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テントを張り終えて荷物の確認も済ませたら、持参したお弁当で腹ごしらえをしてから、バドアスとヘータはドラゴン探しに、それ以外は海に行くことにした。
「わかってると思うけど、火山には近づかないようにね」
あたしは意気揚々と出かけるバドアスに念を押した。合宿地のキリシュ島は火山島で島の中央に活火山があり、火口付近は常に爆発の危険がある。事前の説明会でそのことはしつこいほど注意を受けていた。
「わかってるって。心配するな」
そう言ってバドアスはドラゴン探索隊の集合場所にさっさと行ってしまった。
「大丈夫かな」
「本当、バドアスくんの評価って、マナさんの中じゃ低いね」
あたしがなおも不安そうにしていると、シシーがおかしそうに笑って言った。
「大丈夫。バドアスは「ど」がつくほど真面目だから、やらないと言ったらやらないよ」
「まあ、そうね。あいつはバカだけど真面目だから」
バドアスが行った後、あたしたちもテントの中で手早く水着に着替えて海に向かった。ビキニだけだとやっぱり恥ずかしいので上からTシャツを着たら、カルネからひどく文句を言われたけれど無視してそのままで行った。
「あれ、マナ、その首に掛けてるのって何?」
道すがら、ミレイにペンダントについて聞かれた。ここのところ、毎日つけているのだが、普段は服の中にしまってたから気づかなかったみたいだ。
「魔力結晶」
「あ、例のカインリルさんからもらったってやつ」
「もらったっていうか、預かったやつね。なくしたら大変だから、こうやっていつも首に掛けてるのよ。面倒くさい」
「それがあったらカインリルさんになりすませちゃうんでしょ? 責任重大だよね」
「全く。あたしは恩人のはずなのになんでこんなに苦労しなきゃなんないのよ」
「ははは」
そんな話をしていると、すぐに海が見えてきた。
「海だ!」
「うわー。すごーい」
トルン市は大陸の中では海辺の都市であるとはいえ、歩いて海に出られるほど近いわけではない。だから、青い海と白い砂浜にはやはりわくわくさせられないわけにはいかないのだ。
うーん。やっぱり海辺は違うね。水の魔力が満ち満ちてる気がするよ。
厳密に言えば、属性があるのは魔力ではなく魔法であり理力であるので、水の魔力という表現は間違っているんだけど、この圧倒的な水の力にはそんな理屈が掻き消されるような気になってくるから不思議だ。
よし。早速!
ズドーーーーン!!!
一目散に海へと駆け出していったミレイたちの目の前で、突然、海面から巨大な水柱が吹き上がって辺り一面に水しぶきを降らせた。




