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「えっ、マナ、どういうこと?」
突然の話の成り行きについてこれないミレイはあたしに説明を求めてきた。
「あの時、鎧には問題があった。魔法を防御できなかったのはそのためよね」
「それは……」
「あなたの腕なら防御魔法の起動に失敗するなんて考えられないし、そもそも、発動させる手続きは完了してた。なのに、なぜか発動しなかった」
「どこまで知って?」
「分かってるのはそこまでよ。その先は憶測だけ……」
カインリルは再び黙り込んだ。しかし、今度はさっきよりも目の光に力がある。
「やっぱり、あなたは僕が思った通りの人だ。いや、それ以上かも。……全く、自分で選んだ許嫁を信用できないなんて、僕は本当に最低の男だな」
「誰が許嫁だっ」
「ぐはっ」
まだ寝ぼけているようだからカインリルに渾身の腹パンチを入れて目を覚まさせてやった。色男に免じて顔は許してやったから感謝しろ。
「ゲホゲホ。多分もう証拠は消されてると思うけど、あれは間違いなく故意に鎧に細工をされたせいで起きた事故だと思う。…………、狙いは僕の命だ」
「ええっ!!」
カインリルの告白にミレイは大げさに驚いたが、あたしとヘータにとっては予想通りの結論で、特に驚くこともなかった。
「前々から何かあるかもしれないとは思っていたけど、確信はなかったんだ。取り越し苦労じゃないかとも思ってたし。まさか、このタイミングで本当に仕掛けてくるなんて正直予想してなかった」
「誰なの、犯人は」
「……それは、ちょっと言えない。……証拠がなくて断定できないから……」
カインリルが言葉を濁していると、さっきから黙って聞いていた子猫がぼそりと呟いた。
「ノルフレドだろ」
「ノルフレド先生!?」
驚いて聞き返した言葉に今度はカインリルとミレイが驚く。
「マナ、どうしてそう思うんだい?」
「……」
そんなことはあたしも聞きたいよ、とあたしは視線をヘータに向けた。
「前からノルフレドの挙動がおかしいとは思ってたんだけど、試合の前日の夜、ノルフレドがペガサスに飼い葉をやってるのを見たんだよ。その時、ペガサスがノルフレドに対してえらく好戦的だったから、気になって後からその飼い葉を1切れ拾って調べてみたら、毒が出てきた」
「毒が……?」
「マナ、ひとりで何を言ってるんだ?」
「ノルフレドがあなたのペガサスの飼い葉に毒を入れようとしたのよ」
「なんだって? それはどこで?」
ヘータの言葉はあたし以外には理解できないから、あたしが要約してやるとカインリルは鋭く聞き返してきた。
詳しい説明をして、ヘータのことを詮索されないかとちょっと躊躇したが、黙っていることもできないので、当たり障りのなさそうなところだけ掻い摘んで話すことに決めた。
「ヘータが見たのよ」




