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ギルドとマキナとチーム結成

マキナは精神的な疲れで泣きながら眠ってしまっていた。

体は疲れなくとも、人格自体は舞からマキナへ移植され人間としてのすべての機能を持っている。

それ故に人らしく、機械らしからぬ行動もでき人以上の行動もできる。


マキナが目を覚ますと目の前にはアリスの胸。

なぜこんなところで寝ているのかと一瞬考えたが、昨晩の事を思い出した。


最後の記憶がアリスに泣き付いた所だ。


「(そういえば…あの後寝ちゃったんだ。)」


マキナの姿勢はマキナがアリスの腰に手を回し、アリスに抱きついているような状況である。


「(…とても恥ずかしい…。)」


マキナがゴソゴソ動いているとそれに気づいたのかアリスが目を覚まし、それに続くかのようにミルフィーも起きだした。


マキナとしてはアリス達が起きる前に離れたかったがその願いは叶わなかった。

寝起きのアリスと目が合い、マキナが硬直する。


「ううん。おはよう。マイちゃん。」

「お、おおお、おはようゴザイマス。アリス」

「なんでそんな喋り方なのよ。」

「…(いや、まだだ。まだ終わらんよ!私のプライドは!)」

「恥ずかしいって言うなら今頃遅いのよ?昨日の夜アリスに抱きついた後“お母さん”って泣いてたくせに。」


神は死んだ。

現実は非情である。


「おはようミルフィー。」

「おはようアリス。」


真っ白に燃え尽きたかのようなマキナ。

そこにアリスの声が掛かる。


「マイちゃんはもう大丈夫かな?」


真っ白になっていたマキナはアリスの声で元に戻り、少し考えた後にこう答えた。


「マキナでいい。これからはマキナという機械でありながらも舞として生きていく。」

「…わかった。今まで通りマキナで呼ぶね。」

「それにしても昨日は濃い一日だったわ。」

「そうだね。集団のゴブリンに襲われてマキナに助けられて、秘密教えてもらってね。」

「ゴブリンはわかるのだけど結局あの音は何だったのかしら。」

「音?」

「えぇ。ドスンっていう音が聞こえたのよ。」


ここまで聞いていたマキナは思い出す節があったのだ。

それは着地の時のことだ。


「その音のお陰でゴブリンのナイフの反射に気づいたのよ。」

「へ~。そんなこともあるんだね。」


とりあえず、マキナは黙っていることにした。


「と、とりあえず、ご飯行こう!」

「え?あ、うん。そうしようか。」

「突然何よ…。まぁ、朝食の時間だしね。」


「そういえば、マキナって食べ物食べられるの?」

疑問に思ったアリスがマキナに聞いた。

「うん。食べ物を分解して魔力にするんだよ。味覚センサーもついてるから味もわかるのだ!」

「せんさー?と言うものがわからないけど、それは味を感じられるということだね。」


「とりあえず行きましょう。」


ミルフィーはドアを開け、こちらを向いていた。

アリスとマキナはそれに続き部屋の外へ出ていった。

ミルフィーは2人が出たことを確認して部屋に鍵をかけ直した。


宿の廊下を歩き、廊下横にあったドアを開けるとそこには長方形の大きめのテーブルが4つほどおいてあり、奥にはカウンターと主人が居た。


どうやらコックは主人のようだ。


「おはようございます。朝食3人分ください。」

「おはようございます。3人分ですね。少々お待ちください。」


主人は3人分の料理を作り始め、3人は空いたテーブルに腰を掛けた。


「昨日の夜は食べ損ねたからお腹減った~。」

「そうね。昨日は少し遅い時間だったから夕食時に間に合わなかったから。」

「それもこれもあの暴漢のせいだ…。」


アリスは食べれなかったことに不満を感じ、ギルドで絡まれた事を根に持っているようだ。


「あはは…。あいつらは私が伸したから、きっと反省してるよ…多分。」

「反省して無ければもう一度やるだけよ!」


しばらくして料理ができたらしく、主人が厨房から一人一人の朝食を持って来た。


食パン、スープ、野菜、そして牛乳だ。

量的に女性には足りそうな量だが、大柄の男性にはこれでは足りなそうだ。

しかし、食堂に入る利用客は男性より女性のほうが多いようだ。


マキナは給食と言う考えが出てきたが、異世界ではこれが標準なのだろうと思ったのだ。


「おまたせしました。どうぞお召し上がりください。」

「待ってました!」


そう言うとアリスは食べ始めた。

それに呆れたような表情を見せたミルフィー。

「食べ物は逃げないわよ。」


さすがにマキナも苦笑い。


「あはは…。いただきます。」


マキナがそう言うとミルフィーが声をかけてきた。

「その、いただきますってどういう意味かしら?」


「え?あ、そっか。そういう文化ないんだったね。」


マキナは一瞬何を言われたかわからなかったが、異世界にはそのような文化が無いことを思い出した。


「えっとね。いただきますって言うのは大雑把に言うと、食べ物を作ってくれた人への感謝と食材になった物への感謝かな。」

「へぇ。そっちの世界にはそんな文化もあるのね。」

「後食べ終わった後には、ごちそうさまって言うんだよ。これは2つで1つだね。」

「貴族がやりそうな作法みたいね。」

ミルフィーとマキナが話していると、アリスが話しかけてきた。

「話してないで食べなよ。食べないなら食べちゃうよっ!」

「そうね。食べられては困るわ。」


2人は朝食を食べ始めた。

アリスは半分ほど食べ終わっているようだ。


よっぽどお腹が空いていたのか、それとも食い意地が張っているのか。


程なくして2人も食べ終わり、今後のことを話しあう為一旦部屋に戻ることにした。


「さて、これからどうしようかしら。」

「うーん。とりあえずマキナの登録でもしないかな?」

「とうろく?」

「そう登録だよ。」


マキナは頭を傾けていたが、ピンっとくるものがあり頭を起こした。


「分かった!冒険者ギルドへの登録ってことだね。」

「そうそう。それだよ。」

「でも確実に昨日の夜のこと聞かれるわよ。」

「あー確かに。何も言わずに出てきちゃったからね。」

「めんどくさいわね…。」


冒険者ギルドへ行く事になったマキナは2人と一緒に冒険者ギルドへ向かっていった。


「あ、あの、アリス?」

「うん?どうしたのマキナ?」


なぜかマキナはおどおどしている。


「その…手…。」


マキナは小さい子供が母親に手を引かれる様な格好で歩いているのである。

それが恥ずかしくて下を俯いている。


「べ、べつに手を繋がなくても迷子にはならないよぅ。」

「私はお母さんでしょ!」

「うあわああ!」


アリスとマキナがふざけあい、横でミルフィーが苦笑いしていた。

こうして見ると知り合いの女性と母親に手を引かれる子供である。


しばらくふざけあった頃にはギルドの近くだった。

マキナはギルド近くであることがわかったので手を振りほどいた。


「もう!お母さんの言う事は聞くのよ!」

「もうそれやめてええぇ!」

「アリス…。」


さすがに呆れ顔のミルフィーである。


ギルドは今日も騒がしかった。

そこへマキナ達が入った。

入り口近くに居た人がマキナ達を見た途端黙りこんでしまった。


しゃべっていたグループがいきなり黙ったことによりその後ろに居たグループが振り返る。

そして黙りこむ。

それを繰り返していくことによりギルド内は事情を知らないものを除いて黙りこんでしまった。


受付まで歩いて行く中、周りからの視線がマキナ達に突き刺さっていた。


「す、すみません。冒険者登録をしたいのですが。」

「ひゃい!ど、どなたのでしょうか!」


昨日の暴漢達に注意を促していた受付の女性だ。

近くで見ていたのでそこで起きたことは鮮明に覚えている。


「この子なんですけど。」


アリスがマキナを前に出し、受付の人へ見せた途端受付の女性は呆気にとられた。

昨日大男を投げ飛ばし、訳の分からない力で弾き飛ばしていた張本人だったのだ。


しかもギルド登録していないと聞いて女性の頭はパンク寸前だ。


「えっと?この子でよろしいのですか?」

「え?そうですが、どうかしましたか?」

「い、いえ。昨日の様子から既に登録されているのかと。」

「あはは…。」

「と、とりあえず、登録させて頂きます。」

「お願いします。」


受付の女性はアリスから視線を外し、マキナの方へ向けた。

「えっと…この紙に必要事項を記入してください。嘘は書かないようにお願いします。」


そう言うと受付の女性が一枚の紙を出してきた。


そこには何と書いてあるかわからない羊皮紙が出てきた。

さすがのマキナもすぐには解読できそうもなかった。


「アリス…読めない…。」

「あ、そうだね。すみません。代わりに記入しても大丈夫です?」

「はい。大丈夫です。」


アリスはマキナの事を羊皮紙へ書いていく。


「戦闘スタイルはどうする?」

「なにそれ?」

「戦闘スタイルはその人の戦い方よ。それによって受けれる依頼が変わるのよ。」

「ほうほう。じゃ、魔法と剣でお願い。」


周りがざわつく。

剣士は普通魔法を使わず、魔法使いは逆に剣は余り使わない。

とても珍しい組み合わせ出会ったので周りがざわついたのだ。


「魔剣士でいいよね。」


アリスは残りの記入部分を書いていった。

マキナは一箇所だけ記入漏れがあった事に気づいた。


「アリス?そこ書いてないよ。」

「うん?ここはチームを書く所なのよ。集団で登録するときはチームなどを組む場合があるからあるんだよ。」

「へー。じゃあチーム組もう!」

「「え?」」


アリスとミルフィーの声が同時に発せられた。


「うん?」

「えっと…。私はいいけど、ミルフィーはどうする?」

「私は…あなた達と居ると面白そうだからいいわよ。」

「やった!」

「チーム名どうする?」

「そうね…。どうしようかしら。」

「うーん。戦女神(いくさめがみ)とかどうかな?」


マキナの頭の中では元の世界の研究者からそう言われたことがあった事を思い出していた。


「そうね…。一応女神(・・)だし。良いのじゃないのかしら。」

「そうだね。…ちょっと恥ずかしいけど。」


アリスはそう言うと紙に記入していった。


「すみません。おまたせしました。」

「お気になさらずに。確認させて頂きます。登録者氏名はマキナさん、戦闘スタイルは魔剣士、チームは新規作成でよろしいですね?」

「はい。」

「では、お二人のギルドカードを提出してください。」


2人はギルドカードを提出し、受付の女性はそれを受け取った。


「魔剣士ということで依頼の指標として魔力を図らせてもらいたいと思います。」


そう言うと受付の女性は下から何やら丸い水晶玉を取り出した。


「ここに手を載せてください。そうすると魔力量に適した色に変化します。」


マキナがそう言われて手を乗せると何も変化しなかった。


「…すみません。壊れているようですので交換します。」

「あれ?…おかしいなぁ。ミルフィー?これって魔力に反応するの?それともエネルギー?」

「たぶん魔力じゃないかしら。」

「了解だよー。」


「お手数おかけしますが、もう一度お願いします。」

「よーし。気合入れてやっちゃうぞー!」

「…あ」


ミルフィーが何かに気づいたかのように声を漏らした。


「マキナちょっとま…」


しかしそれは遅かった。


マキナが言葉の通り気合を入れてエネルギーを魔力に変換し流し込んだ途端水晶玉は一瞬虹色に光ったかと思うとひび割れてしまった。


「マキナ…。」

「…ごめんなさい。」


受付の女性は今までの職務で計測魔道具を壊す人など見たこともなかった。

そして、高価な魔道具が壊れたことによるショックもあり、受付の女性は倒れてしまった。


「あ、ちょっ!受付さん!」


その後すぐに受付の女性は運ばれ、マキナ達はギルド長の部屋へと案内された。

事故の結果を報告した人からの情報でギルド長が興味を示したのだ。

案内の人は少し立派なドアの前でノックをすると中へ向かって話しかけた。

「失礼します。例の冒険者と当事者を連れてきました。」

「入れ。」

「失礼します。」


女性が入るとマキナ達は手招きされ中へ入れられた。


「ふむ。君が昨日の騒ぎと今日の騒ぎの人物か。ちと予想外じゃ。」


そこに居たのは60か70のお爺さんだった。


「大男を投げた、計測魔道具が壊れたっと聞いておったからてっきり大男の魔法使いかとおもったんじゃ。案内ご苦労じゃった。下がって良いぞ。」


案内してくれた人が出ていき扉が閉められた。


「ほれ、そこに座るが良い。」


ギルド長の部屋には扉に向いた大きな机、その前には少し小さなテーブルと椅子が設置されている。


そこで接待やらをするのだろう。


3人が座るとギルド長も腰を掛けた。


「よっこらせっと。この年になるとつらくてのぅ。」

「大丈夫ですか?」

「いやいや、若者に心配されるほど落ちぶれてはないぞ。見よこの筋肉!」


ギルド長がそう言うと腕を曲げた。

そこには衰えを感じさせない筋肉があった。


「おー!ギルド長すごいですね!」

「そうじゃろ?腐ってもギルド長じゃからな!」


マキナとギルド長がノリノリで話しているとミルフィーが咳払いをした。


「ごほん。」


「おおっと失礼したのぅ。久しぶりの話し相手に興奮してしまったわい。」

「ヤダーギルド長!セクハラですよー!」

「こやつめ言いおる。」


もう何も言うまい。

誤字修正

13/5/12 誤字、脱字修正

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