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俺は猫×あたしは魔女  作者: 七師
親善試合<後編>
60/130

10

 俺は以前に見た厩舎の裏にある地下倉庫へと潜り込んでぐったりと力の抜けたカインリルの体を床に横たえた。そして、中に入ってこれないようにドアに支えを立て、すぐにカインリルの下に戻って容態を確認する。


 「<発火(レムス)>」


 容態の急変を抑えるため生命力を高める魔法をかけた上で、カインリルを取り囲むように魔法陣を描き始めた。治癒魔法は専門ではないので間違えないように慎重に陣を描く。


 一般的に生命を対象とした魔法である精神系や医療系の魔法は複雑でデリケートなことが多い。加減を間違えると簡単に生命活動を停止させてしまうからだ。


 なので、専門にしていない魔法使いは簡単な魔法を除いては魔法陣で発動させることが推奨されている。カインリルの弱い呼吸を聞きながら、焦る心を押さえつつ一筆一筆魔法陣に文字を書き込んでいった。


 ……、できた。


 「<発火(レムス)>」


 詠唱と同時に魔法陣が淡く発光を始め、カインリルの体を包み込んでいった。


 やばい。思ったより毒が……


 魔法の発動に成功して緊張の糸が切れると、ストンと尻餅をついてその場から動けなくなってしまった。さっき吸い込んだ毒ガスがじわじわと効いてきて後ろ足に力が入らなくなってきたのだ。


 俺の体は身体強化の魔法がかけられているせいで、魔法の干渉が起きて、治療魔法などの体内に影響を及ぼす魔法がほぼ効かない。


 今の俺の体内にある程度の毒なら普通なら簡易な魔法でも十分治癒できるはずなのだけど、治癒魔法が効かないとなると手の出しようがなかった。


 とりあえず朝まで寝ればある程度は毒が抜けるはずだ。その後のことはその時考えよう。


 思考力も低下してきた俺は、それ以上の考えることを諦めて目をつむった。魔法陣の光に照らされながら。



 ここは、どこだろう?


 まぶたの裏に光を感じたあたしは、ゆっくりと目を開いた。


 見慣れた家具、壁、天井。窓から差し込む光。いつもの風景のようだがどこか違和感がある。


 あれ、ヘータがいない?


 慌てて起きたあたしの手にヘータとは違う感触が触れた。


 「おはよう、マナ」


 それはミレイだった。どうしてミレイがと思う間もなく、次の瞬間には昨日のできごとがフラッシュバックのように蘇ってきた。それと同時に全身が震えだし、吐き気のようなものに襲われる。


 「うっ、ううっ」

 「<発火(レムス)>」


 素早くミレイが魔法を起動して、パニックに陥りかけたあたしの精神はすぐに落ち着きを取り戻した。


 「あ、あたし、また大変なことをしちゃった……」


 しかし、冷静になっても罪悪感が消えるわけではない。あたしはベッドのシーツをぎゅっと掴むと、視線を足元へと落とした。

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