依頼主と兄とげかしゅじゅちゅ 後半
注意
作者に医療技術もなければやり方もわからず、手術画像と手術のやり方を探し出し、真似て書きだした物なので間違っている可能性がありますが、ご都合主義と解釈してください。
窓から朝日が入り込みマキナの顔へ当たる。
「うー?眩しい。」
周りを見ると皆既に起きているようだ。
「ありゃ?私だけ寝てたのか。」
「マキナおはよう。」
「おはようございます。」
「おう。ネェちゃんおはよう!」
そこにはミルフィーを除く今日手術に関係する人が揃っていた。
「えっと、ミルフィーが帰ってきたら始めます。」
「おうよ。」
「よろしくお願いします…。」
10分ぐらい今日の予定を話しているとミルフィーが町医者らしき人物を連れてきた。
「帰ったわ。」
「おかえり。」
「ミルフィーさん?この子がそのげかしゅじゅちゅ…外科手術とやらをやるのかい…?」
「そうよ。見た目に騙されてはダメよ。あの子はああ見えてすごいのよ。」
「町医者さん今日はお願いします。」
「あぁ。よろしく。」
「では血液お願いします。」
「おう。」
マキナはATSを使い4次元空間から医療セットを転送し、中から輸血パックを取り出し、男性から400mlの血液をパックへ。
男性の血液は既にチェック済みで何も病気に掛かっていないことがわかっている。
「ミルフィー治癒お願い。」
「まかせて。<彼の者に癒しを。ヒール>」
男性の腕にあった針の刺し傷は一瞬で治り、何もなかったかのようだ。
「ミルフィー?台所の埃すべて外に出せる?」
「できないことはないけど。」
「兄さん運んでくるからやっておいて!」
「わかったわ。」
「血液を誰か揺らしてて!」
「私がやろう。」
後ろで詠唱をしているミルフィー、血液を揺らし続ける町医者を他所に、マキナは二階で寝ている彼の元へ向かった。
マキナは部屋へ入り、兄をお姫様抱っこで抱えるとそのまま下に降りていった。
何も知らないキャロルと献血してくれた男の人はすこし驚いているようだ。
「ミルフィー?準備大丈夫?」
「大丈夫よ。」
「ミルフィー。風の起こせる?3人の埃を払いたいの。」
「任せて。<風よ。ウィンド>」
魔力を少なく使い少し強いぐらいの風邪が
町医者、ミルフィー、マキナと抱えている兄さんへあたった。
「よし。中に入ろう。これから誰も中に入っちゃだめだよ?」
そう言うとミルフィーはドアを閉めた。
「兄さん…。」
「大丈夫よ。なんたって私達には神様がついているんだから!」
「アリスさん…。」
キャロルは心配そうにドアを見つめていた。
マキナは台の上に彼を寝かせた。
厨房は真ん中に大きなテーブルが有るため、やりやすいのだ。
マキナは布を適度な大きさに裂き、ミルフィーと町医者に渡した。
「これは…?」
「頭にこうつけて、口にもつけて。」
この世界には帽子やマスクが無いのでその代わりだ。
「これで髪の毛や唾液が飛ばないようにするんだ。」
「なるほど。」
町医者は納得している。
「後、これの手袋をはめてください」。
それは医療で使われる手袋だ。
2人がつけ終わるとマキナは手袋以外を外していた。
「おや?なぜ君は付けないんだ?」
「私は付けなくても大丈夫。」
「マキナの事を考えても無駄よ。常識が通じないから。」
「そうか。」
マキナは医療セットの中から麻酔瓶を取り出し、注射器を差し込み中へ入れた。
それを彼に注入し、マキナはナイフを手にとった。
5分後
マキナはナイフを取り出し衝撃魔術と熱をナイフへ流す。
ナイフは熱を発し微振動を起こしている。
電気メスが無いため、出血を抑えるために体を切りながら焼くことにしたのだ。
治癒魔法が有るから多少無理しても大丈夫だと判断したのだった。
さらに、切りやすいように高周波ブレードと同じように振動させている。
「始めます。」
“駆動プロファイル変更:射撃モード”
マキナは精密な動作を要求するため射撃モードで代用していた。
マキナは彼のヘソの上から12cmを誤差なくピッタリと刃を止めた。
ミルフィーはマキナの動きに違和感を感じた。
明らか不自然なのだ。
しかしマキナだからと自分を納得させた。
「町医者さん腹部の穴を広げておいてください。」
「わかった。」
町医者は腹部に手を入れ切開部分が閉まらないように広げた。
“暗視モード起動。補正完了”
通常ライトの光が上から照らされるが、それがないためマキナは瞳の機能を暗視モードに切り替え暗い場所でも見えるようにした。
“スキャン開始”
マキナはスキャン結果から癌細胞がある部分を切除開始した。
癌細胞の位置が正確にわかることにより胃体部のほとんどが癌で犯されていることがわかった。
前庭部と胃底部は何も異常が無いことから胃体部を切除し、つなぎ合わせることにした。
肉の焼ける音と匂いと共に胃が切られていく。
癌細胞のみを切り離し、正常な部分を残す。
普通では不可能な芸当を行なっていくマキナ。
胃体部を切断、取り出し、それを台の上に載せる。
マキナは胃をつなげるようにして持つとミルフィーに指示を出した。
「ミルフィー出番だよ。」
「<彼の者に癒しを。ヒール>」
癒しの光が町医者の手を通り過ぎ、マキナが支えている胃に降り注いだ。
焼けてしまった部分は正常な細胞に戻り、細胞どうしが結合していく。
それはゆっくりだが確実に治っていく。
10分が過ぎただろうか。ミルフィーの額には汗が浮かんでいる。
「町医者さん。一度手を離してミルフィーの汗を拭いてあげてください。」
「分かった。」
町医者はタオルを手に取るとミルフィの視界を遮らないように汗を拭いた。
「ありがとう。」
「後少しだから、頑張ってくれ。」
短い会話を終わらすと町医者は再び腹部を広げた。
それから4分が過ぎ、胃の修復が完了した。火傷の痕も無く、スキャン結果から癌は無いのが確認できた。
魔力を使いすぎたせいか、ミルフィーは少しふらついている。
「ミルフィー。少し試したいこと有るから合図したらヒールして。」
「わ、わかったわ。」
「町医者さんは手を離していいですよ。」
「わかった。」
「次に腹部を閉じるように寄せてください」
「こうか…?」
「完璧です。」
腹部から手をどかし、腹部の穴を塞ぐように寄せた。
「ヒール準備お願い。」
ミルフィーが手を向けた。
そこにマキナの手が重なった。
「な、何を?」
「とりあえずヒールしてくれる?」
「何を考えているのやら…<彼の者に癒しを。ヒール>」
“スキャン開始”
「…(波長調節…魔素変換開始)」
マキナはミルフィーの体内に流れる魔力を検出しそこに魔素を魔力へ変換させる様に働きかけた。
人が体内で起こす魔素から魔力への回復を人為的に起こすことで魔力を回復させようとしたのだ。
人の魔力に干渉するには波長を合わせなければならない。
そのため非情に繊細な作業なのだ。
「マキナ?一体何を?」
「ミルフィーの魔素を魔力に変換して…単純に言うと魔力を回復させてるの。」
「…何やってるかわかってるの?」
「当然。私じゃなきゃできないだろうね。」
「君たちが何を言ってるかさっぱりわからん。」
町医者は魔法には詳しくないので、何を話しているのかさっぱりわからなかった。
10分が経過し、切開された腹部が癒され後少しで完璧に再生するところまで来ていた。
ミルフィーはマキナの支援を受け、ヒールを継続し続けており町医者は腹部を寄せて閉じていた。
「後少しね。」
「そうだね。」
「ところでマキナさん。癌というものは何なのでしょうか。」
「この質問3回目だ…。癌は正常な細胞を異常な細胞と置き換えてしまい、臓器の機能不全を起こしたりする病気です。これは魔法では絶対に治せないので癌の見分け方や手術のやり方を覚えればきっと役に立ちますよ。」
「ほほー。魔法で治せないのか。これは研究のしがいがありそうだ。」
「研究するのはいいですけど、感染症や切除ミスやら気をつけてくださいね?」
「わかっているよ。」
マキナは簡単に言っているが実際はもっと難しいものである。
おそらく、この世界の水準では無理だろう。
話が終わる頃には腹部の穴は小指ぐらいの大きさまで回復していた。
「後2分って所だね。」
「わかったわ。」
マキナは表示されている時計を見ると開始から約1時間経過していることに気づいた。
糸で縫い合わせる必要がなく、負担も無いことからマキナは早いほうだと認識した。
そして腹部の穴がふさがり少し後が残ってしまっているが完璧に塞ぎ終わった。
“通常モードへ移行”
「よし。終了!」
「ふぅ。疲れたわ…。」
「これはすごい。初めて見た治療だった。」
「体内部の治療とかやらないのですか?」
「それはそうだ。切ったら血が出て死んでしまう。それに患者が痛みに耐え切れずショック死してしまうからね。」
「麻酔が無いからか…。」
「ますい?」
「痛みを麻痺させる薬のことです。最初に彼に挿したものがそうです。」
「興味深い薬だね。少し分けてくれないか?」
「いいですよ。しかし、扱いには気をつけてください。投与のし過ぎは死を招きます。」
「わ、わかった。」
「どうぞ。使い方は見ての通りです。覚えてますよね?(でも結局、注射器無ければ使えないし多分針も作れないだろうね。)」
「あぁ。覚えている。あの器具から作り始めないとな。」
「とりあえず出ましょう。私は彼を二階へ運ぶので成功し、経過観察と伝えてください。」
「わかった。」
マキナは彼を抱えるとミルフィーがドアを開けた。
町医者は切除した臓器を桶の中に隠し持ち上げた。
マキナが廊下へ出た時、キャロルが飛びつこうとしたがアリスに止められた。
マキナはそのまま二階へ上がっていった。
そこへ町医者がドアから出てきて話し始めた。
「手術は成功だそうです。後は経過観察です。」
「!!」
キャロルは目を見開き、町医者へ声を掛けた。
「兄さんは助かったのですか!」
「え、えぇ。助かりました。」
「良かった…。良かったぁ…うぅ…」
「良かったな!キャロル!これでまた兄さんと暮らせるじゃねえか!」
「うぅ…はい…ぁぅ。」
おじさんはキャロルの頭を撫でながら微笑みかけていた。
その後泣きつかれたのかキャロルは眠ってしまった為、おじさんがキャロルの部屋まで運んでいった。
ミルフィーがマキナと彼が居る部屋へ入ってきた。
「どう?彼の様子は。」
「大丈夫。脈拍正常、体温も正常。」
「夜にでも目を覚ますかも。」
「そう。良かったわ。」
ミルフィーはそう言うと近づいてきた。
「今日はいい経験だったわ。護衛依頼を受けて命を守ったりするけど、助けたことはなかったわ。」
「守ることはできるけどね、助けることは難しいんだよね。」
2人は少しの間彼の呼吸する胸を見ていた。
「部屋から出ようミルフィー。彼はもう大丈夫だから休憩しよう。」
「そうね…。疲れたわ。」
2人は部屋の外へ出ていき客間へ戻っていった。
1階には既に町医者の姿は無く、アリスだけが居た。
「隣のおじさんは帰ったよ。何かあったら呼んでくれ!って言い残してね。」
「そうなんだ。ありがとね。ミルフィーは先に休んでていいよ。」
マキナは片付けをしてくると言い残して厨房へ入っていった。
置きっぱなしだった医療セットをしまい、桶から水を掬い上げてナイフを洗った。
洗ったナイフは四次元空間へ収納した。
3分程度の片付けを終わらせたマキナは部屋から出るとミルフィーは疲れのためか寝ていた。
10分以上治癒魔法を使い続けたため疲れが溜まってしまったのだろう。
マキナも精神的な疲れが来ているため早く休みたいと思っていた。
「アリス。私も休むから後はよろしくね。」
「わかった。ゆっくり休んでね。ご飯は任せておいて!」
「あはは…。」
相変わらずのアリスを横目にマキナも横になり眠りに落ちた。
13/5/12 誤字、脱字修正




