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「みんな、すごいですね」
「うん?」
「サバイバル実習のチームのみんなです。実技だけじゃなくて試験でもトップクラスの成績ばかりで」
「んー、そういえばそうだね」
「きっと、血の滲むような努力をした結果なんですよね」
「そんな悲壮なものじゃないと思うけど」
「え?」
「できないことが練習してできるようになると嬉しいじゃない。訓練にしても勉強にしても、そういう達成感を報酬にしてるっていう点じゃ、スポーツやゲームと大差ないの。だから、楽しんでやってるだけなのよ」
「はぁ」
「それにね、場合によっては訓練や勉強が逃げ道になることだってあるし……」
「あたしはそんな気持ちになったことはないです。そんな風に思えること自体が特別なんです。すごいことだと思います」
「そ、そぉ?」
「あたし、そろそろ行きます。ありがとうございましたっ」
そう言って、デミはパタパタと上履きの音を立ててすこし早足で去っていった。
「そういえば、デミが確認したかった人は載ってたのかしらね」
その後ろ姿を見送りながら、マナはぼそっと俺につぶやいた。
そんなのは決まってるよなと思いながら、俺はもう一度掲示板へと視線を移した。
「ご通行の皆様、お騒がせしております。緑風党のルシアでございます。よろしくお願いします。よろしくお願いします」
トルン市のやや南、学園から橋を渡ってまっすぐ進んで中央広場を越えて少し進んだところに、トルン駅は存在する。この辺りは商業地で昼間人口の多い地域だ。駅前では政治家が演説をしていたが、これも特段珍しい光景ではない。
サバイバル実習に参加する中等部2年生は、皆、朝から学園に集合して、トルン駅へと移動していた。これから鉄道に乗って海へと向かうのだ。
目的地であるキリシュ島はトルン市の所属するトルン県の隣県、カナミュ県の中心都市カナミュ市から船で1時間半のところにあり、トルン市からカナミュ市までは鉄道が伸びていて、カナミュ市からは定期船がないためチャーター船で向かう。
この鉄道や船は理力がなくても魔法の恩恵に与ろうと開発されたもので、魔法生物が生み出す熱を利用して蒸気機関を動かして動力を得る仕掛けだ。このような魔法生物をエネルギー源にした仕掛けは現代ではすっかり日常生活に浸透している。
カシャッ、カシャッ、カシャッ
「ああ、このフォルム。黒い車体に金の文字。熱気。潤滑油の匂い。汽笛の音にスラス・トカゲネズミの鳴き声!」
機関車に食い付くように写真を撮っているのは鉄道研究会の面々だ。ちなみに、スラス・トカゲネズミというのが蒸気機関の動力源に使われている魔法生物だ。鳴き声がうるさいが出力が高いので大型の蒸気機関でよく使われている。
「みんな忘れ物はない?」
「ちょっと待ってください」
汽車に乗り込む前にマナが最後の確認をしたところ、デミがわざわざ鞄を開けて中身を確認し始めた。神経質だなあ。




