貨300枚だけど。」
干し肉の大きさは厚さ5mm程度の長さ8cm*5cmぐらいだ。
「6枚買ったわ!」
「まいどー。銀貨1枚と銅貨800枚だよ。」
「銀貨2枚で!」
「200銅貨2枚お返し。」
「干し肉ありがとう!」
やはりアリスはアリスだった。
ミルフィーとアリスは買い物が終わると先ほどの場所に戻ってきた。
「あれ?マキナは?」
「アリスが連れて行ったのではないの?」
2人は交互にマキナを連れて行っていると勘違いしていた。
そのためマキナが一人になってしまった。
それに気づいたのは戻ってきてからの話だ。
「ま、まさか迷子とか?」
「仮にもマキナよ?また何かしでかしているのではないの?」
「なんとなく納得できちゃう…。」
2人がそこまで話した時家の隙間の通路からマキナが2人の男を引っ張りながら出てきた。
二人が買い物をしている時まで時間は戻る。
「見ろよ!こんな小さいガキなのに出るとこは出てるぜ。」
「久しぶりに楽しめそうだな。ぐひひ。」
男二人がマキナを舐めるような目で見ている。
「ヤメテ!暴力振るわないで!」
マキナは怯えた演技で場を盛り上げていた。
「おうおう。怯えちゃって、可愛い女だ。」
「大丈夫、すぐに怖くなくなるさ。ぐひひ。」
2人はそう言うとマキナの服に手を掛けたが、脱がすどころか破けもしない。
防具の隙間などあるわけ無く胸は硬い装甲で守られている。
「な、なんだこの服…!」
「あ、ごめん。そろそろ集まってる頃だから帰るね。」
「何言って…おう!?」
「兄貴!お前何し…うっ!?」
マキナは柔らかい何かを蹴飛ばした途端男二人は泡を吐き、気絶してしまった。
時は戻りマキナが路地裏から出てきた所。
「遅れてごめんねー。」
「…えっと?」
「後ろのは捨ててきなさい。」
「えー。衛兵さんに突き出そうと思ったのにー。」
そう言われたマキナは路地裏へ戻り男たちを放置して戻ってきた。
「それじゃ行きましょう。」
「いざ!」
「王都へ!」
「「いえーい」」
「あ、あなたちね…。」
マキナとアリスはハイタッチをしていたがミルフィーはそんな気分ではないようだ。
王都方面の道は他の方面と比べて品が良い物が多く、ダンリックより高そうな服を来ている商人などがいた。
「なんかこの道だけ質が違うね。」
「それはそうよ。ここに陣取る商人は皆王都から来てるのよ。」
「へー。そうなんだ。」
豪華な壺や高そうなアクセサリーや武器。高級料理食材なども売っていた。
「アリス。よだれよだれ。」
「え?ご、ごめん。」
アリスにはこの光景は毒のようだ。
しばらくアリスを正気に戻しながら歩いていると跳ね橋前の広場に出た。
やはり王都方面の広場だからなのか、他の場所より家並みや衛兵の防具も綺麗だ。
ミルフィーを先頭に3人は町の外へ出た。
「王都はこの草原の先にある森を抜けた先にあるわ。」
「結構遠そうだね。」
「それはしょうがないわ。歩くしか無いわよ。」
「はーい。」
歩き始めて数分後。
草原には心地よい風が吹き、草花が揺れる。
歩く3人を何度か商人の馬車が抜かしていく。
「そういえば、ミルフィー。」
「何?」
「護衛を雇っていない商人がいるけど大丈夫なの?」
「あぁ。マキナは知らないわよね。魔除けの魔道具があるのよ。」
「魔除け?」
「そう。高級魔道具の1つなのだけど、魔物の嫌がる音を出すらしいのよ。」
「魔道具ってこの間のギルドで触った水晶玉みたいな奴?」
「そうよ。まさか壊すと思ってなかったら焦ったわよ。」
ミルフィーは思い出してはため息を付いていた。
「ついでにお幾ら?」
「10金貨以上よ。詳しくは知らないわ。」
「た、高い…!」
「そうよ。迂闊に壊さないでよね。絶対払えないから。」
マキナは冗談抜きで壊さないように誓ったのであった。
太陽が頭の上に来た頃。
やっと森の前まで来ていた3人。
「森に入る前に休憩することを提案する!」
アリスはそう言いながら干し肉の入った袋を出している。
「食べたいだけじゃない…まぁ、そろそろ昼食頃だしいいわ。」
「そうだね。12時過ぎだからね。」
そう言うとアリスは袋を配っている。
中には干し肉が2枚入っている。
「マキナ。12時って時間の事かしら?」
「そうだよ?」
「なぜ時間がわかるのかしら?時計魔道具持ってないじゃない。」
「私だからさ。」
マキナはキリっとした顔でミルフィーに言い返した。
さすがに慣れたのかミルフィーは表情も変えずに納得していた。
「まぁ、マキナだし考えるだけ無駄だわ。」
「ひどいっ!」
そんな事を喋りながら干し肉を食べる2人。
1人、アリスは噛み締めながら天にも昇る気持ちで味わっていたのだった。
「よし。行くわよ。」
「アリス。行くってよ?」
「た、足りないわ…お肉…。」
3人は森の中へ入っていった。
森の中は何回も人が通っているため馬車の車輪跡など歩きやすいようになっていた。
木々の間隔も広く、極端に薄暗いと言うのはなかった。
「森林浴!」
「い、いきなり何よ?」
「び、ビックリしたぁ…」
静かな森の中でマキナがいきなりそう叫んだので意表を突かれた2人は驚いていた。
「いや、だって私の世界にはこんな綺麗な森は無かったし。森林浴って言うの?ちょうど当てはまるかなーって。」
木々の間に差し込む光。
木々の葉をわずかながら揺らす優しい風。
絶好の森林浴日和とも言える日だ。
「私は見慣れたわ。」
「そっか。ミルフィーはエルフだもんね。」
「うん?エルフだとどうして見慣れてるの?」
「あのね、エルフはもともと森に住んでいるの。」
「へぇー。自然と共存か。」
「私達エルフは昔から自然と共にいたのよ。だから森は当たり前の場所なのよ。」
「私の世界の森は結構昔になくなっちゃったからね~。人工林しかなかったんだよー。」
「人工林っていうのはよくわからないけど、森がなくなるなんて考えられないわ。」
「見てくれればわかるんだけどなぁ…。」
その後4時間ぐらい歩いただろうか。
ミルフィーは足を止めた。
「今日は休もう。暗くなり始めているからね。」
「そうだね…もうヘトヘトだよぉ。」
そう言うとアリスは座り込んだ。
戦闘タイプが剣士と言えど、軽鎧や剣を持って移動しているのだ。
それだけでも体力を使う。
「それじゃ、火をつけるわね。」
ミルフィーは折れた樹の枝を集め、道から少しずれた場所に集めていた。
「うーん。私は夕食取ってくるよ~。近くに川があるみたいだからね。」
「はーい。美味しいの期待してるよ!!」
マキナはレーダを見ながら川があると思われる場所まで移動していった。
徐々に暗くなる森の中をマキナは進む。
“暗視モード起動”
マキナの視界は僅かな光を増幅し、暗かった道が明るく見えるようになった。
「(うーん。この緑色が余り好きじゃないなぁ…)」
暗視により樹の幹に躓くこともなく進んでいく。
少し進むと水の流れる音が聞こえてきた。
もうすぐそこに川があるのだろう。
水の流れる音が聞こえてきた方向に歩いてすぐに川が見つかった。
川の水深は浅く、マキナのひざ下辺りまでしか無い。
この川はティールの街まで続いていそうだ。
「さて!お魚~お魚~♪」
マキナはそう言うと川の中程まで入り衝撃魔術を使った。
マキナを中心に衝撃波が広がり、水の中から魚が4匹浮いてきたのだ。
それを素早く回収すると川から上がった。
水は一滴も残らず服から地面へこぼれ落ち、ブーツの中に入った水も排水された。
「やっぱり便利ねこの服。」
魚をATSを使って4次元へとしまうと、レーダーを使ってミルフィーとアリスの位置を確認しながら戻っていった。
マキナが戻ると既に火がついておりいつでも魚を焼けるようになっていた。
アリスは魚を焼くために樹の枝を駆使のようにナイフで研いでいるようだ。
「たっだいまー!」
「おかえり!魚は!」
「ここだよっと。」
マキナはATSを使い魚を1匹1匹出してはアリスに渡していった。
あっという間にアリスに魚が焼き魚に調理された。
やはりアリスは冒険者より料理人のほうが向いているのではないだろうか…。
「出来たよ!」
「あ、相変わらず手際いいわね…。」
「美味しそう!」
「ふふふ。これからはアリス料理長と呼ぶといい!」
「キャーアリス料理長!」
「ついてけないわ…。」
ミルフィーはふざけている2人を横目に食べ始めていた。
「火の番と警戒なら私がやるから2人は寝てていいよ。」
「そう?悪いわね。」
「眠くなったら起こしてね?」
「大丈夫。問題ないよ。」
そう言うと木に寄りかかって寝始めた。
「そういえば、木の枝の予備が少ない気がする。集めてこようかな。」
マキナはレーダーに何も居ないことを確認すると焚き火に必要な樹の枝を辺りに探しに出かけた。
レーダーを常に確認しながらの作業だが、マキナにとっては朝めし前の作業だ。
「よっと。これぐらいでいいかな。」
木の枝を沢山胸に抱えながら元いた場所に戻ると火から少し離れた場所にそれを下ろした。
空を見上げると向こうでは見られなかった星空が夜空いっぱいに広がっていた。
マキナの長い夜はまだ始まったばかりだ。
おうふ…おうふ…
チンピラ2人ェ…
13/5/12 誤字、脱字修正




